感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第129話(シーズン6 第2話)「タイムスリップ」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第129話 タイムスリップ Encore (シーズン6 第2話)

 

あらすじ

犯罪組織の幹部を逮捕するため、過去の殺人事件の真相を暴こうと、犯人 に自分が1937年にタイムスリップしたと思い込ませる作戦を実行する。


犯罪組織の幹部を逮捕するため、過去の殺人事件の真相を暴こうと、犯人に自分が1937年にタイムスリップしたと思い込ませる作戦を実行する。迫るタイムリミット。そして…異変に気づいた仲間の追っ手が迫る!

※DVD版のタイトルは「時代逆行30年」。


【今回の指令】
 合衆国北東部を支配する強力な犯罪組織の最高幹部フランク・スティーブンス(Frank Stevens)とトミー・クロール(Thomas Kroll)は、数々の犯罪を重ねているが、証拠が無いため逮捕できない。IMFは二人の犯罪の証拠を入手しなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:ダグ・ロバート、ビル


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。医者に変装した男が病室のベッド脇の酸素ボンベに時限爆弾を仕掛けて立ち去る。直後検事が現れ、ベッドの女性にクロールたちの犯罪について証言するように頼むが、次の瞬間爆弾が爆発し病室が吹き飛ぶ。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 IMFは、三十数年前に若き日のクロールとスティーブンスが、対立していたダニー・ライアンという男を殺害した証拠を見つけようと計画する。そしてクロールを床屋で待ち構え、薬で朦朧とさせたところに、殺し屋がやってきて発砲したような芝居をしてから、クロールを失神させる。

 そのあとIMFはクロールを映画スタジオに運び込み、顔にシリコンを注入したり髪を染めたり元気が出るような処置をしたりして若返らせるが、ダグはこの処置は6時間しか効果が無いという。そして映画のセットで1937年の街並みを完全に再現し、エキストラにも当時の服装をさせてから、クロールの目を覚まさせる。

 クロールは気が付くと、自分が1937年6月30日にいて、さらに肉体が若返っている事に混乱する。フェルプスたちは警官のふりをして、今クロールはダニー・ライアン一派と仲間割れして抗争している最中で、お前を殺しに来たのはライアンの子分だろう、と言う。

 IMFメンバーのビルは若き日のスティーブンスに変装し、クロールを警察から釈放させると、クロールにライアンを殺してしまおうとそそのかす。事態に呆然としていたクロールも、ようやく時間が巻き戻ったことに慣れ、ライアン殺しに同意する。二人は馴染の酒場にライアンを呼び寄せ、ダグが変装したライアンがやって来ると、二人で銃を乱射してライアンを殺してしまう(とIMFが思わせた)。

 ビルはクロールにライアンの死体を隠さないとまずいと言うと、クロールは地下室の壁の向こうに隠し部屋があるのでそこに隠そうと提案し、死体を抱えて地下に降りる。

 バーニーとウィリーは現実の酒場(今は廃屋になっている)におり、地下室に降りると壁を叩き壊して隠し部屋を見つけ、中に白骨化した本物のライアンの死体と凶器の銃があるのを確認する。それを聞いたフェルプスたちは映画スタジオからさっさと車で立ち去る。

 クロールは隠し部屋に入る秘密のスイッチを必死に探していたが、ふと気が付くとスティーブンス(ビル)もライアンの死体も無いので慌てる。さらに外に飛び出してみると往来には誰もいないため、人を求めて駆け出すが、だんだん若返りの効果が薄れて元の老けた姿に戻っていく。そしてそこにクロールを探していたスティーブンスが現れ、二人で言葉もなく突っ立っているシーンで〆。


監督: ポール・クラズニー
脚本: ハロルド・リビングストン


感想

 評価は○。

 今回のエピソードは、ターゲットに「時間が30年以上前にまで巻き戻ってしまった」という突拍子もない嘘を信じ込ませる痛快エピソードで、手間暇かけた芝居がシーズン2~4の頃を思わせて、久々に楽しめる話だった。

 今回のゲストキャラの「トミー・クロール」を演じるのは、SFドラマ「スタートレック宇宙大作戦」で主役のカーク船長役を演じたウィリアム・シャトナーである。前シリーズまでIMFにいたパリス(レナード・ニモイ)は、やはりスタートレックにスポック副長役で出演しており、この二人の共演が実現していればもっと面白かったのに、といささか残念ではあった。

 今回の作戦は、ターゲットのクロールが30年以上前に犯した殺人の証拠(死体と凶器の銃)が未発見のため、殺人現場となった街の一角をそっくり再現し、クロール自身も美容手術的な物で若返らせて、時間が逆戻りしたと信じ込ませ、犯行を再現させる、という、SFチックな手の込んだものである。

 過去にも、過去にもターゲットを騙すため、閉鎖空間に閉じ込めておいてから「世界大戦が勃発した」だの「潜水艦に乗っていて敵から攻撃を受けている」だの信じ込ませるというエピソードがあり、大いに楽しませてもらったものだったが、今回はそのスケールアップ版で、やっぱり楽しい回となった。

 セットは、単純にビルの見た目を再現しただけではなく、きちんと中も作りこんでおり、クロールの住んでいたアパートは当時の家政婦の記憶を元に家具から冷蔵庫の中身まで再現、映画館に入ればちゃんと当時の映画を上映しており、ラジオ放送も当時の録音をテープで流し、空には当時のプロペラ機を飛行させ、と、徹底して騙しにかかっているのが、視聴者としては見ていて笑ってしまった。

 番組おなじみの「ちょっとした危機」場面では、クロールと接触した「1937年の人間」のポケットから「ケネディ銀貨」(50セント。当然1960年代以降の硬貨)が飛び出してしまい、それを慌てて隠すシーンが登場した。普通こんな作戦に参加するなら、現代の物は全て着替えの時に置いて来るべきだろうと思え、ちょっとわざとらしさもあったが、それなりに盛り上がったので良しとしたい。

 番組は50分過ぎまでクロールが過去に戻ってきたと信じ込ませることに費やされたため、IMFは一体どうやって目的を達成するのだろうと訝しんでいたが、残り時間数分というところでようやくライアン殺しの再現を行わせ、死体を隠そうとするクロールの行動から本物の死体を見つけ出す、という手が使われ、思わず膝を叩きそうになってしまった。

 最後に、クロールが一人で映画のセットに取り残され、無人の町を走り回った挙句、年老いたスティーブンスと再会する、というオチも痛快で良かった。スパイ大作戦はシーズン4の末期からロクなエピソードが無かったが、突如かつてのような秀作が放送され、嬉しい驚きとなった。

 ところで視聴しているときは気にもしていなかったが、30数年前の殺人事件の証拠を見つけて意味が有るのか、という点だが、実はアメリカには殺人事件には時効が無いそうである。だから30年前であろうが証拠を見つければ御用ということになる。


 今回のサブタイトルの原題「Encore」とはフランス語で「もう一度」という意味。つまり「アンコール」の事です。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが博物館に入ると、古い自動車が展示されている。そして、その中の車の南京錠のかかった箱を開け、中から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。フランク・スティーブンスとトミー・クロールは、合衆国北東部を支配する強力な犯罪組織の最高幹部である。彼らは数々の悪事を重ねているが、それらの犯罪に対し有罪を証明する確証が無いため逮捕できない。

 そこで君の使命だが、その確証を入手することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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