感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第86話(シーズン4 第8話)「黒いファイル」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第86話 黒いファイル Mastermind (シーズン4 第8話)

 

あらすじ

政府高官に対する脅迫材料を集め、これを使っての組織的犯罪を企む男からそのファイルを奪うため、金庫へと近づくバーニー(グレッグ・モリス)。一方フェルプス(ピーター・グレイブス)とパリス(レナード・ニモイ)は、この男を破滅させるべく罠にかける。


政府高官に対する脅迫材料を集め、これを使って組織的犯罪を企む男。そのファイルを奪うため、金庫へと近づくバーニー(グレッグ・モリス)。一方、フェルプス(ピーター・グレイブス)とパリス(レナード・ニモイ)は、この男を破滅させるべく、罠を仕掛ける。

【今回の指令】
 シンジケートの一員ルー・メリック(Lou Merrick)は、政府の高官に対しての脅迫材料を集めたファイルを作り、それを犯罪に利用しようと企んでいる。メリックは近く開催されるシンジケート全国大会にファイルを提出予定である。そのファイルは、現在はメリックのボスである支部長のジョナス・ストーン(Jonas Stone)の金庫に保管されている。ストーンは、メリックを次期後継者として指名しようと考えている。IMFは脅迫ファイルを手に入れ、またメリックを抹殺しなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:バーマン(医者)、カルビン(製薬会社社員)、ラーキン(看護師)、窓ふきの男(名前不明)


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 ストーンは、表向きは実業家としてふるまい、バーマン医師の脳医学研究所に(税金逃れのため)多額の寄付をしている。IMFはバーマンの協力を得て、作戦を開始する。

 メリックは支部長のストーンに、麻薬を扱えば大金が手に入ると訴えるが、ストーンはシンジケートの規約で麻薬ビジネスは禁止されている上に、麻薬中毒者は危険すぎると言ってたしなめる。またストーンの部下でメリックのライバルのニコルソンは、メリックが次期支部長に内定しているので、あからさまにメリックを恨んでいる。

 IMFはストーンに脳卒中そっくりの効果を起こす薬を盛り、さらに服に盗聴器を仕掛ける。続いてフェルプスがバーマン医師の部下の研究者という設定でストーンの元を訪問するが、その会見中にストーンが薬の効果で倒れ、フェルプス脳卒中だと診断してすぐにバーマンの病院に運び込む。その間に、バーニーはストーンの部屋の隣に侵入し、隠し金庫の裏側のあたりの壁を掘り始める。

 その間、メリックはストーンの代理を引き受けることになるが、IMFはメリックに思わせぶりな電話をかけたりして、ストーンが実は麻薬ビジネスをひそかに行っている、と信じ込ませる。

 フェルプスは、寝ているストーンとパリスの頭を電線で結ぶという怪しげな実験を行い、メリックには人間の思考を別人に伝える研究をしていると説明する。メリックは最初は疑うが、パリスがメリックとストーンしか知らないはずの事(※実はIMFも盗聴で知っている)を口にしたため、実験を信じ始める。

 パリスは寝ているストーンの思考を受信しているふりをして、まさにストーンとしてふるまい、自分はメリックにも内緒で麻薬を扱っていたと説明する。そして製薬会社の悪徳社員のガルビンが会社から横領している医療用モルヒネをストーンが受け取り、それをヘロインに加工させて儲けていると解説する。そして今日の午後六時にも100万ドルの取引があり、ガルビンが金をとりに来る、と言う。

 メリックはパリスと共にストーンの部屋に戻り、パリスに隠し金庫を開けさせようとする。既にバーニーが金庫を裏側をこじ開けて、脅迫ファイルを盗むと同時に、金庫の番号を取り決めたものに変更していたので、パリスはちゃんと金庫を開ける。そしてそこにガルビンが来たので、メリックはモルヒネの代金として隠し金庫の100万ドルをガルビンに渡す。そのあと、部下にどこかでパリスを殺せと連れて行かせるが、パリスはフェルプスに救出される。

 一方病院ではバーマン医師がニコルソンに電話し、メリックが病室を封鎖してストーンを治療させてくれない、とニセの報告をする。慌ててニコルソンが飛んでくるが、既にメリックもフェルプスもいなくなっているので、バーマンは驚くふりをする。さらにバーマンは、ストーンは薬で眠っているだけで全く体に問題は無いし、またフェルプスは病院の医者ではなく、メリックが連れてきた素性不明の医者である、と説明する。それを聞いたストーンとニコルソンは、メリックが裏切ったと信じ込み、すぐに事務所に戻る。

