【TRPG】黎明期のテーブルトークRPG「スペースコプラ 最終兵器」(バンダイ)を調べてみた

コブラ 大解剖 (SAN-EI MOOK)
 
 以前に、日本のTRPG黎明期のプレTRPGとでもいうべき「イメージプレイDOシリーズ」(バンダイ)を研究したことが有ったのですが、

perry-r.hatenablog.com

 バンダイはそれより前にさらにもう一つプレTRPGを発売していたことを確認しました。その名も「スペースコプラ 最終兵器」(1983年)。


そもそも「スペースコブラ」とは何ぞや?

〈ANIMEX 1200シリーズ〉(16) スペースコブラ オリジナル・サウンドトラック

 「スペースコブラ」は、若い人にはなじみが無いでしょうが、要するに寺沢武一先生のSF漫画「コブラ」のテレビアニメのこと。1982年10月から1983年5月まで放送され、出崎統演出、野沢那智コブラの声、大野雄二作曲のオープニングテーマ、等々が組み合わさったイカしたアニメでした。


「スペースコプラ 最終兵器」

COBRA vol.1 COBRA THE SPACE PIRATE

 「スペースコブラ 最終兵器」(以下「最終兵器」)は、1983年にバンダイボードゲームのブランド「バンダイifシリーズ」の一作として発売されたTRPGです。「ifシリーズ」は、ウォーシミュレーションゲームやマルチゲームなどがラインナップされており、この「最終兵器」もシミュレーションゲームという扱いで発売されています。まあ、当時の状況では「ロールプレイ」云々という用語を持ち出しても通じないと思ったからでしょうか?


 コンポーネントはこんなところです。

スペースコブラ 最終兵器 | 中古 | シミュレーションゲーム | 通販ショップの駿河
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/607033238001
商品解説■漫画・アニメと根強い人気を誇るSFアクション『スペースコブラ』を再現したシュミュレーションボードゲームです。
シナリオは「スペースコブラ」のオリジナルストーリーの中から、最もゲームとして面白いと思われるものを選び4つに分割。
それぞれのシナリオ1つ1つで楽しめるのは勿論、4つ連続させて長編冒険ゲームとしても充分に楽しめます。
この「スペースコブラ 最終兵器」でのあなたの獲物は、キャプテン・ネルソンの伝説の秘宝”最終兵器”です。
途中、宇宙の悪漢・海賊ギルドや、女海賊スノウ・ゴリラたちも”最終兵器”を狙ってあなたに襲いかかります。
見事難関を突破して”最終兵器”を手に入れられるかどうかは、あなたの適確な判断力と何より仲間とのチームワーク次第。
さあ、百発百中のサイコガンを携え、仲間達と大宇宙へ飛び出そう!!


<内容物>
プレイングファイル(ゲーム盤)×1枚
キャラクターカード×38枚
ユニットコマ×68枚
6面体ダイス(黒)×1個
20面体ダイス(黒)×1個
マーカー×10個
時間記録チェックシート×1セット
ゲームプレイングマニュアル×1冊
ゲームシナリオ×1冊

 
 

システムはというと……

ロールプレイング・ゲーマー (Vol.1(2003Spring))

 気になるゲーム内容ですが、これは2003年発売のTRPG雑誌「ロールプレイング・ゲーマー」創刊号で軽く紹介されています。

 純粋なTRPGではなく「多人数で遊ぶゲームブック」とでもいうべきもので、シナリオが書かれたゲームブック的な冊子が入っており、ゲームマスターGM)がその場の状況と選択肢を読み上げ、コブラやレディ役を担当するプレイヤーがそれに対応する、という感じでプレイします。

 シナリオで戦闘が発生した場合は、バインダー形式のゲーム盤を開いて、そこにユニットを置いて解決します。もっとも射程とか射角とかそういうのは無いので、実のところゲーム盤もユニットもプレイには必要は無いのですけどね。前述のコンポーネントリストの中に、TRPGには場違いと思える「プレイングファイル(ゲーム盤)」や「ユニットコマ」という物が見受けられますが、そういう理由で入っていたわけです。


 ゲーム板やユニットがどんなものかは、こちらのブログが参考になります。
 ↓
slgplayer.exblog.jp

バンダイIFシリーズ2種をJr.と対戦 : マイケルの戦いはまだまだ続く
http://slgplayer.exblog.jp/22530777/

 
 

シナリオはというと……

コブラ 2 イレズミの女の巻 JC851032 (JUMP COMICS)

 シナリオは二本入り。一つは練習用の「ガルタンの宮殿」。こちらはシステムになれるというか雰囲気をつかむためのもので、本当に短いらしいです。

 もう一つが本命の「海賊ネルソンの秘宝」。原作の「イレズミの三姉妹」のエピソードを元にした全四部構成です。どんな内容かというのは、1983年に発売されたシミュレーションゲーム雑誌「シミュレイター」の3・4号にリプレイが乗っているので大いに参考になりましたが……、結構ヒドイ(笑)



 感じとしては

GM「君たちは惑星XXにやってきた。君たちが行けるのは酒場と鉱山と保安官事務所だ。どうする?」
コブラ「よし、酒場に行こう」
GM「酔っぱらった酒場の客が絡んで来た。どうする?」
コブラ「よし、殴って追い払おう」
GM「(サイコロを振って)君は相手を殴り殺してしまった。(さらにサイコロを振って)君たちは保安官に逮捕されて牢屋に放り込まれた。どうする?」
コブラ「よし、保安官を買収して出してもらう」
GM「(サイコロを振って)失敗。保安官は買収を拒否して、さらに見張りが増えたぞ。どうする?」

 とかいう感じで話が進むらしいです。ちなみに、シミュレイター掲載のリプレイはふざけているのか本当なのかは知りませんが、とにかくひどい展開で(笑)、コブラたちがロクな目に会いません(笑) まあ実際シナリオが進むたびに、色々待ち受けている障害の難易度がどんどん上がっていって、それを突破するのは凄い幸運が必要らしいです。


 あと、コンポーネントの一つの「キャラクターカード」に、キャラクターの能力とかが全て書いてあって、「クリスタルボーイにはレーザー兵器が通用しないので、コブラが迷わずパイソンをぶっぱなしてクリスタルボーイを瞬殺する」というリプレイも語り草です。


結局のところ……

コブラOVAシリーズ Blu-ray BOX

 リプレイを読む限り、TRPGというよりも「面クリア式の運試しゲーム」にしか思えません……

 しかしまあ、まだTRPGという物が根付いていない日本で、TRPG的な物を普及させていこう、と知恵を絞った末の、この内容だったのかもしれませんね。

 まあ、こういう「ボードゲームと絡めてTRPGを徐々に理解させていこう」とかいう努力はあまり実らず、結局ストレートにTRPGを提供した「ローズ・トゥ・ロード」や「トラベラー」の方が成功を収めていくことになりましたが……、


 この話の教訓は「へたな小細工をせず、いい物はそのまま提供すべき」という事でしょうか……
 
 
コブラ−COBRA DVD BOOK 死闘! クリスタル・ボーイ