感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第88話(シーズン4 第10話)「盗まれた化学式」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第88話 盗まれた化学式 The Double Circle (シーズン4 第10話)

 

あらすじ

アメリカの国防を左右するミサイル燃料の化学式を盗み出した美術収集家。貴重な美術品をエサに彼に近づいたIMFチームは、厳重な金庫からその化学式を奪い返すべくエレベータを利用した作戦を繰り広げる。


アメリカの国防を左右するミサイル燃料の化学式を盗み出した美術収集家。貴重な美術品をエサに彼に近づいたIMFチームは、厳重な金庫からその化学式を奪い返すべく、エレベーターを利用した作戦を繰り広げる。


【今回の指令】
 先日、アメリカが開発した強力なミサイル用燃料の化学式を書いた機密書類が、高名な美術品収集家ビクター・ラズロ(Victor Laszlo)に盗まれてしまった。さらにラズロの相棒である殺し屋レイ・ダンソン(Ray Dunson)は、化学式を知る科学者を殺害してしまった。ラズロが情報を売る予定だった敵国は、既に自国で新燃料を開発したので、書類はまだラズロの手元に残されている。IMFはこの機密書類を奪回しなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ギリアン、エリック


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 IMFはまず、ラズロが貸切ってオフィスを構えているビルの12階の直下11階を確保し、12階とそっくり同じレイアウトにして調度品もそろえ、見分けがつかないレベルで複製する。さらにエレベーターに細工し、12階に直通したつもりでも11階に到着させられるようにする。

 ギリアンは某国(明らかに中国)の代理人という設定でラズロと会い、高価な美術品「北京の仏像」と引き換えに化学式を売ってほしいと持ち掛ける。ラズロはすぐさまギリアンを調べ、(IMFがあからさまに手掛かりをばらまいておいたので)、すぐに彼女がアメリカのスパイだと気が付く。ラズロは「連合人民共和国」と取引する予定なので、アメリカには売る気はないと言ってギリアンを追い出す。

 直後、フェルプスはダンソンを拉致し、連合人民共和国のスパイのふりをして、ラズロたちは自分たちを裏切ってアメリカのスパイと取引をする気だろうと詰問する。ダンソンは慌てて否定するが、フェルプスは隠し撮りだと言って、ダンソンに「ラズロが秘密の隠し部屋を作っていて、そこに書類を隠すシーン」を見せる。

 ダンソンはすぐに確認に行くが、IMFはダンソンをラズロの本物のオフィスがある12階ではなく、11階の複製の部屋に誘導し、ダンソンはそこで隠し部屋を発見する。さらにここでラズロに変装したパリスとギリアンは、ダンソンに聞こえるように、既にラズロはアメリカと取引をしているように話し合う。そしてラズロ(実はパリス)は、連合人民共和国には書類は盗まれたと言い訳し、その犯人にはダンソンを仕立て上げるつもりだ、という。ダンソンはそれを聞いてラズロに裏切られたと確信する。

 その間に、バーニーたちは12階のラズロの本物のオフィスに侵入し、隠し金庫がある壁の前に、偽の壁を置き、偽の金庫を仕込む。

 やがてラズロのオフィスに、連合人民共和国の人間が化学式の買い取りにやってくる。ラズロは金庫(実はIMFの用意した偽金庫)を開けるが、当然中身は空っぽで、ラズロは狼狽する。そしてダンソンが盗んだに違いないと掴みかかるが、ダンソンに撃ち殺される。ダンソンは、実はラズロは裏切り者で隠し部屋に書類を移していた、といって隠し部屋の扉を開けようとするが、当然そんなものは無いので開かない。連合人民共和国の人間は呆れてダンソンを射殺して立ち去る。

 最後、バーニーが本物の金庫から書類を取り出し、最後にIMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: バリー・クレーン
脚本: ジェリー・ルドウィッグ


感想

 評価は○。

 今回のエピソードは、ビルのフロアを丸ごと複製してターゲットを騙す、という大仕掛けが展開され、細部で色々と突っ込みたく所はあるものの、そこそこには面白いエピソードではあった。


 さて、このエピソードで一番腑に落ちなかったのは、「連合人民共和国」は自国で燃料を開発して情報は不要になったはずなのに、ラズロたちの機密書類を買い取りに来ることになっている点である。この点が最後まで引っかかってしまい、シナリオがおかしかったのだろうと結論付けようとしたのだが、海外の情報を調べてみて、実は日本語への翻訳に問題があることが判明した。


 実はフェルプスが冒頭で聞くテープの指令内容は、正確にはこう言っていたのである。

テープの内容(抜粋)

The man you are looking at is the eccentric art collector, Victor Laszlo, who recently arranged the theft of the only copy of a new fuel formula vital to America's missile defense.

