【ゲーム】「真説・コンピュータRPGの起源」を整理する:1975年~1980年のCRPG

ロールプレイングゲームサイド Vol.1 (GAMESIDE BOOKS)

真のコンピューターRPGCRPG)の起源は?

 最初のCRPGは何か? 日本のゲーマーは、長い間「ウィザードリィ」と「ウルティマ」だと教えられてきました。フィールド移動型の祖先がウルティマ、ダンジョン探索型の祖先がウィザードリィ・シナリオ1、そしてそれ以前に大型コンピューター上で「ローグ」というプレCRPG的なゲームが遊ばれていた……

 これが日本のゲーマーの常識でした。ところが2010年代になって、それは全く正しくないという事が明らかになって来ました。2014年に発売された雑誌「ロールプレイングゲームサイド Vol.1」では、「真説・コンピュータRPGの起源」と題して、ウルティマウィザードリィ以前のCRPGを詳細に紹介しています。

 ここでは、その内容を時系列順にまとめて整理・紹介していきます。


前提1:PLATO(プラトー

 プラトーとは、1970年代にイリノイ大学を中心に構築されていたコンピューターネットワークのこと。大学に設置したスーパーコンピューターに、専用に開発した端末を接続して使用する教育用システム。当時「コンピューターの端末」と言えば、画面などついておらず、テレタイプという「結果を印刷して打ち出すタイプライター」が当たり前だった時代に、画面・キーボード・タッチパネルが付いていた。システムは、メールにチャットにグループウェアに、と、21世紀にようやく実現したと思われたことが既に実装されていた。

 プラトーイリノイ大学だけではなく、回線を引いた他州の大学、さらには海外(オーストラリア、ベルギー、南アフリカ)でも使用できた。

 プラトーは本来は教育用システムだったが、学生たちがこっそりゲームを開発しては遊んでおり、総使用時間の20パーセントはゲームに使われていたという。

 その後パソコン通信やインターネットの普及でプラトーは市場を失い、1993年に停止した。

 実はこのプラトー上で1970年代からゲームが遊ばれていたのだが、大学生限定のネットワークだったのでほとんど知られていなかった。


前提2:D&Dダンジョンズ&ドラゴンズ

 テーブルトークRPG。1974年に発売された「剣と魔法の世界」系のゲーム。当時の学生に多大な影響を与えた。


 以上を踏まえて以下の歴史を読んで頂きたいと思います。


黎明期のCRPG 其の一:大型コンピューターの時代


●Monster Maze (1973頃)(スーパーコンピューターCDC6600)

 テキストAVG。洞窟内を探索し、魔物と戦い、宝物を手に入れるのが目的。テレタイプ使用で、周囲の状況は文字で表示される。詳細不明。


●m199h/プラトー版Monster Maze (1974~75頃)(プラトー

 前述のMonster Mazeをプラトーに移植した物。テキスト表示ではなく、画面で見下ろし型マップを表示した。本来のゲーム名ではなくファイル名の「m199h」の方が有名。史上初のCRPGと目されるが、内容は殆ど不明。


●Pedit5/The Dungeon (1975)(プラトー

 D&Dをコンピューターでプレイする、という目的で作られたゲーム。キャラクターは一人で、見下ろし型マップの一階建てダンジョンを探索する。現存していて2014年時点でプレイ可能だった。

The Dungeon/PEDIT5 (1975)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2011/12/game-68-dungeonpedit5-1975.html

 
 
●Orthanc(オルサンク) (1975末)(プラトー

 「Pedit5」を別人が発展させたゲーム。見下ろし型マップ。ダンジョンは10階建てとなり、定期的に自動更新される仕様。現存していて2014年時点でプレイ可能だった。

 開発者がD&Dの発売元のTSR社にゲームの設定を使わせてほしいと連絡したところ、向こうは意味が理解できていない様子だったが、「金儲けに使うのでなければOK」と返答してきた。つまりオルサンクは史上初のD&D対応ゲームだった。


dnd/The Game of Dungeons (1975)(プラトー

 オルサンク同様に「Pedit5」越えを目指して作られたゲーム。見下ろし型マップ。ドラゴンを倒してオーブを持ち帰るのが最終目的で、史上初のラスボスが登場するゲーム。大人気ゲームとなりプラトー末期までプレイされた。

 「dnd」はファイル名で、正式なゲーム名が「The Game of Dungeons」。

The Game of Dungeons/dnd (1975)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2012/02/game-69-game-of-dungeonsdnd-1975.html

 
 
●Dungeon (1975)(メインフレームPDP-10)

 プラトーとは全く別の場所で作られた「D&Dをコンピューターで再現する」系のゲーム。マップは文字記号のみで構成され、近・遠距離攻撃の区別が有り、独自AIで動くNPCが用意され、最大六人のパーティーを組むことが出来た。


DND(1976)(メインフレームPDP-10)

 前述の「dnd/The Game of Dungeons」とは無関係。「D&Dの再現」ゲームの一つ。見下ろしマップ。敵とのエンカウントや戦闘はリアルタイム。

 のちにパソコンに「テレンガード Telengard」という名前で移植された。

Telengard (1982)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2010/03/game-6-telengard.html

 
 
●Moria(2D版) (1976)(プラトー

 「dnd/The Game of Dungeons」越え目的で作られたゲーム。開発者は制作時点ではD&Dを全く知らなかったと言い、そのためD&Dの影響は薄い。見下ろしマップ。ダンジョンを完全自動生成する世界初のゲーム。


