感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第45話(シーズン2 第17話)「悲しきチェックメイト」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン2(29~53話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ
perry-r.hatenablog.com
 

第45話 悲しきチェックメイト A Game of Chess (シーズン2・第17話)

 

あらすじ

コンピューターを使い、チェスの名手を打ち負かしたローラン(マーティン・ランドー)。そのローランに対し、名手が持ちかけたのは金塊の強奪計画だった。


政府に奪われた民主化運動のための金塊。これが保管されるホテルでチェスの大会が開催される。金塊を狙う国際的泥棒グロートは優勝候補。IMFの目的は彼らの計画を阻止しつつ金塊を奪い、運動家達に返すこと。ローラン(マーティン・ランドー)も大会に参加し、コンピューターを用い勝ち進む。そんなローランにグロートは金塊強奪計画を持ちかける。

※DVD版のタイトルは「王手!」。


【今回の指令】
 東側某国の地下組織向けの資金として用意された100万ドルの金塊が、同国の憲兵隊に押収されてしまった。そして高名なチェスプレイヤーにして実は国際的盗賊であるニコラス・グロートが、その金を狙っている。IMFはグロートの企みを阻止し、金を地下組織に返還しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 東側某国


【作戦】
 金塊が運び込まれる町では、グロートのせいで銀行が焼き討ちにあって金庫が使用不可能になっており、金はホテルの金庫に搬送されることになっていた。さらにそのホテルではグロートが主催するチェストーナメントが開催予定で、グロートはそれに紛れて金塊を盗むつもりのようだった。

 IMFはホテルに乗り込むと、ローランは無名のチェスプレイヤーとしてトーナメントに参加し、チェス用コンピューターを利用してたちまち決勝まで勝ち上がる。さらに決勝でグロートと対戦し、三番勝負の一戦目で圧勝するが、わざと怪しいそぶりを見せる。怪しんだグロートは、ローランがコンピューターの助けを借りて勝利していたことを知るが、同時にコンピューターは周囲の時計を早く進めるという事に気が付く。

 グロート一味は金庫の暗証番号を突き止めていたが、同時にタイムロックが増設され、一旦鍵がかかると12時間は開かなくなることを知り頭を抱える。しかしローランたちのコンピューターを使えばタイムロックを早回し出来ると気が付き、ローランたちと手を結ぶ。

 IMFはホテルの水道に腸チフスそっくりの症状を引き起こす薬剤を混入し、薬だと言って憲兵に麻酔薬を注射する。憲兵たちはバタバタ倒れてしまい、その隙にIMFとグロートたちは金庫の前にコンピューターを運び、タイムロックの時計を早回しして金庫を開ける。しかし金を運び出した瞬間、ローランがグロートと部下に銃を突き付けて金庫の中に押し込め、金庫の扉を閉めたあと金を持ち去るシーンで〆。


監督: アルフ・ケリン
脚本: リチャード・M・サカル


感想

 評価は△。


 IMFの計画がなんとも遠回りで面白に欠ける凡作回。

 そもそも、泥棒が同時に高名なチェスプレイヤーで盗みに入る場所で堂々と顔をさらしているとか、盗み出す計画をほとんど何も考えていなかったとか、チェス用コンピューターが時計を早送りするために使われるとか、設定・展開がどうも奇妙で乗り切れなかったが、さらに雰囲気が最初から最後まで緊張感に欠け、どうにも面白みが感じられなかった。

 確かに最後は、IMFメンバーが、金塊を守る憲兵隊を無力化し、悪党たちを金庫に閉じ込め、金塊を持ってさっさと逃げ出す、というお馴染み系の結末ではあったが、そこに至るまでの道のりがさっぱり面白くなくてがっかりだった。