The theft was executed by Laszlo's partner, Ray Dunson, who also killed the one American scientist capable of duplicating the formula.

Enemy scientists have recently solved the same problem, so they do not need our copy of the formula, but they will pay Laszlo handsomely for the privilege of destroying it, and thereby putting us years behind them in military capability.


Google翻訳

あなたを見ている人は最近、アメリカのミサイル防衛に不可欠な新しい燃料式のコピーのみの盗難を配しビクターラズロ、偏心アートコレクターです。

盗難はまた、式を複製することができるもののアメリカの科学者を殺したラズロのパートナー、レイ・ダンソン、によって実行されました。

彼らは、式の私達のコピーを必要としないので、敵の科学者たちは最近、同じ問題を解決してきたが、彼らはラズロの権限は気前よくそれを破壊し、それによってそれらの年の背後にある米軍の能力を置くために支払うことになります。

 つまり、連合人民共和国は、既に情報は必要とはしていないが、アメリカの手に情報が渡るのを防ぐため、あえてラズロから情報を買い取るつもりだった、という設定だったのである。こんな重要な情報を抜きにしてドラマを見せられても、話が通じないのも当然であろう。当時の翻訳スタッフは何を考えていたのかと言いたくなる。

 上記の点はさておき、今回のIMFの作戦には「ビルのフロアを丸ごとコピーして相手を引っ掛ける」という大仕掛けが繰り出されるのが、物凄い無理感が有る。いくら何でもビルのフロア一つを工事するのは結構な時間がかかると思うし、前後の事情から見てもフェルプスが指令を受けてから作戦開始まで何か月もかかったようには思えないので、この時点で現実味が無くなっている。しかしまあ、IMFには、この手の土木工事を得意とするような政府の組織とのつてがあり、国防上の緊急事態のため、24時間くらいで突貫工事をしたのかもしれない。

 とは言え、この設定を受け入れられれば、IMFがエレベーターに仕掛けをしておいて、ダンソンたちは12階に行ったつもりなのに実は11階のそっくりのフロアに来てしまっていて気が付かない、という展開を楽しめる。エレベーターが上下するたびに、リレー装置がガチャガチャ動くシーンは、なんともそれっぽくて楽しかった。

 終盤、バーニーはラズロのオフィスの隠し金庫の前に偽の壁を用意し、そこに偽金庫を埋め込んでラズロを引っ掛ける、という手を使う。当然ニセの壁は本来の壁よりはるか手前に来ているのだが、ラズロもダンソンもそれに気が付かない。二人は部屋が狭くなったとかそういうことに気が付かないくらいのうっかり者なのかと言いたくなった。

 ラスト、バーニーは偽金庫のダイヤルが9に設定されているのを見て、本物の金庫のダイヤルを9にすれば開くはず、と推測し、実際それが正解だったのだが……、金庫のダイヤルとはそういう物なのだろうか。もっとぐるぐる左右に回して開くものであろう。話を単純化しようとして、見ているほうがあっけにとられるような正解を持ち出されて、ちょっと唖然としてしまった。

 と、突っ込みたくなる点が山盛りのエピソードだったが、「IMFが悪党を上手くだました結果、勝手に自滅してしまい、IMFは悠々立ち去る」といういつものパターンは守られていたので、まあ良しとしたい。


 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはギリアンアン・フランシス)。海外の情報によるとフルネームは Gillian Colbee とのことである。アメリカのスパイという設定(というか実際そうなのだが)で、ラズロたちを翻弄したりと、なかなかの活躍ぶりであった。ちなみにウィリーの相棒の荷物持ち役として「エリック」という男性も登場していたが、彼の台詞はゼロであった。


 このエピソードのサブタイトルの原題「The Double Circle」とは「二重丸」の意味だが、正直今回の話との関連が全く分からない。劇中の何が二重丸だったのだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスがプールのフェンス横に停めてある車に乗りこむ。車のダッシュボードの蓋を開けると、中には8トラックカセットテープと大きめの封筒が入っている。フェルプスはカセットを車の再生機器に差し込んでテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。美術品収集マニアとして知られるビクター・ラズロは、このほどアメリカが開発した強力ミサイル用燃料の化学式を書いた機密書類の盗み出しに成功、しかもラズロの仲間である殺し屋レイ・ダンソンが、新燃料の化学式を知っているただ一人のアメリカ人科学者をも殺してしまった。一方最近敵国も、ミサイル用新燃料を開発、こちらの情報を必要としなくなったため、盗まれた化学式は依然ラズロの手元にあり、このままではわが国は軍備の点で非常な立ち後れを覚悟しなければならない。

 そこで君の使命だが、盗まれた化学式を奪回することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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