感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第97話(シーズン4 第19話)「老害の首相」

スパイ大作戦 シーズン4<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第97話 老害の首相 Phantoms (シーズン4 第19話)

 

あらすじ

将来有望な芸術家たちを大粛清するよう指令を出した老独裁者。高齢で幻覚を見ることもあるらしいこの首相に、視覚的トリックを使って首相の座から引きずり下ろす。

※DVD版のタイトルは「血の粛清」。


【今回の指令】
 某国の独裁者レオ・ボルカ(Leo Vorka)は、側近ゲオルギー・クール大佐(Georgi Kull)に命じて、同国の若い芸術家の大半を対象とする粛清を実行しようとしている。もしこれが実行されれば、西側に友好的な世代は壊滅的打撃を受けることになる。IMFはボルカを失脚させ、副首相バルジン(Deputy Premier Bartzin)が次期首相となるようにしなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ノーラ、エドマンド・ムーア(コメンテーター)


【作戦の舞台】
 某東側国家


【作戦】
 IMFは、ボルカが若いころリサという女性と愛し合い子供を作ったものの、その後リサが裏切ったため殺してしまい、二人の子供は行方知れずになった、という事実を利用することにした。

 某国の刑務所では、若き詩人ザーラが反体制の罪で逮捕され、クール大佐に尋問を受けていた。


 IMFは国際的に有名なコメンテーターのエドマンド・ムーアとボルカ首相のテレビインタビューを行わせ、バーニーはスタッフのふりをして首相の部屋に侵入、部屋に小型映写機やスピーカーを設置したり、首相の眼鏡を特別な物にすり替えたり、を実施する。

 続いてノーラがリサの幽霊の演技をして、それを映写機でボルカの部屋に投影する。この映像はボルカのかけている特殊なメガネでしか見ることはできない。ノーラはリサの幽霊として、ボルカとの間に生まれた息子はまだ生きているが、クール大佐に殺されかけている、と言ってボルカを非難する。IMFは偽の手掛かりで、刑務所にいるザーラこそ、ボルカの実の息子だと信じ込ませる。

 ボルカは部下にザーラを連れてくるように命じるが、IMFは途中でザーラを保護し、代わりにパリスがザーラに変装してボルカの元に乗りこむ。ボルカはザーラ(実はパリス)に、お前は息子だと告げるが、パリスは荒々しく否定したため、ボルカはカッとなってパリスを殴り倒す。パリスは死んだふりをして、同時にIMFはザーラの幽霊の映像も映写し、ノーラと二人でボルカを非難する。激高したボルカは映像に銃を乱射し、銃声を聞いて部下たちが駆け付けてくる。

 ボルカは部下たちに、そこに幽霊がいると叫ぶが、他の人間には映像は見えないので、部下たちはボルカが錯乱したとみなす。バルジン副首相は、ボルカの様子を見て、もう私が首相になるしかないと宣言し、ボルカを連れて行かせる。それを見てクール大佐はすぐにバルジンに媚びて彼が首相だと認めるが、バルジンは、クールはボルカとのコンビが長かったので仲を引き裂くのはしのびない、といって、クールも連れて行かせる。最後、IMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: マーヴィン・チョムスキー
脚本: ローレンス・ヒース


感想

 評価は○。

 IMFがトリックで心霊現象を演出してターゲットを精神的に追い込み破滅させる、という面白設定のエピソード。幽霊を策略に使用する、というのは第50話(シーズン2 第22話)「心霊現象で追いつめろ!」でも使われたアイデアだが、内容自体は全く別の方向性だったので、これはこれで面白かった。

 今回は、ボルカが部屋の中に映し出された映像を見て怯え、「おい君、そこにいるだろう!」と叫ぶのに、呼ばれて来た他の人間たちは「はぁ?」となっている光景が、もはやコントのような状態になっていて、妙におかしかった。IMFの幽霊演出も冴えていて、パリスが扮したザーラが殴り倒されて床に倒れると、その体から幽体が離脱したように映像を流し、その「ザーラの幽霊」がボルカを非難し始めるシーンなど、もう腹を抱えて笑いたくなった。

 そして今回一番面白かったのは、オチの場面だろう。ボルカが精神錯乱に陥ったとみなされて兵士たちに連れていかれ、バルジン副首相は自分が後継者になると宣言する。すると今までボルカべったりでバルジンを目の敵にしていたクール大佐は一転、にこやかにバルジンに対して「よろしくどうぞ、首相閣下」と返事するのである。その変わり身の早さからして失笑モノだったが、それを見てもバルジンは渋い顔で、クール大佐に「君と前首相ボルカとは長い間のコンビだ。今更仲を裂くに忍びんよ」といってクールを連れて行かせてしまう。この一連のやり取りが実にこっけいで傑作だった。

 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはノーラ(アントワネット・バウワー)。海外の情報によるとフルネームは Nora Bennett とのことである。しかし別にターゲットと絡むシーンがあるわけでなく、パリスに幽霊メイクをしてもらい、カーテンみたいな白い服を着て、カメラの前で「うぁぁぁ、恨めしいぃぃぃ」とか言っているだけだったので、あんまりエージェントらしい仕事をしたとは言い難いし、特に印象にも残らなかった。

 このエピソードのサブタイトルの原題「Phantoms」とは「幻、幻影、幽霊、お化け」の意味。ちなみに Phantom と ghost の違いは、前者が「目撃者の想像の産物かもしれない、あやふやなもの」、後者は「祟りを起こしたりするしっかり存在するもの」、というニュアンスの様である。確かに今回の幽霊はボルカにしか見えなかったので、Phantom がふさわしいと言えよう。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが公園の中にある火災報告用の電話ボックス(棒の上に赤い木箱が付いており、中に電話が入っている)の蓋を開けると、中には大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。(※第33話(シーズン2の第5話)「人身売買の闇を葬れ!(前編)」のシーンの使いまわし)


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。年老いた独裁者レオ・ボルカは、その側近ゲオルギー・クール大佐に若い芸術家の大半を網羅する大規模な粛清を命じた。もしこれを許せば、西側に友好的な新しい世代への希望は全面的に圧殺されてしまう。

 そこで君の使命だが、ボルカを権勢の座から追いやり、代わりに副首相バルジンの次期首相就任を確実なものにすることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