感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第118話(シーズン5 第14話)「市長室乗っ取り」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン5(105~127話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン5」あらすじ・感想まとめ

 

第118話 市長室乗っ取り Takeover (シーズン5 第14話)

 

あらすじ

知事選で現市長を押す副市長一派。扇動家を雇い学生運動をあおることで、現職知事失態を演出し、市長に問題を解決させて一気に人気を高めようと企む。IMFはこの計画を暴露し、副市長らを失脚させるため、学生運動にダナ(レスリー・アン・ウォーレン)を送り込む。


知事選で現市長を押す副市長一派は、扇動家を雇い学生運動をあおることで現職知事失態を演出、市長に問題を解決させ一気に人気を高めようと企む。IMFはこの計画を暴露、副市長らの失脚させるため、学生運動にダナ(レスリー・アン・ウォーレン)を送り込む。

【今回の指令】
 某市では副市長チャールズ・ペック(Charles Peck)が、彼の傀儡である市長スティーブ・トールマン(Mayor Steve Tallman)を、次の知事選で知事にしようと計画している。某市では学生運動が盛んであり、トールマンの対立候補である現職知事も手を焼いている状態である。ペックは、プロの煽動屋ビリー・ウォルシュ(professional provocateur Billy Walsh)を雇い、学生たちを過激な運動に走らせておき、それを鎮圧することでトールマンのイメージ向上を計るつもりである。IMFはアメリカの威信を傷つけるこのような行為を阻止し、ペックを永久追放しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、ダナ、バーニー、ダグ
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 IMFは、まずフェルプスが裏社会の大物という設定でペックたちと接触し、トールマンのような候補を応援したいと資金援助を申し出る。またダナはプロの扇動屋という触れ込みでウォルシュに近づき、彼の計画を手伝うことになった。ウォルシュは学生をアジった後、爆弾で皆殺しにして証拠を全て消すつもりである。

 一方パリスは、トールマンに連絡し、トールマンが昔付き合っていた女性の名前を持ち出して呼び出す。パリスは、その女性は出産時に死んだが、子供は生きていて、まさに今この街に来ているので会わせると申し出る。そしてトールマンにダナを引き合わせるが、ダナはそっけない態度で金を要求し、もう二度と会わないと言って立ち去ってしまう。

 やがて学生グループは、ダナの発案で、市長室を占拠し自分たちの要求を訴える事になった。ペックはダナがトールマンの隠し子だと知り、あとくされの無いように学生たちと共に爆殺するようにウォルシュに命じる。パリスはトールマンそっくりに変装して、周囲に気が付かれないようにすり替わる。

 フェルプスはペックに、トールマンはどうも頼りないので、ペックこそが知事選に打って出るべきだとそそのかすが、ペックは断る。やがてダナを含めた学生たちが市長室に乗りこみ、窓から外に向かって自分たちの要求を訴え始め、テレビが中継を始める。

 ウォルシュは学生たちのいる部屋の外に爆弾を仕掛けるが、バーニーが入ってきて爆弾を解体する。やがてトールマン(実はパリス)が駆け付け、学生たちの言い分を認め、話し合いに応じると言い出す。それを見てフェルプスはあんな弱腰な男は支援できないと言い、ついにペックは自分が知事選に出馬することを決め、トールマン(パリス)を殺そうとする。

 パリスはウォルシュに射殺されそうになるが、バーニーがウォルシュを取り押さえる。パリスはテレビカメラに向かい、全てはペックの仕組んだ芝居だと言い出し、ペックは慌てて逃げようとするが警官に捕まってしまう。本物のトールマンは、IMFからペックの悪事について証言すれば逮捕されないと聞かされ、観念して協力すると言う。そして娘の事を気にするが、全て芝居だったと聞かされ、愕然とするのだった。


監督: ヴァージル・W・ヴォーゲル
脚本: アーサー・ウェイズ(原案: ジェリー・トーマス&アーサー・ウェイズ)

感想

 評価は○。

 第5シーズンでは廃止されたかと思っていた「テープの指令」→「IMFが計略で任務を達成する」という王道パターンのエピソードで、1~4シーズン目のノリが完璧に帰ってきて、なかなか面白い話だった。

 今回のエピソードは、大学生たちの過激な学生運動が重要な背景設定となっている。このエピソードが放送された時期(1971年1月)は、フランス五月革命(1968年5月)を始めとして世界的に学生運動が盛り上がっていた頃で、当時としては旬なテーマだったという事になる。

 もっとも50年後の今では、大学生が政治に不満を持って過激な行動に走る、という展開は、もう遠い過去の事でしかなく、画面の見た目よりもこの設定で、古さを実感させられてしまった。そもそも指令の中の「アジらせる」という単語が、2017年時点でもはや死語であろう。

 また、IMFが対処すべき相手が、東側某国の秘密警察であるとか、ネオナチであるとかの大物ではなく、単に選挙のために何人かを殺そうとしている程度の政治屋とその取り巻き、というところに、スパイ大作戦も昔とはずいぶん変わったなぁと思わずにはいられなかった。この程度の悪事なら、IMFがわざわざ出張る必要は無く、警察とかで十分ではないのか、という感が有った。

 という諸々は有ったとしても、IMFの計略そのものは実に面白かった。まずダグがチンピラに扮してわざと警官に捕まり、自分のボス(フェルプス)が大物であることをアピールして、ペック一味とフェルプスを上手く引き合わせると言う流れなど、なかなかに巧みだった。

 また、ダナが学生運動の雇われアジテーターに、パリスが市長に、それぞれ接近して、計略で上手い事はめていくという展開も見事だった。そして、最後、フェルプスがそれまで裏方に徹していたペックをそそのかして出馬を決意させ、トールマンを殺させるように持っていき、殺されそうになったトールマン(実はパリス)が怒ってペック一味の企みをテレビにぶちまけてしまう(という風にふるまう)、という流れが実に痛快だった。

 例え、ターゲットの悪事の規模は小さくても、「IMFが策略で相手を上手くはめてしまう」という流れが巧みにできてさえいれば、話としては十分面白いということが再認識できた一本だった。

 今回の悪党たちのボスのペックを演じたのは、ケン・スウォフォード(Ken Swofford)という俳優だったが、この人の顔がなんとなくウィリアム・シャトナーに似ていて、「ミスター・スポックに続いて、カーク船長までスパイ大作戦に出演したのか?」と思ってしまった。

 今回のテープの指令では、いつものおなじみの文言「例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。」が抜けていて、ちょっと驚かされた。日本語の台詞で省いただけで、英語バージョンではあるのだろう、と思って原文をあたってみたら、やはりそちらでも台詞が抜けていて再度驚いた。やはりテープの指令は「例によって~」と「このテープは自動的に消滅する。成功を祈る!」が揃っていないと物足りないと言えよう。

 今回のサブタイトルの原題「Takeover」とは「乗っ取り」の意味。

参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが占いの店(無人)に入り、物入れから大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。

参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。副市長チャールズ・ペックは、目下来たる選挙において、彼の傀儡市長スティーブ・トールマンを知事の椅子に押し上げようと画策している。ペックは、知事選における対抗馬である現職知事も手を焼いた、暴力的学生運動を、手際よく処理した切れ者市長トールマンというイメージ作りを狙っており、そのためプロの煽動屋ビリー・ウォルシュを金で雇い、盛んに学生たちをアジらせている。このような政治的乱脈は、広く自由世界に対する合衆国の威信をはなはだしく損なうものである。

 そこで君の使命だが、流血を未然に防ぎ、副市長ペックを永久追放することにある。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

シーズン5(105~127話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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