感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第12回『ゆがめられた天才 幻の世界システム』

Nikola Tesla: Prophet Of The Modern Technological Age (English Edition)

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 22:00~23:00 放送)。

【※以下ネタバレ】
 
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「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ
 

第12回 『Case12 ゆがめられた天才 幻の世界システム』 (2017年4月27日(木)放送)

 

内容

フランケンシュタインの誘惑「ゆがめられた天才 幻の世界システム」


科学の知られざる姿に迫る知的エンターテインメント。今回は、あのエジソンに勝利して世界初の大規模送電を実現し「電気の時代」の扉を開いた天才科学者ニコラ・テスラ!その後、現在の携帯電話につながる無線通信さらに無線送電までも100年以上前に構想、実用化をめざしたテスラ。資本の論理に翻弄され「マッドサイエンティスト」としてゆがめられ、やがてカルト的な信者を生み出してしまった。早過ぎた天才の悲劇と闇に迫る―

 今回は現代の電気社会の基礎を築いた天才ニコラ・テスラの物語。


●電気時代を作った男

 テコラ・テスラは1856年クロアチア生まれ。テスラは考えたことを、目の前にあるように思い浮かべることが出来たという。数学の数式でも、機械の設計図でも、紙に書かずに頭の中だけで処理することが出来たのである。

 19世紀後半は、電気がいよいよ実用化に入っていた時期だった。発明王エジソンは、アメリカやヨーロッパ各地に発電所を建設していたが、その発電所が生み出すのは「直流」だった。

 電流には「直流」と「交流」の二種類があり、直流は電気の流れが一定、交流は電気な流れが周期的に変化する。実は電気は交流の方が使いやすく、発電所で何万ボルトの高圧電流を作っても、家庭に届けるときには100ボルトに落とす、という事が簡単にできる。直流では電圧を変えられないので、最初から低い電圧にするしかなく、すると発電所から3キロほどの範囲にしか届かず、発電所を大量に作らなければならなくなる。

 ではなぜエジソンは直流で送電したかといえば、当時のモーターは直流でしか動かなかったからである。しかしテスラは交流で動くモーターを発明し、そのアイデアを持ってアメリカに渡った。そして交流による送電網をアメリカ中に張り巡らせる、というアイデアをぶち上げた。そして、投資家ウェスティングハウスがテスラに投資した。

 エジソンは交流が危険だと大ネガティブキャンペーンを展開、動物を交流で感電死させてみたり、死刑囚を処刑する電気椅子に交流を使わせたりした。しかしテスラも交流を使った科学ショーをやってみせ、「電気の魔術師」と呼ばれた。

 しかし、一度にアメリカ全土に電力網を展開しようとする構想はあまりに壮大過ぎて、ウェスティングハウスの財政が危なくなった。テスラは自分の特許権を放棄してウェスティングハウスを助けた。その後、直流対交流の戦いは交流の勝利に終わり、エジソンの設立した発電所も交流送電に切り替えた。



●世界システム構想

 次にテスラは無線に目を付けた。無線により、通信・ラジオ放送・電力送電などを行おうというのである。まだ電信が電線で送られていた時代の話である。

 テスラは1893年には無線送信実験に成功し、1898年には無線操縦のボートを動かして見せた。テスラは無線で世界中に送電することで、送電線のない所にいる人でも電気が使えるようになる、というシステムを構想し、それを「世界システム」と名付けた。その構想に投資家J・P・モルガンが出資した。テスラは電力を送信するための高さ60メートルの鉄塔「テスラタワー」を建設した。

 1901年、マルコーニがヨーロッパからアメリカへの無線通信に成功した。これをテスラは気にも留めなかったが、モルガンは構想ばかり巨大で完成しないテスラのシステムに見切りをつけ、1905年にテスラへの出資を打ち切った。その後テスラに出資するものはなく、彼の夢はここで終わってしまった。テスラタワーもやがて解体された。

 その後テスラは第一次世界大戦中には、無線操縦兵器、高周波で潜水艦を探知するレーダー、等の構想を発表するものの、注目されることはなかった。そして1943年に、とあるホテルの一室で看取られることも無く亡くなった。享年86歳。



●テスラ、オカルトのカリスマになる

 忘れられていたテスラだったが、生前彼が「殺人光線」「地震発生装置」などのアイデアを発表していたことで、彼は工学者というよりマッドサイエンティストとして扱われるようになり、オカルトのカリスマのような存在になってしまった。テスラの死んだホテルの一室は、今では毎日一人はテスラ信者が訪れる聖地と化しているという。

 また1990年代に世間を騒がせたオウム真理教の教祖は、1995年の阪神・淡路大震災を「ニコラ・テスラが考えた地震発生装置が起こした」などと本に書いている。



●妥協できなかった人生

 科学者というのものは最先端の研究を行うが、工学者はその研究の成果を社会に応用するためにある程度妥協する。性能が素晴らしくても高価すぎれば誰にも購入できないからである。テスラは天才で、何ができるかという事が明確に見えていたが、工学者としてそれを社会に普及させるために妥協することを知らなかった。それが悲劇の元だったのかもしれない。

 マルコーニは無線通信開発の功績でノーベル賞を受賞した。テスラはマルコーニの発明は自分の特許を侵害していると裁判に訴えた。裁判は長期にわたり、最終的に裁判所はテスラの言い分を認めたが、その判決が出たのはテスラの死んだ五か月後であった。


感想

 今回は特に「闇」ではなく、第五回の「切り裂きハンター」同様の「栄光なき天才たち」編というところでした。今回はエジソンがテスラ攻撃のためにめちゃくちゃエグイ事をしまくった話を延々やるのかと思ったら、さらっと流してしまってちょっと拍子抜けでしたねぇ。
 
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