感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第142話(シーズン6 第15話)「空飛ぶ棺桶」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第142話 空飛ぶ棺桶 The Bride (シーズン6 第15話)

 

あらすじ

違法な金の運び屋として暗躍するコービン。フェルプス(ピーター・グレイブス)が航空会社の職員になりすまし、仮死状態となったケイシー(リンダ・デイ・ジョージ)との協力でコービンの活動にピリオドを打つ。

※DVD版のタイトルは「殺し屋を消せ!」。
 
 
【今回の指令】
 元シンジケートの殺し屋ジョー・コービン(Joe Corvin)は、今ではドルの違法な国外持ち出しを専門としており、シンジケートの膨大な金をスイス銀行に送っている。IMFはコービンの活動を永久に封じなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:ボブ、空港の作業員数名


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。コービンはドルの運び屋に対して、預かった金をくすねていると指摘し、部下に運び屋を殺害させる。コービンの友人でシンジケートの幹部のフランクは、コービンに、来週組織の金800万ドルをスイスに送金する必要があるのに大丈夫かと心配する。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 独身のコービンはヨーロッパの修道院にいる美女を妻としてアメリカに呼び寄せていたが、ケイシーがその相手にすり替わってやってくる。コービンは若くて美人と結婚出来て喜ぶが、ケイシーはすぐに自分が麻薬中毒で、航空会社の不良社員フェルプス)から麻薬を買っている、という芝居をする。さらに直後ケイシーは仮死状態になる薬を服用し、麻薬中毒で死んだふりをする。コービンは自分の息のかかった葬儀屋に連絡し、ケイシーを密かに火葬にするように指示する。

 またコービンは、フェルプスの次のフライト先がスイスだと知り、4万ドルの報酬でスイスに800万ドルを運ぶ仕事を持ち掛け、フェルプスもそれを受ける。しかしすぐにコービンに、手荷物の検査が厳しくなったため、とても金を持ち込めないと泣き言をいう。直後IMFはコービンの目の前で、棺をノーチェックで飛行機に積み込むシーンを見せ、コービンはケイシーの遺体を利用して金を輸送する手を思いつく。

 バーニー・ウィリー・ボブは葬儀屋に行って、仮死状態のケイシーを救出してからそっくりの人形を代わりに置く。さらにボブは葬儀屋の社員に変装し、コービンたちに人形をケイシーだと思い込ませる。コービンは「遺体」のまくらに800万ドルを詰め込んでから棺を封印させる。バーニーは棺を空港に運ぶ車に潜んでおり、棺を開けて800万ドルを盗んでからこっそり逃走する。

 空港につくと、コービンやフランクの目の前で棺が飛行機に運び込まれかけるが、棺が地面に落ちて中身が飛び出し、フランクは「死体」が人形で、さらに800万ドルが無いことに気が付く。フランクはコービンを問い詰め、コービンはこれは罠だと弁解するが、フェルプスはフランクに「コービンに頼まれてマイアミ行きチケット二枚を用意した」と嘘をつき、フランクはコービンが組織を裏切って金をくすねたと信じ込む。

 さらにフランクはコービンの家に乗りこむが、そこには死んだはずのケイシーがぴんぴんしており、コービンは唖然となるが、ケイシーはコービンに言われて隠れていただけだと言い訳する。フランクはコービンを黒と断定し、金の在処を白状させようと締め上げる。最後、IMFメンバーは車に乗って立ち去るシーンで〆。


監督: ジョン・L・モキシー
脚本: ジャクソン・ギリス


感想

 評価は○。

 今回の話は、話の運び方が巧みなうえに、伏線の張り方も絶妙で、黄金期だった第2・3シリーズの頃に匹敵するクオリティであり、懐かしのローランやシナモンが代わりに登場していても違和感のない充実のシナリオでもう大満足だった。


