感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第123話(シーズン5 第19話)「核武装条約書」

スパイ大作戦 シーズン5<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
シーズン5(105~127話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン5」あらすじ・感想まとめ

 

第123話 核武装条約書 The Catafalque (シーズン5 第19話)

 

あらすじ

第2のキューバ危機を招くとされる核武装条約書。この存在を暴露するため、IMFメンバーはこの条約に調印したサンパスカルの首相の甥にワナを仕掛け、首相に疑惑の目を向けさせるが…。

※DVD版のタイトルは「死体は一切関知しない」。


【今回の指令】
 南米の国家サン・パスカル(San Pascal)の首相ミゲール・フェーゴ(Miguel Fuego)と、その甥で彼の後継者と目されているラモーン・フェーゴ(Ramone Fuego)は、このたび敵性国家との間に密かに核兵器に関する条約を締結した。その内容は、サン・パスカルが核ミサイルを導入しアメリカの東半分を狙うというもので、このままでは第二のキューバ危機が発生する恐れがある。これを阻止するには、ミサイルが導入される前に世界に条約内容を公開するしかない。IMFは、条約書を入手しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、ダナ、バーニー、ダグ
 ゲスト:無名メンバーが4人


【作戦の舞台】
 南米の国家サン・パスカル


【作戦】
 サン・パスカルでは、首相ミゲールの弟・ラモーンの父親である故ビクトリオ・フェーゴは、革命の際に倒れた英雄として尊敬され、遺体はガラスの棺に安置されていた。

 パリスはアルフレッドと名乗ってラモーンの前に現れ、父親が罪もなく刑務所に入れられているので解放してくれと頼む。パリスは父親は二十数年前の革命の際、ビクトリオの暗殺計画を知って防ごうとしたが、ミゲールたちに捕まり刑務所に入れられたのだと言う。パリスは、ビクトリオは味方に殺されたのであって、もしビクトリオが存命ならミゲールは首相になれなかっただろう、と思わせぶりに言い、そこにフェルプス扮する秘密警察が来たので、慌てて逃げ出す。

 続いてダナがラモーンを誘惑してホテルに連れて行き、いちゃつきながら、ラモーンの銃を同型の空砲だけのものとすり替える。そこにダグがダナの亭主として現れ、浮気に激怒して銃を持ち出すふりをしたため、ラモーンは自分の銃でダグを射殺してしまう(とIMFが信じ込ませる)。そこにIMFの協力者が扮した秘密警察が現れ、ラモーンを逮捕して眠らせてしまう。

 一方、バーニーとダグは、ビクトリオの遺体の安置してある部屋の天井に忍び込み、ガラスの棺を釣り上げて遺体を外に出し、そのあとそっくりのロウ人形を棺に入れて元に戻す。

 ラモーンは刑務所で目覚め、秘密警察役のフェルプスは、ミゲール首相の命令でラモーンを嵌めたこと、そして一生刑務所から出られないこと、を伝える。そのあとパリスが老人に変装をして監獄の秘密の抜け穴から現れ、ラモーンに対し、二十年以上捕まっているが抜け穴を掘っているのであと数年で出られると言う。ラモーンは、この老人が先に会ったアルフレッドの父親だと気が付き、話を聞くと、ビクトリオは死んでいないし、細かいことは当時の日記に書いたが、もう日記の在処も全て忘れてしまったと説明する。

 そのあとフェルプスたちはわざとラモーンを脱獄させ、刑務所の入り口では変装を解いたパリス=アルフレッドが待っていて、二人が鉢合わせするように仕向け、ラモーンとパリスはそのまま逃げ出す。ラモーンはパリスの父が昔ロウ人形を作っていたと聞き、「ビクトリオの遺体」は実はロウ人形で、その中に日記が隠してあると推理し、とりに行く。

 そして人形を壊して日記を取り出し、内容を読むと、ビクトリオは彼の人気をねたむ兄のミゲールと秘密警察のロドリゲス大佐に捕まり、廃人にされて病院に入れられたと書かれていた。それを信じたラモーンが病院に行くと、ビクトリオに扮したIMFの協力者がおり、それを見て、ラモーンはミゲールたちの裏切を信じ込み、復讐してやると誓う。

 そしてラモーンはミゲールたちを強請るため、パリスと共に抜け道を通って首相官邸に入り込み、秘密金庫の中から条約書を取り出して持ち去ろうとする。ラモーンはさらに金を盗もうと机を物色し始め、その間にパリスはこっそり条約書を持って消えてしまう。そこにミゲールたちが現れ、ラモーンはミゲールたちを非難するが、パリスが条約書と共に消えていることに気が付き唖然とする。最後、IMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: バリー・クレーン
脚本: ポール・プレイドン


