天文学の誕生――イスラーム文化の役割 (岩波科学ライブラリー)
コズミックフロント☆NEXT http://www4.nhk.or.jp/cosmic/
放送 NHK BSプレミアム(毎週木曜 22:00~23:00)。
【※以下ネタバレ】
今回の内容
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コズミック フロント☆NEXT「知られざるイスラム天文学」
占星術と共に発展しコペルニクスの地動説誕生に大きく貢献した「イスラム天文学」。精度が極めて高く今から600年前には1年の長さがほぼ正確に観測から割り出されていた
占星術とともに発展しコペルニクスの地動説誕生に大きく貢献した「イスラム天文学」の知られざる栄光に迫る。中世のイスラム世界では人々が礼拝に必要な時間と方角を知るため天文学を学んだ。また航海や砂漠での旅に必要な情報を得るためにアストロラーベという精密な観測機器を発明した。今から600年前、ウズベキスタンの天文台では1年の長さを「365日5時間49分15秒」とほぼ正確に観測から割り出した。
現代天文学のルーツ、イスラム天文学
あまり知られていないが、イスラムの天文学は現代天文学に大きな影響を与えている。例えば星の名前。夏の大三角形デネブ、ベガ、アルタイルは、全てアラビア語から来ている(アルタイル=鳥、デネブ=しっぽ、ベガ=落ちる)。その他、アルデバラン、アタラ、アケルナル、リゲル、フォーマルハウト、リギル・ケンタウルスなどは、全てアラビア語が起源である。
7世紀に興ったイスラム王朝は、メソポタミア・エジプト・ギリシャの天文学を受け継ぎ、15世紀のルネサンスまではイスラムが天文学の中心だった。
イスラム世界で天文学が発展したのは、一つはイスラム教のためだった。イスラム教は一日五回聖地メッカに向けて礼拝しなくてはならない。そのために星で正確な方向と時間を知ることが必要だった。
イスラム天文学の成果として、世界最古の星座に関する書物が、1000年前、10世紀に作られたものが残っている。その中でアンドロメダ座の説明では、「雲」について書かれている。これは、史上最も古いアンドロメダ星雲についての記述である。
イスラムで天文学が発展した理由
イスラム世界で天文学が発展したのは、商人たちの商船の航海で位置などを知るためでもあった。そのために使用されたのが「アストロラーベ」というアナログコンピューターだった。アストロラーベの起源はギリシャで、イスラムの科学者がそれを発展させた。
アストロラーベは星座早見盤に似たような器具で、星の高さを元に時間や自分の位置を把握できた。また歯車を組み込んだアストロラーベも存在し、それは歯車を使った機械で世界最古のものである。イスラム世界は当時世界最先端の技術を誇っていた。
しかしイスラムで天文学が発展した理由の一つは、意外にも「占星術」のためだった。当時は月や太陽やその他の惑星は地球に影響を与えていると考えられており、占星術は立派な自然科学の一分野だった。
またイスラムは当時世界最大の天文観測所を作り、太陽の運行を計測した。その結果はじき出されたのは「一年は365日5時間49分15秒」という計測結果だった。これは現代計測されている「365日5時間48分46秒」と29秒しか違わない。驚異的な観測精度だった。