 今回のIMFの作戦は、いつも以上にIMFチームの狙いがなかなか見えてこず視聴者としてやきもきさせられた。IMFメンバーの作戦開始前の打ち合わせで、「妻」役のケイシーが途中で死亡したふりをして人形にすり替わる、という計画は明示されるものの、それがどうターゲットのコービンを叩き潰すことにつながるのか、皆目見当がつかない。

 それでも「ケイシーが麻薬中毒フェルプスが金になるなることは何でも手を出す不良社員、という設定を披露する」→「ケイシーが死んだふりをして退場」→「コービンが航空会社の社員のフェルプスを利用することを思いつく」という流れは絶妙に上手く、展開の妙に引き込まれるようだった。

 さらにフェルプスがコービンを空港に呼び出して、手荷物警備が厳重になったと嘆いておいてから、ウイリーの指示で棺をノーチェックで飛行機に乗せるところを見せ、それを見てコービンが「ケイシーの遺体の入った棺をドルの輸送に使う」と思いつかせる、というあたりで、全てのパーツがぴたりと組み合わさって「そういう事だったのか」と膝を打ちたくなった。ここに至るまでの展開が、実によく計算されていて、視聴していて実に楽しくなってしまった。

 また細かい伏線の貼り方も上手く、まず序盤に「ウィリーがどこかの配電盤らしきものに細工をするシーン」を見せるが、そのあとその配電盤は当分番組に出てこない。続いて中盤、バーニーが葬儀屋の車のラジエーターにとがった金属棒を突き刺して故障させると、葬儀屋は代替の霊柩車を用意するために、レンタカー屋に電話する。すると、序盤に仕掛けた装置が作動し、葬儀屋はレンタカー屋に電話したつもりでIMFのアジトに繋がってしまい、IMFはレンタカー業者のふりをして受け答えをして、車を届ける。このように、視聴者が忘れたころにウィリーの仕掛けた装置がカチカチ作動して、電話がIMFに繋がる場面は、IMFがここまで先を見越して作業していたのか、と痛快だった。

 さらにこの伏線はまだ終わりではなく、IMFが届けた車には秘密の隠れ場所が有り、そこに潜んでいたバーニーが積み込まれた棺から800万ドルを盗み取って、さらに車の秘密の出口から出ていく、というオチに繋がっている。最初の回路の伏線が、金を頂くところまで一直線に結びついており、シナリオの出来の良さには感服してしまった。

 また最終盤の展開もやたら面白く、棺を飛行機に積み込みかける場面で「このまま飛行機に乗せたら、IMFの計画はどうオチが付くのか?」と心配していたら、IMFがわざと棺を地面に転落させて棺の中身をぶちまけさせ、シンジケートの幹部のフランクに「死体」が実は人形であることや800万ドルが無い事を見せつけるあたりで、ああこういう手を使うのかとニヤリとしてしまった。

 さらにフェルプスはありもしない「コービンからマイアミ行きのチケットの手配を頼まれた」話をして、フランクにコービンへの疑惑を倍加させるシーンも愉快だったが、さらにコービンの屋敷で死んだはずのケイシーが何食わぬ顔で現れてコービンを仰天させるシーンなど思わず笑いそうになってしまった。

 今回のシナリオは粗という物が無く、全体によく練り込まれており、見ていてとにかく堪能させられた。久々に『これこそスパイ大作戦!』という回だった。


 今回のサブタイトルの原題「The Bride」とは「花嫁」のこと。まあ確かに花嫁は出てきたので間違ってはいないが、もう少しピンとくるタイトルでも良かった気もする。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが屋内プールの横に有る小部屋に入り、鍵のかかったロッカーを開けて大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。その男ジョー・コービンは、以前シンジケートの殺し屋であったが、今ではドルの国外不法持ち出しを専門にしている。コービンを通して暗黒街が吸い上げた莫大なドルが、スイスの銀行に流出し、それが外国資本という形で帰ってきて、わが国の産業界をおびやかしている現状である。

 そこで君の使命だが、このコービンの暗躍を永久に封じることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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