感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第83話(シーズン4 第5話)「にせ札を見破れ」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第83話 にせ札を見破れ Fool's Gold (シーズン4 第5話)

 

あらすじ

連邦人民共和国がバカーン王国に1億分の紙幣と黄金との交換を要求。しかしこれはニセ札で、この取引を食い止めないと王国は破産してしまう。札鑑定士に扮して共和国大蔵省に潜入したパリス(レナード・ニモイ)は、超音波が防御する金庫から無事生還できるか…。


連邦人民共和国がバカーン王国に1億分の紙幣と黄金との交換を要求。しかしこれはニセ札で、この取り引きを食い止めないと、王国は破産してしまう。札鑑定士に扮して共和国の大蔵省に潜入したパリス(レナード・ニモイ)は、超音波が防御する金庫から無事生還できるのか…。

※DVD版のタイトルは「札束廃棄作戦」。


【今回の指令】
 連邦人民共和国(The Federated People's Republic)の大蔵大臣イゴール・ストラボス(Igor Stravos)は、バカーン王国(The Kingdom of Bahkan)の政府を転覆させるため、偽札を使用した計画を進めている。ストラボスは王国の100ドローナ紙幣(100-drona notes)の精巧な偽札を一億ドローナ分用意したうえで、王国に金との交換を要求している。もし要求に従えば、王国の金の保有量はゼロとなり、西側に友好的な政府は転覆する。IMFは、偽札とその原板を奪い、さらにストラボスが二度とこのような事を企まないようにしなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ベス


【作戦の舞台】
 連邦人民共和国


【作戦】
 フェルプスはバカーン王国の特使の男爵、パリスはその随行で偽札鑑定の専門家、という設定で連邦人民共和国に乗りこむ。パリスはストラボスに、自分は実は偽札作りのプロだと名乗ったうえで゛ストラボスが用意した金は偽札だと解っているが、300万ドローナくれたら黙っている、と申し出る。パリスはさらに、実は王国の保有している金は2億ドローナ分あるので、今のままではストラボスの「王国の金を根こそぎ奪う」という企みは上手くいかない、とも忠告する。

 ストラボスはパリスの提案に乗り、偽札をもう一億ドローナ分印刷しておいて、フェルプスを脅して金を二億ドローナ分交換させることにする。

 パリスは夜中に金庫室に忍び込み、偽札の原板をIMFが用意したものにすり替える。翌日、パリスは偽札印刷の仲間だと言って大蔵省にバーニーとウィリーを呼び込む。バーニーはスプリンクラーの配管に細工して酸のような液体を流したうえで、ストラボスが既に印刷している一億ドローナ分の偽札が保管している部屋で火を発生させ、液体で偽札を炭に変えてしまう。

 その間に、バーニーたちは、IMFが用意した欠陥のある原版を使って偽札を印刷するが、パリスがストラボスには本物の紙幣を見せて、精巧な偽札を印刷しているように思い込ませる。

 やがて金と紙幣の交換の立ち合いのため、世界通貨委員会の委員が大蔵省にやって来る。ストラボスは部下から、以前印刷しておいた偽札の束が炭になっていると聞かされ仰天するが、さらに今刷ったばかりのお札も委員に偽札だと鑑定され、進退窮まる。フェルプスはこれでは交換はできないと言って帰ってしまい、ストラボスは首相から責任をとれと言われて銃を渡される。最後、IMFチームが車で立ち去るシーンで〆。


監督: ムレイ・ゴールデン
脚本: ケン・ペットス


感想

 評価は○。

 偽札を用いた陰謀を企てる悪党に対し、IMFがやはり偽札でやり返す、という面白いエピソード。スパイ大作戦は、悪党を騙してやっつけてしまうという点で詐欺もの「コンゲーム」に近い物があるが、今回は偽札というアイテムを使った話だけに、よりその印象が強かった。

 ところで、今回のエピソードは、最初視聴した時は話がよく呑み込めなかった。大国「連邦人民共和国」が偽札を用意して、小国の「バカーン王国」から無理やり金を取り上げようとしている、という話かと思いきや、ストラボスとバカーン特使のフェルプスは和やかに話しているし、また「世界通貨委員会」の人たちが取引をチェックしに来ました、というなど、野蛮な行為をしているようにはとても見え無かった。

 その後じっくり考えてようやく背景が理解できたのだが、要するにこれは「金本位制」のシステムをテーマとしたエピソードだったのである。金本位制は、国が金を保有し、その金の価値と同じだけの紙幣を印刷する。国は求められれば紙幣と同等の価値の金を交換しなければならない。つまり、ストラボスがやろうとしていたことは、紙幣の偽造そのものはダーティーな行為だが、金を手に入れる手段については合法だったのである。

 金本位制は1970年代には消滅してしまい、国が金と紙幣の交換を保証する、などという事も半世紀前の歴史的な話になってしまったので、21世紀感覚で視聴していると全く訳が分からなかったが、放送当時(1969年10月)はまだアメリカでは金本位制だったので、当時の視聴者にはすんなり受け入れられたと思われる。ちなみに、アメリカが金本位制を廃止するのは1971年、いわゆるニクソンショックの時である。


 今回の女性エージェントはベス(サリー・アン・ハウス)だが、フェルプスの妻役としてわがままにふるまってストラボスを騙す程度で、特に特別な仕事には関わらなかったので、存在感はイマイチであった。


 今回のIMFのミッションは、具体的なゴールを示さずに、各人が仕事を淡々とこなしていくので、着地点がなかなか見えなかった。しかし

・パリスが偽一億ドローナの束の中に何かを仕込んでおく
・パリスが偽札の原板をすり替える
・バーニーが大蔵省のスプリンクラーのパイプに細工をする
・バーニーがスイッチを入れると、偽一億ドローナの束の中からパイプが上に伸びて、真上に火を噴く
・その火でスプリンクラーが作動する
スプリンクラーからバーニーが仕込んだ謎の液体(酸?)が降ってくる
・その液体を浴びて、偽札の束は炭になってしまう
IMFの原板で刷った札はすぐに偽物と見抜かれる
・ストラボスは前に作った偽札も今作った偽札も使えなくなり、打つ手なし


という流れを見て、ようやくすっきりした。かなり細部まで作りこまれたシナリオでなかなかの出来栄えだったと感心した。まあ、バーニーがスプリンクラーを作動させた際、何故非常ベルが鳴らなかったのか、という点は気になったが、細かいツッコミは野暮という物かもしれない。


 今回のサブタイトルの原題「Fool's Gold」とは、「黄鉄鉱、黄銅鉱」のことで、金によく似ていることから、転じて「見かけだけのニセモノ」といった意味とのことである。本物そっくりだが価値のない偽札、という意味合いだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが動物園で、道端に止めている園の車に乗り、シートの下から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。それは、バカーン王国発行の100ドローナ紙幣であるが、一枚は本物であり、もう一枚は偽物である。ところで、連邦人民共和国の大蔵大臣イゴール・ストラボスは、100ドローナ紙幣で一億ドローナを偽造、これを金をもって回収するようにバカーン王国に要求してきた。もしそれが偽札であることを立証できず要求に応じた場合、バカーン王国の金の保有はゼロとなり、西側に友好的な同国政権が覆ることをストラボスは見越しているのだ。

 そこで君の使命だが、偽ドローナを葬り、その原版を奪い、二度と他国にこのような脅威を与えることのないようストラボスを処理することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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