●Oubliette(ウブリエット) (1977)(プラトー

 「D&Dの再現」系ゲームの一つ。3D視点。パーティプレイに特化したバランス、仲間を集める酒場、死んだキャラは仲間が助けに来るのを待つ、アイテムの鑑定、サムライやニンジャが職業としてある、といった要素を実装した。つまりウィザードリィの仕様は、このゲームから影響を受けている。

Oubliette (1977)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/10/game-12-oubliette-1977.html

 
 
●Moria(3D版) (1978~1979)(プラトー

 「Moria(2D版)」を3D視点に作り直したもの。

Moria (1975)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/11/game-121-moria-1975.html

 
 
Avatar (1979)(プラトー

 ウブリエット越えを目標に作られたゲーム。3D視点。シングルプレイでもそれなりに遊べるバランス。クエストが自動生成される。プラトーにおけるオンラインCRPGの決定版となった。

Avatar (1979)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/11/game-124-avatar-1979.html

 
 
 

黎明期のCRPG 其の二:パソコンの時代

DND #1 (1977)(ミニコンPDP-11)

 ウルティマリチャード・ギャリオットが高校生時代に作ったゲーム。テレタイプで操作する。テキストAVG風味で、単語入力で操作し、状況はテキストで描写、という形式。能力値は有るがレベルは無い。10×10のマップを文字記号で表示する。


●Beneath Apple Manor (1978)(アップルII)

 世界初の商用CRPG。ダンジョンの奥底に置いてある「ゴールデンアップル」を持って帰るのが目的。ダンジョンが自動生成される。

Beneath Apple Manor (1978)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2012/12/game-79-beneath-apple-manor-1978.html

 
 
●Dungeon Campaign (1978)(アップルII)

 抽象的なダンジョン脱出ゲーム。ゲームを始めるとまず自動で4階分の迷路が自動生成される。そのあと画面は暗くなり、プレイヤーはキャラクター(一人ではなく一部隊が一つのブロックで抽象的に表示されている)を動かして迷路を踏破し全体を明らかにしていく。そしてモンスターと戦ったり宝を拾ったりしながら、迷路の出口を目指す。

Dungeon Campaign
http://www.mobygames.com/game/dungeon-campaign

 
 
●Wilderness Campaign (1979)(アップルII)

 「Dungeon Campaig」と同じ作者の作品。史上初の屋外探索ゲーム。プレイ毎に、一画面に町やその他が書かれたマップがランダム生成される。プレイヤーは10人一組のパーティーを使って、マップを探索していく。シミュレーションRPGのはしりと言えなくもない内容。

Wilderness Campaign (1979)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/02/game-87-wilderness-campaign-1979.html

 
 
●Akalabeth(アカラベス) (1979 or 1980)(アップルII)

 ウルティマリチャード・ギャリオットの作品。フィールドは2D視点、ダンジョンは3D視点、という使い分け。現在まで続くストーリー型CRPGの先駆けとなった。

Akalabeth: World of Doom (1979)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/03/revisiting-akalabeth-world-of-doom-1980.html

 
 
●The Wizard's Castle (1979) (ソーサラー

 テキストAVGにパラメーターやレベルなどの要素を加えた「テキストRPG」。商用発売される予定だったが中止になり、作者がリストを無償公開した。

The Wizard's Castle (1980)
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/02/game-90-wizards-castle-1980.html

 
 
●Temple of Apshai(テンプル・オブ・アプシャイ) (1979)(アップルII他)

 黎明期の大ヒットゲームで「ウルティマ」「ウィザードリィ」より売れていた時期もあったという作品。見下ろし型マップで廃墟の「アプシャイ寺院」の中を探索し、モンスターと戦ったり宝を入手したりするという物。ストーリーは特に存在せず、ダンジョン探索に特化したゲーム。

 テーブルトークRPGD&Dを一人でやるためのツール、という感じで、キャラクターのパラメーターはD&Dと同じで、自分がテーブルトークで使っているキャラの数値をそのまま入力可能。またダンジョン内の部屋には番号が振られており、マニュアルのその番号のところを読むと、いかにもプレイヤーの想像力をかき立てるような文章が書かれていた。これもTRPGで人間のマスターがプレイヤーに状況を説明するのと同じ雰囲気である。

 1979~1982年頃までは爆発的にヒットした。

Dunjonquest: Temple of Apshai:
http://crpgaddict.blogspot.jp/2013/02/game-88-dunjonquest-temple-of-apshai.html

 
 
Rogue (1980)

 ダンジョン探索ゲーム。マップもキャラクターも英文字や記号などで表現される。ゲームの目的はランダム生成されるマップを階下へと降りていき、魔除けを持ち帰るというもの。UNIXの標準ソフトとして組み込まれていたため大ヒット作品となり、のちにローグを発展させた「ローグライク」という無数のゲームを生むことになった。

 ただし開発者たちは、D&Dの影響などは受けておらず、黎明期のテキストAVG「コロッサル・ケイブ・アドベンチャー」を元に「グラフィカルかつ何度でも遊べるAVG」を作るのが目的だった。

Rogue
http://www.mobygames.com/game/rogue

 
 
 記事はここで終わり。1981年以後はあまりにも数が増えすぎてフォローしきれないからとのこと。


コメント

 整理してみると、ウィザードリィウルティマも「最初のCRPG」どころか数多くの先行ゲームが作られた後にようやく登場した、という事がよく解ります。1970年代に既に多人数プレイオンラインRPGが存在していたとか、「今まで教えられていたゲームの歴史はなんだったんだ!?」的な気分になりますよねぇ。


ウルティマ コンプリート
ウィザードリィのすべて―ファミコン版