 ストーンは事務所に戻り、メリックが隠し金庫を開け、金は消えており、さらに脅迫ファイルも無い事を発見する。状況が解らないメリックは、説明させてくれと頼むが、ストーンは聞く必要も無いとニコルソンにメリックを射殺させる。そしてIMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: ギオーグ・フェナディ
脚本: ジェリー・ルドウィッグ(原案: ジェリー・ルドウィッグ&リチャード・ニール・モーガン


感想

 評価は○。

 フェルプスたちが、緻密な罠を仕掛けてターゲットを陥れ、最終的に自分たちの手を汚さずにターゲットを始末させる、というIMFの計略が完璧に決まったお手本のようなエピソードで、もう大満足だった。原案を二人で考えているからか、話の密度が濃く、極めてレベルの高いエピソードだった。


 今回のミッションの目玉となるのが、フェルプスが研究中として披露した「ある人間の思考を別人に伝達する」というシチュエーションである。寝ているストーンとパリスの頭を、頭の周りに装着する電極と電線のようなもので結び、さらに途中に脳波計かまして、怪しい実験装置を演出し、そしてパリスがストーンとメリックしか知らないことを口にすることで、ストーンの精神がパリスに伝わっているように見せかけるのである。

 実はIMFは会話を盗聴して聞いていたのでいろいろと「秘密の事実」を知っているのだが、もちろんメリックはその事を知らないから実験が本当なのだと信じ込んでしまう。こういう突拍子もない大嘘を大真面目に演じてターゲットに信じ込ませる、という展開こそスパイ大作戦の醍醐味で、テレビの前でつい笑ってしまった。

 笑うといえば、IMFの仕掛けがもう一つあり、フェルプスが手元の隠しボタンを押すと、寝ているストーンの頭部がピクピクと動いて、いかにも何かを伝えているような雰囲気を演出しているのが妙に可笑しかった。動かす仕掛けそのものは不明だが、パリスの会話と合わせて無理やりストーンの頭を動かして、意思伝達が行われているように見せかけるのは、シチュエーションとしては真面目なのだが、見ているほうは苦笑せざるを得なかった。

 それにしても、この実験は、最初はちゃんと電線で頭部をつないで行っていたのだが、後半ストーンがパリスを銃で脅し、電線もつながっていないのにストーンと交信するように指示する。もうこの時点で脳の実験というよりテレパシーというかなのだが、パリスもそれに乗って、いかにもストーンの精神がパリスに宿ったような感じで演じて見せるのである。このあたりのメリックの騙されぶりは、真実を知っている視聴者視点からすると、とにかく痛快だった。

 そして、IMFの罠にまんまとはまったメリックは、結果的に組織の金に手をつけ、脅迫ファイルは紛失したと言い訳するという、完璧な裏切り者という立場になって、結果ストーンに始末されてしまうのである。このあたりの巧みな展開はもう溜息が出るほどだった。

 また今回は細かい所も良く出来ており、序盤にウィリーがストーンと同じエレベーターに乗り、こっそり薬を噴霧する段取りからいきなり面白いのだが、その後も、ウィリーやガルビンがメリックに接触して、有りもしない麻薬ビジネスが存在しているようにメリックを誘導していく過程、バーマン医師がIMFと上手く連動してニコルソンやストーンを騙す流れ、など、隅々まで面白かった。


 ちなみに、今回の劇中で「モルヒネからヘロインを生成する」という説明が有るが、これは適当な嘘ではなく本当の話で、モルヒネに対し「アセチル化」という化学操作を加えることによってヘロインが生成される。ウィリー演じる化学者がヘロインを生成している、という話は絵空事の展開ではなかったのである。


 このエピソードのサブタイトルの原題「Mastermind」は、「偉大な知能(の持ち主)、指導者、黒幕」といった意味である。今回のエピソードのどの部分を指しているのか今一つピンとこないが、パリスがストーンの精神が宿って賢そうになったように見えた、というあたりが該当するのだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが波止場に行き、停泊している船に乗りこんで、甲板の物入れから大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。政府の高位高官に対する脅迫材料を集め、これを使って組織的犯罪を企んでいるのは、その男ルー・メリックである。彼はその脅迫材料をファイルして、シンジケート全国大会に提出しようとしている。現在メリックの脅迫ファイルは、彼のボスであるシンジケートの支部長ジョナス・ストーンが、その金庫に保管しており、ストーンは次期後継者としてメリックに特別目をかけている。

 そこで君の使命だが、メリックを抹殺し、その脅迫ファイルを手に入れることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