感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第64話(シーズン3 第11話)「コールドスリープ」


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【※以下ネタバレ】
 
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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第64話 コールドスリープ The Freeze (シーズン3 第11話)

 

あらすじ

5年前現金輸送車を襲い、奪った一千万ドルを独り占めした男。今は別の罪でわざと捕まり、時効までの日々を安全に過ごそうとしていた。IMFチームは男に不治の病だと思い込ませ、コールドスリープしか助からないと思い込ませる。果たして男を待っていた未来は…。


5年前、現金輸送車を襲い、奪った1千万ドルを仲間を裏切って独り占めした男。今は別の罪でわざと捕まり、時効までの日々を刑務所で安全に過ごそうとしていた。IMFチームは男に不治の病にかかっていて、現在の医療技術では治せず、コールドスリープするしか助からない、と思い込ませる作戦に。果たして男を待っていた未来は…。

※DVD版のタイトルは「一千万ドル強奪事件」。


【今回の指令】
 現在刑務所で服役している囚人レイモンド・バレットこと本名アルバートジェンキンスは、五年前に仲間二人と共に現金輸送車を襲って1000万ドルを強奪した人物である。その後、バレット/ジェンキンスは仲間を裏切って1000万ドルをどこかに隠した後、軽微な罪で五年の刑となり刑務所に入った。その目的は、現金強奪が時効になるのを安全に待つためであり、その時効は二日後である。このままでは二か月後にバレットが釈放されれば、バレットは堂々と1000万ドルを自分のものにできる。IMFは1000万ドルの所在を突き止め、かつバレットを警察に引き渡さなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ボーマン医師、看護師、案内係


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 IMFは刑務所の医者ボーマンの協力を得て、まずフェルプスが研究者という設定で刑務所に行き、冷凍睡眠の装置の研究の被験者を探しているという話をバレットに聞かせる。その装置は、現在治療法のない病気の患者を凍らせ、治療法が出来た時点で解凍する機械、という設定である。

 しばらくしてから、ボーマン医師はバレットに対し「スモン氏病」という不治の病にかかっていて、余命は二か月もないと嘘を宣告する。そして残り刑期二か月は免除させたといって、専門医のところに行かせる。その専門医とはローランの変装で、スモン氏病の治療法の開発には何年もかかると言い、バレットをさらに絶望させる。

 焦ったバレットは、フェルプスのところに行き、強引に自分を冷凍させるようにする。フェルプスたちは冷凍するふりをして麻酔でバレットを眠らせる。

 やがて目覚めたバレットに、ローランはバレットが冷凍されてから11年が過ぎていて、今は1980年で、治療法が開発されたのでバレットの病気はすっかり治ったと言う。そして既に現金は使用されなくなったとか、区画整理で町はすっかり変わった、という嘘を吹き込み、バレットが墓地に金を隠したらしいことを突き止める。

 さらにバレットをわざと部屋から脱走させ、病室はセットである事を解らせたうえで、自動販売機の新聞の日付で、今日が1968年で時効の翌日だと信じ込ませる。バレットは安心して墓地に行き、墓石を外して隠していた現金を取り出す。一方IMFはバレットの元仲間を上手く誘導し、バレットと鉢合わせさせる。バレットがかつての仲間を撃ち殺したところに警察が到着し、バレットは逮捕される。


監督: アレクサンダー・シンガー
脚本: ポール・プレイドン


感想

 評価は△。

 ターゲットを騙すための「冷凍睡眠装置」云々という設定は大掛かりで興奮させてくれたが、肝心のシナリオがそれを生かしきれず、最終的に竜頭蛇尾となってしまった残念エピソードだった。


 話のメインとなる、IMFがターゲットのバレットを冷凍睡眠というSF的な仕掛けを利用するように仕向ける作戦は実に緻密で面白い。まずフェルプスが冷凍装置の研究で囚人のような被験者を求めていることをアピールし、続いてバレット自身が不治の病と信じ込ませ、冷凍睡眠が必要になるように追い込んでいく。

