【科学】感想:NHK番組「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」第8回「“進化”から見た文明格差」

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/
放送 NHK Eテレ。全12回。金曜22:00~22:30。

【※以下ネタバレ】
 

世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』で知られる進化生物学者ジャレド・ダイアモンド博士が、アメリカ・ロサンゼルスで、若者向けに行った特別授業を12回にわたって放送。ヒトと動物の違いと共通点に注目し、言語やアートの本質、夫婦の不思議、そして、なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのかを考える事によって、環境破壊や、戦争と大量虐殺など人間が抱えている問題について、解き明かしていく。

 

第8回 “進化”から見た文明格差 (2018年2月23日(金)放送)

 

内容

2月23日金曜
NHKEテレ1 午後10時00分~ 午後10時30分
ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” 第8回「“進化”から見た文明格差」


ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送。


第8回のテーマは「格差」。ヒトは、狩猟採集の暮らしから少しずつ農業に移行してきた。しかし、そのタイミングとスピードには、地域によって大きな違いがあった。どのような条件が、その差を生んだのか。また、それは、後の人々の暮らしに、どのような影響を与えたのか。ダイアモンド博士が、ヒトの文明の謎に切り込んでいく。


【出演】進化生物学者…ジャレド・ダイアモンド,【声】糸博

 
●世界の貧富の差が有るのはなぜか

 世界には豊かな国と貧しい国が有るが、その差はどこから来たのか? 人類はアフリカで生まれた。進化で先行していたはずのアフリカが、何故現在一番進んだ地域ではないのか?


●農業のはじまりの不均衡

 博士によれば、それは農業の始まりの不均衡にあったという。世界で最初に農業が始まったのは以下の9地域である。

・中近東(通称 肥沃な三日月地帯)
・アフリカ サヘル地域
・西アフリカ
エチオピア
・中国
ニューギニア高知
アメリカ合衆国東部
・メキシコ
アンデス・アマゾン地方


 前回の授業で学んだとおり、農業は野生の動物や植物を家畜化・農産物化することで始まった。しかし家畜化できる動物、農産物化できる植物はごく少数で、前述の地域にはそれらの動物・植物が最初から存在していたため、農業がスタートできた。


●家畜の条件

 動物は何でも家畜化できるわけではなく条件が有る。大前提として一定以上の大きさが必要。ネズミやコウモリを乗り回したり乳を搾ったりするのは無理。博士が五大家畜と認定したのは牛・馬・豚・ヒツジ・ヤギ。

 家畜にするための条件は
・飼育が簡単 例えばオオアリクイは一日50キログラムのアリを食べる。人が用意するのは無理
・成長が早い 一年ほどで大人になって肉にできるのが望ましい
・温和な性格 シマウマは人にかみついて死ぬまで話さない狂暴さを持つので家畜にむいてない
・リーダーに従う 人がコントロールしやすい


●肥沃な三日月地帯

 チグリス・ユーフラテス文明が起こったあたりを「肥沃な三日月地帯」と呼び、世界で最初に農業がスタートした。それは野生の牛・豚・ヤギ・ヒツジ・馬がいたため。

 また農作物の穀類(小麦三種類・大麦・米・トウモロコシ)のうち、野生の小麦と大麦が自生していた。そのなかで小麦・大麦は米・トウモロコシよりたんぱく質が多く優れている。またトウモロコシは品種改良に何千年もかかりハンデがあったが、野生の小麦・大麦はもうそのまま食べることができた。そのため、この地域で世界で最初に農業が始まった。


●農業はどう広まったか

 農業は東西に広がっていった。緯度が同じなら、日照時間が同じでノウハウが共用できたから。中近東と中国は同じ緯度に有ったので、相互交流してユーラシア大陸で農業は広まっていった。

 ところが南北アメリカではそうはいかなかった。東西ではなく南北に長いのでノウハウが共用できない。そのため、アンデスとメキシコで文化やノウハウが伝わらなかった。アフリカ大陸も同様で、肥沃な三日月地帯で生まれた農業のノウハウが大陸南端まで伝わるのに9000年かかった。


●ヨーロッパ人による世界征服

 中世、スペイン人がごく少数で中南米のインカやアステカ帝国を征服できたのはなぜか? 一つは馬。アメリカには馬がいなかった。馬は当時の立派な兵器だった。

 もう一つが病気。ヨーロッパ人は家畜から移されたはしかや天然痘に感染したが、その抗体を手に入れた。そしてヨーロッパ人はその病気を新大陸に持ち込んだ。新大陸の人々はこれらの病気に全く免疫が無かったのである。


●ヨーロッパの優位

 ヨーロッパは農業に向いた肥沃な土壌があった。また気候が温かくなると雨が増える。これらの条件で農業の生産性が高かった。


●何故中国は発展しなかったのか

 中国は農業のスタートが早かったし、野生の水牛・豚がいて、稲・雑穀が有った。にもかかわらず、何故中国が世界を支配せず、ヨーロッパが世界を席巻したのか? 中国が自国だけで満足していたから? 今のところ謎である。


●ヨーロッパが優れていたわけではない

 ヨーロッパ人が世界を席巻したのは、別に人種的に優れていたわけではなく、単に場所が良かっただけ。

感想

 今回は、多分有名なヒット本「銃・病原菌・鉄」の内容のダイジェスト版だと思われます。「何故ヨーロッパ人が中南米に攻め込み、その逆ではなかったのか」とか扱っていますから。

 「銃~」は絶賛されたともインチキ本扱いされたとも言われていて、どうも評価が良く解らないのですが、どっちなんですかね?
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)