感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第136話(シーズン6 第9話)「敗戦国アメリカ」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第136話 敗戦国アメリカ Invasion (シーズン6 第9話)

 

あらすじ

地震で遠距離レーダーが打撃を受け、核ミサイル攻撃に対して無防備になったアメリカ。国防省顧問が盗んだ極秘データが敵の手に渡れば国家的な危機に陥ってしまう。チームは巧妙な作戦で顧問を操り、アメリカの窮地を救う。

※DVD版のタイトルは「時間差で口を割れ」。
 
 
【今回の指令】
 現在アメリカは、先日の地震によって国防のための遠距離レーダー網が大損害を受けており、敵の核ミサイル攻撃に対して無防備同然の状態である。そして数時間前、国防相付き顧問のウイットモア・チャニング(Whitmore Channing)は、空軍高官を殺害してレーダー網の機能停止についての情報を盗み某所に隠した。その情報は明日五時敵国スパイが入手する予定だが、隠し場所は不明である。IMFはこの情報が敵の手に渡ることを阻止しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:兵士役多数


【作戦の舞台】
 アメリカ国内・ロサンゼルス


【作戦】
 冒頭。チャニングがフランスにいるスパイ「ノバック」に重要情報を手に入れたと連絡し、ノバックがすぐ回収に行くと答える。しかしノバックは部下にチャニングはもう用済みだという。またチャニングはアメリカ側のスパイに尾行されていた。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 IMFはチャニングの部屋の電気器具に細工して感電するようにしむけ、しびれたところにさらに麻酔を打ちこんで失神させる。そのあと、チャニングの腕時計のカレンダーの日付を進めて二日後の木曜日に変更し、また部屋のテレビとラジオに細工する。

 チャニングはすぐに目覚めるが、時計のカレンダーを見て感電して二日間失神していたと思い込み、さらにテレビやラジオをつけるとIMFが準備していた「アメリカがヨーロッパ人民共和国との戦争に敗れて降伏した」という偽ニュースが流れる。直後、IMFはチャニングの部屋を訪問し、チャニングを占領軍の司令部という設定の建物に連行する。

 一方、ノバックの部下はチャニングを射殺しようとしていたが、チャニングが謎の男たちに連行されるのを見て尾行する。

 「司令部」で、フェルプスは占領軍の大佐のふりをしており、アメリカの軍関係者を次々と裁判にかけ、すぐに死刑宣告し部下に銃殺させていく(という芝居をする)。そしてチャニングにも死刑を宣告するが、チャニングは自分は共和国の協力者で、自分のもたらした情報があったから共和国は戦争に勝てたのだと主張する。フェルプスは情報の隠し場所を言う様に命じるが、チャニングは具体的な場所までは明かせないと拒む。

 フェルプスはチャニングを小部屋に監禁すると、メンバーや協力者たちを隠れさせる。チャニングは様子がおかしいと感じて部屋を脱出し、誰もいないので、自分が騙されていたと悟る。そして電話で航空会社に連絡し、午後五時にやってくる「テオ・シックス」あてにメッセージを伝えようとするが、その最中に暗殺者に撃たれ、IMFは暗殺者を殺す。

 IMFは空港で「テオ・シックス」を呼び出して、やって来た相手二人の顔を確認した後、間違いだったといって追い返す。そして二人組の後を尾行し、空き倉庫の隠し場所から情報フィルムを持って出てきたところを捕まえ、フィルムを焼き捨てる。


監督: レスリー・H・マーティンソン
脚本: ジェームズ・ヘンダーソン&サム・ローカ


感想

 評価は○。

 今回の話は、IMFが「アメリカが敵国との戦争に負けて占領されてしまった」というとんでもないシチュエーションをでっちあげるという、スパイ大作戦らしい大げさなエピソードだった。ということで、途中までは面白かったのだが、クライマックスの展開がイマイチで、今一つ痛快感に欠ける惜しい回だった。

 スパイ大作戦では、IMFメンバーが芝居をしかける相手を失神させたあと、周囲から孤立した環境に放り込み、真面目な顔をして芝居をして突拍子もないシチュエーションを信じ込ませて、最終的に本人しか知らない秘密を吐かせる、という作戦が良く実施されてきた。