感想

 評価は○。

 今回のエピソードは、第5シーズンでは異例の、冒頭にいきなりテープの指令シーンから始まり、綿密な作戦で相手を騙し、最後に車で立ち去る、というスパイ大作戦の王道中の王道展開に終始する。そのため、見ていて懐かしいことこの上なかったし、オチも含めて、第5シーズンのエピソードの中では飛びぬけてクオリティが高い回で見ていて大満足だった。

 それもそのはずで、今回のシナリオは、第3・4シーズンにメイン級のライターとしてシナリオを量産したポール・プレイドン(Paul Playdon)が久々に担当していた。ポール・プレイドンは、第5シーズンでは番組から離れたようで全く名前を見なくなっていたが、久しぶりに執筆してくれたわけである。さすが全盛期のスパイ大作戦を支えたシナリオライターだけあり、今回の内容はまさしく王道の一言で、心の底から堪能できた。

 今回は、IMFが相手が大事にしているモノを手に入れるため、相手を騙して保管した当事者たちの手で取りださせる、という、いかにもIMFらしい作戦が展開される。具体的には、IMFは無名の助っ人も動員して、あの手この手でラモーンを騙して、二十年以上前に死んだ父親が実は生きていた、と信じ込ませ、自らが隠していた条約書を取り出すように持っていくのである。ホテルでのハニートラップ、閉鎖された刑務所での一幕、病院で待ち受ける偽シスターと偽物ビクトリオとの対面、などの色々用意された、ラモーンを引っ掛けるための仕掛けがいちいち面白かった。

 今回のエピソードの目玉となるシーンは、何といっても、バーニーとダグがガラスの棺の中の遺体をロウ人形にすり替えるために、棺をワイヤーで釣り上げたり降ろしたりするシーンだろう。棺の周囲には四人の衛兵が一メートルも離れていないところに背中を向けて立っており、いくら棺を直視していないといっても、あれだけ大きなものを釣り上げたり降ろしたりすれば、なんとなく違和感を感じて気が付きそうなものである。よしんば、四人の衛兵がそれに気が付かない鈍感ぞろいだったとしても、作業中に部屋の外から誰かが入ってきたら、一発アウトである。

 と、現実味に欠ける綱渡り的作戦なのだが、視聴者的には「兵士の見ていない後ろを大きな棺が登ったり下りたりする様」が実に視覚的に面白く、そういう派手な見た目で視聴者を満足させるという点では百点満点だった。視聴していて、あまりのリアリティの無さについ笑いだしてしまうくらいだった。

 また、ラモーンの銃をすり替える際にも、ダナがラモーンから取り上げた銃を何気ないふりをして机の上の箱の上に乗せ、キスしながら足を延ばして机の脚にあるボタンを押すと、箱の表面がクルリと180度回転し、そっくりの銃が出てくるシーンも楽しかった。第五シーズンに入ってから、スパイ大作戦は予算削減か何かのためか、この手の面白ギミックや秘密メカを活用するシーンが皆無になってしまったので、久々に秘密道具の活躍には心が躍る思いだった。

 最後も、IMFが敵に仲たがいをさせ、いがみ合っている隙に、パリスが目標の条約書を手に入れ、さっさと逐電しているという展開が、いかにもスパイ大作戦らしくて、オチまで良く出来ていた。第5シーズンは番組が方針転換をしてしまって気に入らない作品ばかりとなってしまい、視聴するのがきつくなっていたが、終盤にこんな良く出来た話に巡り合って、いささか救われた気分である。

 今回のサブタイトルの原題「The Catafalque」とは、「棺を乗せておく台・棺台(かんだい)」のこと。今回はバーニーたちが棺台の上で、ガラスの棺を釣り上げたり戻したり、と作業したので、そこから付けた物と推測される。しかし、内容的には、「棺」そのものをサブタイトルにした方がしっくりくる気もするが……

参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスがイベント会場のような騒がしい場所に出向き、置いてあるセルフ写真撮影ボックスに入り、椅子の前の鍵を開けて大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。

参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。南米サン・パスカルの首相ミゲール・フェーゴと、その甥で彼の後継者と目されているラモーン・フェーゴは、このたび敵性国家から核ミサイルを導入し、わが国の東半分を狙うという核武装条約に密かに調印した。これを許せば第二のキューバ危機を招く恐れは十分あり、それを避けるためには核ミサイル導入以前に条約内容を広く世界に公開するしかない。

 そこで君の使命だが、この条約書を入手することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン5(105~127話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com