 今回の作戦は、グロート一味を痛い目にあわそうとするあまり、余計な回り道というか無駄なことをしている感が強く、IMFがグロートたちを無視してさっさと金庫を破って金塊を盗み出した方が手っ取り早かった気がする。こういう凡作を見ると、スパイ大作戦のシナリオを書くのがどんなに難しいか、という事をひしひしと感じてしまった。


 今回のエピソードの前提となる設定が、「東側某国の地下組織のために用意した金塊」というのが、なんともアメリカンである。何せ、その国に民主主義政権を打ち立てるため、地下組織に資金を提供して革命を起こさせようとしている訳で、どう考えても国際的謀略の類なのだが、それを主人公たちが支援する、というのがなんとも言えない。IMFから見れば正義の仕事なのだろうが、冷静な目で見ると恐ろしくダーティーな任務のような気がする。


 さて、今回のIMFの秘密兵器は、バーニー開発(多分)のチェス用コンピューターである。バーニーたちがこれを「電算機」と呼んでいるのが時代を感じさせる。大きさはデスク二つ分くらいで、前面には磁気テープ、ピカピカ光る無数のランプ、キーボードが付いていて、いかにもコンピューターである。ただし、特殊な電源を必要とせず、普通のコンセントから電力を取れる、というのが凄いところではないだろうか。

 動作は、バーニーがキーボードで相手の指し手を入力すると、カタカタと数秒考えた後、名刺くらいのサイズの黄色いカードに、こちらの打ち手を印刷してくれる。例えば出力結果が「21 Q-R3 MATE」と書いてある場合、「21手目 クイーンをルークの3へ 詰み」という意味である。ディスプレイ画面という概念が無く、あくまでアウトプットは紙で、というのも1960年代風味である。

 ちなみに、IBMのチェス専用コンピューター「ディープ・ブルー」がチェスの世界王者ガスパロフに勝利したのが1997年だが、それより30年も前(1967年)に、コンピューターがチェス名人を負かすという描写があるのが興味深い。

 しかし、このコンピューターは、チェスに強いが、同時に「時計を早く進ませる」という超機能も有している。冒頭のフェルプスたちの打ち合わせシーンの台詞で、この機能はバーニーが開発したものと解るが、いったいどういう原理なのか全く想像もつかない。こういう説明もつかない超技術を突破口にして作戦が実施されるのはどうなんだろうかと思ってしまった。


 エピソードの最後で、IMFはグロートとその部下ミュラーを金庫の中に閉じこめてそのまま逃げ出してしまう。ホテルは腸チフス騒ぎでごったがえしているだけに、グロートたちが何日も発見されないまま、金庫の中で窒息死してしまった可能性が高い。別にグロートたちは人を殺めたわけでもなく、IMFが相手にする悪人の中では比較的小物に属するタイプだけに、こんなひどい目に合わせなくてもいいのにと思ってしまった。まあアメリカのスパイ組織が国際的泥棒の命の心配をしてやる義理も無いわけだが、かなり後味の悪い結末だったことは否めない。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが電話ボックスに入り、電話機の「故障中」の札を外した後、電話機前面の蓋の鍵を開けると、中には大きめの封筒とオープンリールテープコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して受話器で指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、電話機をの蓋を閉めると、中から煙が吹き上がる。(※第30話「荒野の3人」のシーンの使いまわし)。


参考:指令内容

 おはようフェルプス君。半月前、ある東側衛星国の地下組織のために用意された百万ドル相当の金塊が、その国の憲兵隊に露見し接収されてしまった。そして今、鉄のカーテンの背後に送り出されようとしている。そうなるとその国の民主主義運動は一時挫折のやむなきに至り、自由への道はさらに遠いものとならざるをえない。ところで、その男はニコラス・グロートといい、チェスの名手として輝かしい経歴を誇っているが、その美名に隠れて国際的な盗みを働いており、今言ったように金塊を奪うべく虎視眈々とその機会を狙っている。

 そこで君の使命だが、グロートの計画を封じ金塊を地下組織の手に返すことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。


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