 しかもフェルプスが簡単にバレットを受け入れるのではなく、最初は断っておいて、結局バレットが「フェルプスが不治の病の妻を装置で眠らせて結果的に殺した」というネタで脅迫して、フェルプスに渋々装置を使わせる、という展開が、実に手が込んでいて、いちいち芸が細かい。


 また目覚めたバレットを騙すため

・窓の外には翼の無いジェット機みたいなSFぽい車が何台も停車してある
・リアルタイムレントゲン撮影装置みたいなものを見せる
・壁掛けテレビ(超薄い)がある
・ビデオデッキ的な物が置いてあり、付属の小型カセットのようなものを差し込むと、内容が再生される。「スポーツ」というタイトルの一つを再生すると、ロケットマン1984年のロス五輪開幕式に出てきたあれ)で空を飛びまわるのが流行のスポーツ的な映像が流れる
・医者のローランと看護婦のシナモンが服の上に透明ビニールのカッパ的な物を羽織って未来感を出している
・「現金は1975年に廃止されて、今はキャッシュカードしか使わない」と教える

など一々SFチックな小道具・設定で、バレットを11年後の世界に来たと信じ込ませに行くのが実に楽しかった。

 ところがここから話が一気におかしくなってくる。まずバレットをわざと病室から脱走させて冷凍睡眠云々が全てうそだと悟らせた後、偽の新聞の日付で当日は1968年8月18日(時効の次の日)と思い込ませるという当たりで訳が分からなくなる。あれだけ苦労して冷凍睡眠云々を仕掛けておいて、自分たちから嘘とばらして何の意味があるというのだろうか。

 結局バレットは金の隠し場所にたどり着くものの、そこにIMFがバレットの昔の仲間を誘導してきたため、両者は争いとなり、結局バレットは仲間殺しの罪でまた逮捕されてしまう。と、あれだけ手間暇かけた冷凍睡眠ネタが、終盤の展開と殆ど結びついていないのである。


 スパイ大作戦のいつものパターンであれば、最後の最後までバレットに冷凍睡眠で未来に来たと信じ込ませ、金のありかを聞き出してから車で逃走、そこに警察が駆け付けてバレットが訳が分からないまま逮捕される、という流れになるはずである。ところがそういう風に持って行かなかったので゛、「別にSFチックなことをしなくても良かったではないか」というモヤモヤ感が最後までぬぐい切れず、どうにもやりきれなかった。


 今回のシナリオ担当はシーズン3のメインライター的な立場のポール・プレイドンだが、多分「冷凍睡眠」という大仕掛けを上手くオチに結びつけるアイデアが出なかったのだと思われる。だから、せっかく苦労してバレットに未来に来たと思わせたのに、すぐに自分たちでご破算にする、という支離滅裂な展開になってしまったのではなかろうか。前半の展開で期待しただけに、終盤のオチの付け方がお粗末すぎてなんともがっかりだった。


 今回のサブタイトルの原題「The Freeze」は「凍結」といった意味。もちろん劇中で使用された冷凍装置の事である。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車を駐車場に止めて、あらかじめ停車していたもう一台の車に乗り換える。車のダッシュボードの蓋を開けると、中には8トラックカセットテープと大きめの封筒が入っている。フェルプスはカセットを車の再生機器に差し込んでテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。その男は現在州刑務所において服役中のレイモンド・バレットであるが、囚人仲間のデイビスから得た情報によると、本名をアルバートジェンキンスという。五年前、現金輸送車を襲い、仲間を裏切って、奪った1000万ドルを独り占めにした主犯である。現在服役中なのは、バレットと名前を変え、軽い罪で捕まり、5年の刑に服したからだが、それは現金強奪事件が時効になるのを待つためであり、時効は二日後に迫っている。したがってあと二月(ふたつき)で釈放されるや、バレットは堂々と1000万ドルを自分の物にすることができるわけである。

 そこで君の使命だが、1000万ドルのありかを突き止め、バレットを警察の手に渡すことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

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