【ゲームブック】感想:「ALL ABOUT GAMEBOOK Vol.7 講談社編」(2018年)

地底のブラックホール (アドベンチャーブックス (8))
 

ALL ABOUT GAMEBOOK VOL.7 講談社編 オールアバウトゲームブック7 - ゲームブックのオンラインショップ トレーダーズ・ギルド
http://tradersguild.cart.fc2.com/ca45/2001/p-r45-s/


■ 概要
講談社ゲームブック全30作品+αを収録して解説した、当店オリジナルのデータベース書籍。
A5判 レーザープリンター出力本 カラー印刷 全112ページ。


■ 内容
エンディングが無い!? ……疑惑の異端児「UFO54-40地球攻撃す」から、タイトルだけで腹一杯な「人間爆弾デミトリウス」を筆頭に、奇抜な作品はあったものの、表紙が地味すぎで低年齢層からはそっぽを向かれ、かといって大人も読まなかった不遇のアドベンチャーブックスシリーズから、版権物を使って人気取りを狙った物の、題材がウルトラマンデビルマンと年代的にズレており、結局失敗した講談社X文庫ゲームブックなど、人知れず夜に咲く月見草のような講談社ゲームブックの一覧を紹介。

 

オールアバウトゲームブックとは?

 「ALL ABOUT GAMEBOOK」(オールアバウトゲームブック)シリーズは、中古のゲーム書籍やTRPGを扱うオンラインショップ「トレーダーズ・ギルド」のオリジナル商品の書籍で、1980年代に数年だけ大ブームとなったゲームブックのカタログ本です。

 内容は、まず対象の出版社がブーム当時どういう会社だったかという概要から入り、その会社のゲームブックの傾向を分析して、どのような方針で当時のブームに対応したかを記述。さらにブランドが有れば、そのブランド毎にも傾向を説明、そして最終的にブーム時やブームが去った後にどのように対応したか、そして現在会社がどうなったか、という事を説明しています。

 ここまででも十分な読みごたえが有りますが、その後が本番で、個々の作品毎に、タイトル・作者・発売日などの基本情報から入り、さらに内容紹介・評価・備考などこれでもかと詰め込んでいます。原作付きの作品の場合には、その原作についても十分に触れられているので、もう「至り尽くせり」としか言いようが有りません。
 

本巻の内容

 初版:2018年1月15日。講談社の発売した37作品のカタログ。


 講談社は、まずアメリカの児童向けゲームブック「Choose Your Own Adventure」シリーズを翻訳した「アドベンチャーブックス」ブランド全20冊で参入したものの、内容が小学校中学年向け程度にも関わらず、やたらシリアスな表紙にしてしまったため、本来売り込むべき層に全く届かず失敗。

 その後漫画版ゲームブック「KCシミュレーション」ブランドや、ウルトラマンデビルマンゲゲゲの鬼太郎などをゲームブック化した「X文庫」でリスタートを図るものの効果は無く、1987年に撤退した。


感想

 「Choose Your Own Adventure」シリーズは、学研が翻訳した「きみならどうする」シリーズで有名ですが、その後講談社が別ブランド「アドベンチャーブックス」で引き続き翻訳したのは割と知られていないと思います。ウィキペディアの「きみならどうする」の欄にも載ってないし。

 でも、私は2014年にその事を独自発見しておりました(ト書き:自慢げに)
 ↓
perry-r.hatenablog.com

ゲームブック講談社「アドベンチャーブックス」シリーズ=「きみならどうする?」シリーズだった
http://perry-r.hatenablog.com/entry/20140328/p1

 
 しかしこのシリーズは、初期作品はそれなりに古本が手ごろな価格で見つかりますが、シリーズの後ろに行くにしたがって中古価格が異常な値付けになっていき、11巻~20巻あたりになると出物は皆無、ネットでレビューしているサイトもほとんど無し、となります。

 そのため、このシリーズは20巻辺りになると、もはやタイトルしか解らない幻の書籍化しているため、それだけに今回このカタログで内容が把握できたのは嬉しいですね。

 「アドベンチャーブックス」は、トレーダーズ・ギルドの中の人が何回も指摘していますが、内容が小学生向けなのに、表紙が写真などを使用した大人向けと見まがう物で、これでは本来のターゲットに届かなかったのも当たり前と言えましょう。私も3巻「犯人はだれだ」を購入したものの、表紙が油絵っぽい渋い物なのに、内容は探偵気取りの子供がうろうろするだけの幼稚極まりない話だったため、落差に愕然としたことを覚えています。

 その点、学研の「きみならどうする」シリーズは、ジュニアチャンピオンコースの本としてきちんと子供向けに作っていて、売り込む相手が良く解っていただけに、講談社が下手を打ったのは丸わかりですね。

 その後の「KCシミュレーション」だの「X文庫」だのも興味の湧かないタイトルばかりで、大手のくせにゲームブックについてはまともにリサーチしていなかったことが伺えるなど、色々面白い内容でした。しかしまあ本書は「アドベンチャーブックス」の内容紹介こそがメインでしょうね。
 
 

他の巻の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「オールアバウトゲームブック」シリーズまとめページ

perry-r.hatenablog.com
 
 
天才コンピュータAI32 (アドベンチャーブックス (9))