 過去には「失神している間に核戦争が勃発していて地下シェルターに押し込められていた」とか「いつの間にか死刑を宣告されていて、もう処刑の一時間前になっていた」といった設定で相手を追い込むエピソードが存在したが、今回は「アメリカが東側国家との戦争に敗北し、既に敵の兵士が都市を占領していた」という、今までに負けず劣らずの突拍子もない状況設定が展開され、見ていて思わずニヤリとしてしまった。

 チャニングを騙すため、自宅のテレビやラジオを細工をして、チャニングがテレビやラジオをつけると、アメリカの敗戦を知らせるニュースが流れてくるシーンは捧腹絶倒物の面白さだったし、またチャニングを外が見えない車に押し込んだ後、戦車のキャタピラ音や占領軍の告知をスピーカーで車内に向けて放送し、チャニングを徹底的にだましていく展開は見ているだけでワクワクさせられた。

 また裁判所の控室でケイシーがチャニングに縋り付いて「赤ん坊がいるから死にたくない」と哀れっぽく訴え、また裁判で有罪にされると泣きながら連れていかれるシーンなど、真相が解っている視聴者視点で見ると、もう面白くて仕方なかった。

 しかし、この芝居を最後まで続ければ傑作になったかもしれないのに、途中でフェルプスはチャニングがまだ口を割らないと見るや、わざと芝居をしていることを相手に気が付かせて、チャニング自身がどこかに連絡するように持って行ってしまう。これはこれで作戦として成立してはいるのだが、せっかく面白いシチュエーションを構築したのに、中途半端なところで止めてしまったため、見ていて結構ガッカリさせられた。

 最後はIMFが上手く立ち回って、敵スパイを逮捕し、漏洩した機密情報も取り戻して処分に成功するのだが、「最後まで芝居をやり通し、相手が騙されたことに気が付かないままIMFはさっさと退散する」という展開の方が好みなので、今回のシナリオにはいささか不満が残るものとなってしまった。もう少し全盛期の頃の痛快さというものを楽しませてほしかったと思わずにはいられない。

 今回はIMFは久しぶりに東側国家「ヨーロッパ人民共和国」(European People's Republic)を相手にした作戦を行う。昔はIMFは毎回のように東側国家を相手に機密情報を盗んできたり、重要人物を亡命させたり、ニセ情報をつかませたり、と活躍していたが、第6シーズンに入ってからはシンジケートばかり相手にしていたので、今回のエピソードは妙に懐かしい気持ちにさせられてしまった。

 ところで、今回チャニングが部屋でヤカンに湯を沸かすとき、どう見ても電磁誘導調理器(IHクッキングヒーター)を使っているようにしか見えない。このエピソードの放送は1971年11月で、IH機器のようなハイテク製品がそんな昔から存在したのかと驚いたのだが、アメリカでIHが発売されたのも1971年とのことなので、どうやらチャニングは当時の最新調理器具を使っていた、ということらしい。さすが政府顧問である。

 今回のサブタイトルの原題「Invasion」とは「侵略」のこと。まあストレートなタイトルではある。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスがレストラン(?)で美女と乾杯していると、店員がフェルプスに電話が入っていると声をかけてくる。フェルプスが電話ボックスに入ると、ボックス内には大きめの封筒が置いてあり、フェルプスは封筒からオープンリール式テープレコーダーと写真を取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。

参考:指令内容

 こんばんは、フェルプス君。先日の地震によって遠距離レーダー網が深刻な打撃を被り、わが国は現在核ミサイル攻撃に対して無防備同然の危険にさらされている。一方、数時間前、国防相付き顧問ウイットモア・チャニングは、空軍の高官を殺害、地震の被害によって目下機能を停止しているレーダー網に関する極秘データーを盗み、それを明日午後5時、敵スパイの手に渡るよう某所に隠したが、その場所は不明である。

 そこで君の使命だが、この極秘データーが敵に渡ることを阻止することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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