感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第8話「境界」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第8話 境界 HELLBOUND

 

あらすじ

 お題は「転生」。


 人間が生きたまま皮をはがされて殺されるという事件が発生し、ドゲットとレイエスが捜査することになった。被害者は前科があり、同様の境遇の人間たちと共に更生を目指すグループに参加していたが、死ぬ直前に「悪夢の中で皮をはがされて殺された」と怯えていたという。さらに同様の事件が2件連続して発生するが、犠牲者はみな同じグループの参加者だった。レイエスは何故か今回の事件の解決に異様なまでの熱意を見せる。

 スカリーは過去の同様の猟奇殺人事件を調べ、40年前の1960年(このエピソードの放送は2002年1月)に、同一犯の犯行としか思えない連続殺人が発生していたことを知る。しかし当時捜査を担当した保安官は、何故か事件の捜査をいい加減に打ち切ったあと、銃で自殺していた。

 レイエスは40年前の事件の被害者たちが全員前科者で、また今回の事件の被害者は前回の被害者の死んだ日に生まれていたことから、前回の被害者の魂が転生したものの、やはり同じように惨殺されたのだと言い出す。さらにレイエスもまた自分が過去の事件に関わっていたことを予感していた。

 レイエスはさらに捜査を進め、1909年にもやはり連続猟奇殺人が発生していたが未解決に終わっていたこと、捜査を担当した保安官が自殺していたこと、を突き止める。また、さらに過去の1868年に炭鉱の利権を巡り四人の男たちが敵対していた一人の皮をはいで殺した後、全員無罪放免になったことも解る。

 やがて事件の犯人は、地元警察の捜査担当のヴァン・アレン刑事だと判明した。ヴァン・アレンは四人目を殺そうとするが、レイエスに撃たれて阻止される。レイエスは、事件の真相が、ヴァン・アレンが1868年に殺された被害者の生まれ変わりで、過去何度も犯人たちの生まれ変わりに復讐し続けており、レイエス自身もまた過去(1868年、1909年、1960年)に捜査担当として事件を防ごうとしていたものの、その度に失敗し続けていた、ということだったと推測する。

 最後、ヴァン・アレンが死に、直後赤ん坊に転生したと思わせるシーンで〆。


監督 キム・マナーズ
脚本 デヴィッド・アマン


感想

 評価は△。

 話のアイデア自体は悪くなかったが、何分にも話に進め方に面白みがなく、結果としてさして評価できないエピソードだった。


 殺人の犠牲者が転生して犯人たちに復讐する、という設定はシーズン1の第22話「輪廻」を彷彿とさせるし、メインキャラ自身の転生となると、シーズン4の第5話「追憶」を連想させた。しかし前述の二作品がどちらもテーマを活かした好エピソードだったのと比較すると、今回の話は転生ネタを上手に扱えているとは思えず、もどかしい感じが否めなかった。

 レイエスが何度も転生しては、宿敵的な立場の犯罪者の犯行を防ごうとして失敗し続けていた、という設定は、21世紀のSFやゲームやアニメでお馴染みの「ループ物」に似たテイストを感じさせた。それだけに、過去三回失敗したために自殺してやり直しを選び、今回4回目にしてついに犯行の阻止に成功した(一人は救えた)、という結末は、それなりに達成感があっても良かったはずなのだが、全然そういう雰囲気になっていなかったのは、なんとももったいなかった気がする。

 今回のエピソードは、犠牲者が生きたまま皮をはがれる、という猟奇性・残虐シーンの方のインパクトが強すぎて、生まれ変わりテーマはその影に隠れてしまっていたのも、主題の無駄遣いという感覚があった。死体の皮をはがれた様や、犠牲者たちが襲われる直前に見る「皮をはがれたまま歩き回る人間たちの姿」のグロさはすごく、特殊効果の実力は認めるところだが、おかげでもっと重要な転生テーマがどこかに吹き飛ばされてしまった感が有った。今回はスタッフは力の全てを転生という主題に注ぎ込むべきだったという気がする。


 さて今回のエピソードで、スカリーが「40年前の事件でも今回と同じ刃物が凶器として使われていた」と報告するシーンがあるが、どう考えても変である。視聴者を「今回と40年前の事件は同一犯の犯行である」とミスリードするための手掛かりだろうが、(まあ確かに魂は同一犯だが)ヴァン・アレンが40年前の刃物をどうやって手に入れたというのか。それともこれに筋が通る説明が有るのだろうか。


 今回は話もちょっとややこしいが、サブタイトルもまた難解である。まず原題の「HELLBOUND」が辞書にそのものが載っていなくて調べるのに手間取ってしまったが、どうも「HELL + BOUND」で「地獄行きの人間」という意味のようである。劇中で犠牲者の一人が、自虐的に「(前科者の自分たちは)地獄行きが決まっている」と吐き出すように言う台詞が有ったので、この解釈で間違いないと思う。

 日本語サブタイトル「境界」はさらに意味不明で、この話のどこに境目が有ったのだろうかと首をひねりまくったが、どうもこれは境目の「きょうかい」ではなく、仏教用語の「きょう『が』い」(kyougai)の事らしい。仏教で境界とは複数の意味を持つとのことだが、そのうちの一つは「果報(因果応報)として各自が受ける境遇」という意味だという。なるほど、今回の犠牲者たちはまさに「因果応報」という感が有り、このサブタイトルは適切だと言えなくもないのだが……、しかし、この解釈が正しいとしても、あまりにも意味が難解すぎる気がする。もうすこしストレートなサブタイトルでも良かったのではなかろうか。

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