【科学】感想:NHK番組「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」第3回「芸術(アート)のジョーシキを疑え」

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/
放送 NHK Eテレ。全12回。金曜22:00~22:30。

【※以下ネタバレ】
 

世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』で知られる進化生物学者ジャレド・ダイアモンド博士が、アメリカ・ロサンゼルスで、若者向けに行った特別授業を12回にわたって放送。ヒトと動物の違いと共通点に注目し、言語やアートの本質、夫婦の不思議、そして、なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのかを考える事によって、環境破壊や、戦争と大量虐殺など人間が抱えている問題について、解き明かしていく。

 

第3回 芸術(アート)のジョーシキを疑え (2018年1月19日(金)放送)

 

内容

第3回「芸術(アート)のジョーシキを疑え」


ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送する。


第3回は、アートについて。ヒトは自分たちが作り出した芸術を、進化の象徴だと考えている。しかし動物もヒトに負けない見事な作品を作り出すという。ヒトは何を求めてアートを生み出すようになったのか。ジャレド・ダイアモンド博士が、動物の例をヒントに疑問を解き明かしていく。


【出演】進化生物学者…ジャレド・ダイアモンド,【声】糸博

 
 今回は芸術(アート)がテーマ。


●アートの定義

 アートとは何か? 美しい夕日はアート? 今着ているシャツが綺麗だからアート? カッコイイスポーツカーはアートか?

 博士の定義するアートの条件は三つ。

1)生きていくための機能が無い。
 シャツは体を温めるための機能があり、ゆえにアートではない(グレーゾーンの物もありますが…)

2)人が作ったもので美的欲求を満たす
 美しい夕日は人を感動させるが、人が作ったものではないのでアートではない。

3)遺伝ではなく、習得によって生み出される。
 鳥の美しいさえずりは、技術習得の結果ではなく、遺伝子に組み込まれているものだからアートではない。バッハの名曲は、遺伝子の働きではなく、彼が習得で生み出したものだからアート。



●動物もアートを作る?

 動物にアートは無いのか? それらしいものはある。例えばアマミホシゾラフグのオスは、海底の砂の上に芸術的な円形の模様を作る。それはメスを引き寄せ、交尾・産卵の場となる。優れた模様を作れることは、自分が優れていることをアピールできメスを引き寄せる。

 アオアズマヤドリのオスは、草を使って家状の物を作り、さらに青い物を持ってきて飾り立てる。これもメスへのアピール。綺麗なアズマヤを作りそれを維持できることは、自分が優れていることの証明。

 このように動物のアートらしきものはオスによるメスへのアピールである。



●人類最初期のアート

 人類のアートはいつからあったのか? 14000年前のラスコー洞窟の壁画や、40000年前の「ホーレ・フェレスのビーナス」当たりが最古だと思われていた。しかしアフリカで見つかった30万年前の石器こそ最古のアート。

 石斧だが綺麗に左右対称に作られている。手で持つところも刃になっているので実用性としてはイマイチだが、見た目は美しい。道具としてよりも見た目重視。作ったのが男性だったとしたら、女性に対して自分がこんなものを作れるというアピールのために作られたのではないか。これは人間のアートと動物のアートをつなぐ物ではないか。


感想

 なるほど、「芸術とは何か」とか言われてみると定義は難しいですな。そして博士の「アートって何だと思う?」と聞かれて、すぐさま答えをポンポン出してくる生徒たちがめっちゃ賢すぎる。
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)