【映画】感想:映画「サイレント・ランニング」(1972年:アメリカ)

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映画|NHK BSオンライン http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/
放送 NHK BSプレミアム。2017年6月23日(金) 深夜

【※以下ネタバレ】
 

地球上の植物が絶滅状態となり、わずかに残った木々や生きものたちが宇宙船のドームで育てられていた。ある日、地球から、計画を中止し、ドームを爆破、帰還せよとの指令が届く。植物学者のローウェルは、植物を絶滅させる指令に耐えられず、反乱を起こす…。「2001年宇宙の旅」はじめ、数々の傑作で特撮を手がけたダグラス・トランブルの初監督作品。愛らしいロボットと、ジョーン・バエズフォークソングが心に残る。

 

あらすじ

 未来。地球から自然という物は無くなり、人類は「地球再緑化計画」のため、わずかに残った植物を宇宙船の特別なドームの中で栽培していた。そんな宇宙船の中の一隻「バレーフォージ」の乗組員ローウェルは、熱心に仕事に取り組んでいたが、同僚三人は計画は無意味だと感じており、ローウェルを白い目で見ながら遊び暮らしているだけだった。

 ある日、計画の司令官からバレーフォージに計画の中止が告げられ、ドームを切り離して破壊するように命令が下る。ローウェルの同僚たちは次々と仕事を進めるが、命令に憤りを感じたローウェルは植物を守るため仲間を殺害し、さらにバレーフォージが事故で操船不能になったと嘘をついて、宇宙の彼方へと逃げ去る。

 ローウェルは、船の修理用のロボット(ドローン)二体に「デューイ」「ヒューイ」と名付け、修理以外に植物の世話やカードゲームの相手などについてもプログラミングする。

 船はあてもないまま旅を続けていたが、ある日ローウェルはドームの植物が枯れ始めていることに気が付く。しかもいくら調べても原因が全くつかめないままだった。さらに、計画の司令官がバレーフォージを再発見し、救助のため数時間後にやって来ることになってしまう。

 ローウェルは植物の異常の原因が太陽の光が不足している事だと気が付き、対処のためドームに多数のライトを持ち込む。さらにデューイに今後植物の世話をするように言い含めて、バレーフォージからドームを切り離す。バレーフォージに残ったローウェルは、事故で半壊していたヒューイと共に自爆した。最後、切り離されたドームが宇宙の彼方に飛び去って行くシーンで〆。


感想

 評価は○。

 1970年代頃に「特撮の神様」扱いだったダグラス・トランプルの監督作品。SF映画好きなら、ストーリーは知らなくても「作品名」と「登場する三体のロボット」だけは必ず知っている的な映画ですが、見る機会は一度も無かったので、BSプレミアムで映画の放送予定リストに入っているのを見て、軽く歓声をあげてしまいました。

 以前何かで読んだレビューでは「特撮はともかく、ストーリーはいまいち」とされており、まあ特撮の神様が作った映画ならそんなものか、と思って視聴したのですが……、いまいちだなんて、とんでもなかった! 特撮はもちろんストーリー面でもキチンとした一級の映画でした。

 スタッフ名をよく見ると、シナリオ担当に、「ディアハンター」とかのマイケル・チミノと、「刑事コロンボ」その他を書いたスティーブン・ボッコ(ボチコ)が名前を連ねており、味のあるシナリオだったのも頷ける、というところです。


 ストーリーは「波乱万丈」には程遠い静かな内容ですし、舞台も宇宙船の中に限定されているし、登場人物も事実上一人だし、ということで非常に地味ではありましたが、「滅びゆく植物をたった一人で守る男」という内容がなんとも心に染み入りました。愛する植物を守るため、他の人間を排除し、以後喋れないロボットだけを助っ人にしながら黙々と自分の世界を守り抜いていく、という展開は、制作当時より21世紀の現代の方がより共感を得やすい内容じゃないでしょうか。

 特撮が今でも古びていないのもポイントが高いです。元々派手な特撮を売りにする作品ではないので、古臭さを感じる部分もあまり無いのですよね。宇宙船が宇宙空間を飛んでいるシーンは今でも十分通じますし、また作業用ドローンのデザインは「優れたデザインは時代を超越する」とでもいうのか、全く古さがありません。これは本当に凄い。細かいところで、爆弾のデザインも下手にSFしていないシンプルさゆえに、2017年時点でも何の違和感もありませんでした。


 まあ、ちょっと気になるとすれば、バレーフォージを始めとする宇宙船団が最初一体どこにいて、どういう経緯で土星近くまで行って、どんな旅をして最終的に再発見されたのか、という位置関係がさっぱり掴めないことがややもどかしかったのですが、それは本筋ではないので良しとしますか。

 それより最大の問題は、終盤「植物が枯れていく原因が見つからない→太陽光が不足していただけでした」という展開で、これはあまりにもあまりだと思いました。これでは、こんな単純なことが思いつかなかったローウェルがただのバカに思えてしまうじゃないですか? もう少しましな展開にしてほしかったな、とは思いますね。


 とは言え そういう粗を含めてもラストシーンは何とも印象的でした。結局、ローウェルが育てた植物は地球から不必要と見なされたし、ドームを切り離したことで地球にその植物が戻ってくることは永遠になくなってしまったわけです。そしてローウェルはその事をもちろん解っている。それでも、自分は自爆する羽目になったとしても、植物を生かさずにはいられなかった。そして、宇宙のどこかに去っていくドームの中で、ローウェルの遺志を継いだロボットがせっせと植物の世話をしているシーンで終わる……、なんとも情緒的というか、「見てよかった」と思わせてくれる結末でした。古い作品でも良い物は本当に良いですね。

サイレント・ランニング
BSプレミアム6月24日(土)午前0時15分~1時46分



【製作】
マイケル・グラスコフ
【監督・特撮】
ダグラス・トランブル
【脚本】
デリック・ウォッシュバーン、マイケル・チミノ、スティーブン・ボッコ
【撮影】
チャールズ・F・ウィーラー
【音楽】
ピーター・シッケル
【出演】
ブルース・ダーン、クリフ・ポッツ、ロン・リフキン、ジェシー・ヴィント ほか


製作国:
アメリカ
製作年:
1972
原題:
SILENT RUNNING
備考:
英語/字幕スーパー/カラー/レターボックス・サイズ

 
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