【未発売ゲーム】幻の堀部秀郎氏原画ゲーム「斑霧」「Leviathan」

Yours―堀部秀郎ART WORKS (JIVE FAN BOOK SERIES)
Yours―堀部秀郎ART WORKS

 1990年代から2006年まで活躍した堀部秀郎というイラストレイターがいた。描くイラストは、基本的にはアニメ絵だが、凛とした感じ、とでも表現すれば良いのか、実に魅力的な女性キャラを描く人で、非常に人気があった。しかしこれから、というときに、2006年に36歳の若さで亡くなられてしまい、ファンを嘆かせた。

幻の未発売ゲームを追え!

 先日、「幻の未発売ゲームを追え! : ~今明かされる発売中止の謎~ 」(天野譲二)という本を読んだ。

幻の未発売ゲームを追え!  : ~今明かされる発売中止の謎~

 これは、かつて(超マイナーな)ゲーム雑誌「ユーゲー」および「ゲームサイド」に連載されていた連載、その名も「幻のゲームを追え!」の内容を加筆修正して一冊にまとめた本で、タイトルですべて言い尽くされているが、発売が予定されながら、その後消えてしまった未発売ゲームを扱っている。

 「メタルマックス ワイルドアイズ」「バイオハザード1.5」といった有名どころから、「インジュカーシス」という一部の人間の琴線に刺さるタイトルまで、幅広く取り上げられている。その中で「File29 天才イラストレイター堀部秀郎の遺した、二つの作品」というタイトルで二作品が取り上げられていた。

「斑霧」

Interlude (Playstation2)
Interlude (Playstation2)

 「斑霧」は「むらぎり」と読む。2003年に発売された「インタールード」の開発スタッフが再結集し、PS2用向けに伝奇系ゲームとして開発されていた。AVGCRPG風の戦闘システムを組み込むといった意欲的なシステムを採用していたが、それがあだとなって開発が難航し、2006年末に開発中止となった、という事だったらしい。

 既に原画についての作業は終わっていたらしく、実に惜しい話である。


「Leviathan」

Fragments Blue (フラグメンツ・ブルー) スペシャルエディション (限定版)
Fragments Blue (フラグメンツ・ブルー) スペシャルエディション (限定版)

 2003年に制作が告知された伝奇系ストーリーのAVG。18禁。これを知っている人間はかなり少なかったはずである。何せ、発表されたのは同人誌だったのだから……

 2003年の夏に同人ゲーム開発チームの「Silver Bullet」が「Preparation for Leviathan」という同人誌を発行して、設定を紹介している。

 それによると「学校と家庭の両方でいじめを受けていた主人公・森崎出水(もりさき・いずみ)は、耐え切れずに自殺を図る。しかし人間が悪魔と呼ぶ存在『Leviathan』と融合して蘇る。そして出水は、自分と同じように魔と融合した人間と戦うことになる……』とダークさここに極まれりといった感じのゲームとなる予定だったらしい。

 今、丁度同人誌が手元にあるので見ているが、魔は「巨獣」と呼ばれ、海の「Leviathan/レビヤタン」の他に、陸の「Behemoth」、巨鳥「The Zo」がいると記されている。なおレビヤタンが「ベターマン・ネブラ」、べへモスが「ベターマン・フォルテ」に結構似ているのは、時代のせいだろうか(ベターマンの放送は1999年4月~9月、と、発行のほんの4年前の話だった)。

 予定では、2003年の冬に体験版発売、2004年夏にゲーム発売、の予定だったが……、翌年2004年の夏に発売された本では、制作がいったん中断されたことが告知されている。なんとなれば、Silver Bulletは同人ゲームではなく、ゲーム機向けAVG「PIETA(仮題)」の開発に移行してしまったからである。このPIETAこそ、2006年に発売された「FRAGMENTS BLUE」(フラグメンツ・ブルー)だった。そして2006年に堀部氏が亡くなったことで、Leviathan も幻のゲームとなってしまった……

 しかし、天野譲二氏の取材によれば、Silver Bulletの代表だった村上智右氏は「あくまで開発凍結であり、中止ではない」と答えたという。多分にリップサービスではあろうが、僅かでも希望が残る言葉ではある。


 懐かしい名前を見たことで、10年ぶりに堀部秀郎氏氏の同人誌を見直した……、10年経ってもこの人の絵の魅力は一向に変わらない。


Colors―堀部秀郎 ART WORKS〈2〉
Colors―堀部秀郎 ART WORKS〈2〉 (JIVE FAN BOOK SERIES)