感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第132話(シーズン6 第5話)「皆殺し波止場」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第132話 皆殺し波止場 Shape-Up (シーズン6 第5話)

 

あらすじ

公共施設であるはずの波止場が地下組織の人間に牛耳られている。ケイシー(リンダ・デイ・ジョージ)が親友の娘として近づき、フェルプス(ピーター・グレイブス)が幽霊船の噂をでっち上げ地下組織をつぶしにかかる。


公共施設であるはずの波止場が地下組織の人間に牛耳られ、組織の財源にされている。ケイシー(リンダ・デイ・ジョージ)が親友の娘となり近づき、フェルプス(ピーター・グレイブス)が幽霊船の噂をでっち上げ、地下組織をつぶしにかかる。

【今回の指令】
 とある波止場は、シンジケートの配下にある男フランク・デラニー(Frank Delaney)によって支配されている。そのため、波止場は公共施設であるにもかかわらず、シンジケートに礼金を払わない船は荷下ろしできない状態である。今までにもデラニー排除の試みが行われてきたが、そのすべてが失敗している。IMFは波止場に巣くうシンジケートを壊滅させなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。港でシンジケートのメンバーのモーガンが、デラニーに指示して邪魔な男を事故に見せかけて殺させる。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 IMFは、警察のオルコット警部と協力してデラニーに作戦を仕掛けることにした。デラニーは、10年前にオリオン号という船の上で友人マーフィーを殺害したと思われるが、マーフィーは行方不明のままでデラニーが殺したという証拠はない。またデラニーはモーガンとは、そりが合わず対立している。

 フェルプスはデビット・サルマン号という船の船長という設定で波止場に現れる。デラニーは船を見て、これが元オリオン号だと気が付き、何故改名したのかと聞くと、フェルプスは船には悪霊が憑りついているからだと答える。それを聞いてデラニーは激高し、さっさと波止場から出て行けと命令するが、フェルプスはエンジンが壊れているので当分無理だと言う。

 バーニーは流れ者としてデラニーに雇われると、倉庫の積み荷が駄目になるように次々と破壊工作を行う。モーガンはデラニーに波止場の管理をしっかりやれと文句を言う。デラニーは逆にこれは誰かの破壊工作なのでシンジケートが俺を守れと言うが、モーガンは港の管理はお前の仕事だと突き放す。

 ケーシーは、マーフィーの娘としてデラニーの家を訪問し、デラニーは迷惑がる。デラニーは部下にケーシーを調べさせ、ケーシーはデラニーが父親(マーフィー)を殺したと考えていて証拠を探している、と信じ込む。デラニーはすぐに腹心マイクにケーシー殺害を命じるが、ケイシーはマイクを眠らせて危機を脱する。そのあとIMFはケイシーの死体が見つかったというニセの新聞記事を出させる。

 デラニーはフェルプスに船を修理してやったので早く出港しろとせかすが、フェルプスは今度は船員が悪霊を恐れて全員逃げてしまったので無理だと説明する。デラニーは船員を用意してやると言ってから、オリオン号を訪ねると、甲板の上でフェルプスが首をつって死んでいるのを見つける(もちろん偽装)。すぐさま幽霊船の話は波止場中に広まり、デラニーはますます苛立つ。

 バーニーは捕まえていたマイクに、自分がモーガンの手下で、デラニーを排除するため活動していたと思わせ、電話でデラニーをオリオン号に呼びつけさせる。マイクは隙を見てバーニーを射殺して(実は空砲)、そのままオリオン号に向かう。バーニーは、デラニーと、シンジケートのボス「ミスターC」にも電話して、オリオン号に呼ぶ。

 オリオン号の上でまずデラニー&マイクとモーガンが出会い、デラニーはモーガンを問答無用で撃ち殺す。そこに続いてミスターCたちが現れ、モーガンの死体を見つける。慌ててデラニーはこれは正当防衛だったと訴え、自分も船長のように殺されるところだったと言い訳する。ところがそこにピンピンしているフェルプスが現れ、デラニーはパニックに陥る。

