【ゲームブック】「完全犯罪ゲーム」(1985年)のレビューはどれを読んでも味が有る

完全犯罪大百科―悪党見本市〈上〉 (創元推理文庫)

 西東社は1985年~1987年頃のゲームブック全盛期に多分100冊以上ゲームブックを出版した会社ですが……、当時からなんとも異彩を放つというかそういう会社でした。他の会社が「ファンタジー世界で冒険者が迷宮に挑戦する」みたいな王道の作品を出版している頃、この会社は「さいとうたかをイラストのゲームブック」だとか「サッカーや野球やミッドウェー海戦がテーマのゲームブック」だとか、どうにも妙な方向性のゲームブックばっかり出していた記憶しかありません。


 そんな西東社が出版した中でも異色作として有名(?)なのが、「主人公が犯罪者になり完全犯罪を狙う」というとんでもないテーマの一作「完全犯罪ゲーム」。作者の桜井一氏は、のちに「風間一輝」という名前で小説家として活躍した人で、イラストはというと、なんとエイトマンとかで有名な桑田次郎先生……、テーマといいイラストレイターの選択といい、1985年時点の子供たちに売る気が有ったのかと疑問が込み上げてきます……


 そんな作品ですが、それとも「そんな作品ゆえに」なのか、結構レビューが良く見つかります。そんなレビューを三つほどご紹介。


 一つ目。

「推理クイズ」の世界を漂う」 桜井一『完全犯罪ゲーム』(西東社 シミュレーション・ブックス4)
http://www.geocities.jp/hyouhakudanna/mystery-quiz/sonota158.htm

シミュレーションの選択肢はそれほど難しくなく、ちょっと慣れてしまえばすぐに「完全犯罪達成」となるであろう。それでも桜井一らしい、皮肉たっぷり溢れる文章が楽しい。また、「完全犯罪達成」には6通りのパターンがあるし、警察に捕まったり死んでしまったりするENDも含めると23通りの終わり方があるので、全部試してみるのも面白いだろう。

 「ゲームブック」としてではなく、「推理クイズ本」の一つとしての評価。このサイトを見て、犯人のトリックがカーの小説からのまるパクリということを知りました……、良いのかそれ。



 二つ目。

完全犯罪ゲーム アドベンチャー・ミステリー (シミュレーション・ブックス - 殺人は罪の味 - シミルボン
https://shimirubon.jp/reviews/1680558

ミステリのゲームはたいてい主人公が探偵(ないし助手)になって事件を解決しますが、「完全犯罪ゲーム」は殺人事件を起こした主人公が、どうやって完全犯罪を達成するかを目指す、犯人視点のゲームブックです。
計画的な殺人事件で、いかに警察を出し抜くか、策を弄していきます。
どうやって警察をだますかを考えるのは悪魔的で蠱惑的でした。

 本のレビューの投稿サイト「シミルボン」のコンテンツ。ちなみに、この投稿が書かれたのは2017年3月です……、何故今年になってこれを?



 三つ目。

冒険記録日誌 完全犯罪ゲーム(桜井一/西東社)  その1
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/bin/day?id=79672&pg=20130923

冒険記録日誌 完全犯罪ゲーム(桜井一/西東社)  その2
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/bin/day?id=79672&pg=20130924

 山口プリンさんによるゲームブック専門のサイト「冒険記録日誌」で、ネタバレ満載でこのゲームブックの内容が語られていました。ネタバレを気にしない人なら必読というか、山口プリンさんの独特のユーモアあふれる文章には大笑いさせていただきました。

 特に

※1 西東社ゲームブックシリーズそのものに、発売当時から既に古いセンスを感じていたのは私だけでしょうか。貸本時代・巨人大鵬卵焼き・戦後復興なんて言葉を連想する時代に発売された方が違和感ないと思います。

 という一文には死ぬほど笑いました。やっぱりみんなそんな風に感じていたんですねぇ(笑)


 ちなみにこのゲームブック、発売当時に大量に出回ったのか、西東社ゲームブックにしては珍しく今でも2000円くらいで手に入るようです。ご興味のある向きにはいかがでしょうか。
 
 
完全犯罪大百科―悪党見本市〈下〉 (創元推理文庫)
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