 ミスターCはデラニーに、過労のために頭の中に自分勝手なストーリーを作ってしまったのだと言って、部下にデラニーを消すように指示して立ち去る。デラニーがミスターCの部下に捕まっているところにオルコット警部がパトカーで現れ、デラニーに車に乗らないかと言う。殺されたくないデラニーは慌ててパトカーに飛び込む。最後にIMFメンバーが車に乗って立ち去るシーンで〆。


監督: ポール・クラズニー
脚本: エド・アダムソン&ノーマン・カトコフ


感想

 評価は○。

 今回のエピソードは、手の込んだ策略と痛快なオチが組み合わさった全盛期を思わせる秀作で、久々に堪能させられてしまった。

 IMFメンバーは過去シーズンより減って四人になってしまったものの、四人がそれぞれフルに活躍して悪漢たちに策略を仕掛けて作戦を進めていくため、人数が減った物足りなさという物は感じなかった(まあ、その分、バーニーやウィリーが裏方で秘密の小道具を駆使するようなシチュエーションが無くなったという事でもあるが……)

 今回の作戦のメインの道具は、IMFがわざわざ用意してきた貨物船で、船長役のフェルプスが船には悪霊が憑りついていると吹聴し、船上で殺人を犯した(と思われる)デラニーを心理的に追い込んでいく、というシチュエーションが面白い。さらにフェルプスが船上で首をつって死んだふりをして見せ、デラニーにさらなるプレッシャーをかける展開が、IMFの狙いは全く分からないながら楽しませてくれた。

 IMFフェルプスによる幽霊騒ぎ、バーニーによる倉庫の荷物への損害、ケイシーによるマーフィー事件の掘り起こし、という三方向からデラニーを追い込んでいくが、これがどうデラニー追い落としに繋がるのかはなかなか見えてこないため、視聴者をやきもきさせてくれる。

 そしてそのまま残り時間5分ほどになり、これはいったいどうオチを付けるのかと見守っていると、まず船上でデラニーがモーガンを撃ち殺した後に、ボスのミスターCたちがやって来てモーガンの死体を見つけてしまい、デラニーが焦りだすあたりから、ようやく視聴者にもIMFの狙いが見えてくる。

 そしてデラニーがモーガン殺しを必死で正当防衛だったと弁解し、この船の船長のように殺されるところだった、と力説しているところに、何食わぬ顔でフェルプスが現れ、デラニーを呆然とさせるシーンはもう爆笑物だった。こういう「騙された悪党には訳が分からないが、仕掛けが解っている視聴者には痛快極まりない」というクライマックスシーンこそスパイ大作戦の醍醐味であり、この回はそれが十分に炸裂していた。

 最後、デラニーがボスのミスターCに精神錯乱したとみなされ、消されそうになるところに、警察のパトカーがすっと近づいてきて、乗っていくように勧めるとデラニーが飛びつくシーンがまたおかしかった。このあとデラニーが警察に連行され、オルコット警部に今までに自分のやらかしたことを洗いざらい自白しただろうことは想像に難くない。IMFが一時間かけて色々やっていたのは、この結末へと持ってくるためだったわけである。

 今回のように、IMFが任務を達成するため複雑な作戦を遂行するシナリオは、第四シーズン辺りで品切れになっていた感が有ったが、今回はその頃の勢いを思わせる完璧な回で、スパイ大作戦もまだまだ捨てたものではないと感心してしまった。


 今回のサブタイトルの原題「Shape-Up」は、おそらく名詞の「日決めで港湾労働者を雇う方法」だと思われる。とりあえず波止場に関係するような訳語はこれしか見つからない。あまり作品内容に関係するサブタイトルにも見えないが……


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で海辺の絨毯屋に乗り付けて、ドアの鍵を開けて店に入り、店内に置いてあった大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを見つける。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。この男フランク・デラニーは、シンジケートの配下で波止場を支配している。ドックは全て市当局が所有する公共施設であるに関わらず、シンジケートに礼金を支払わぬ船舶は錨も積荷も降ろすことができぬ状態だ。このデラニーを失墜させんがため、既に多くの努力が払われてきたが、その都度証人を消されて失敗に終わった。

 そこで君の使命だが、波止場におけるシンジケートを壊滅させることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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