【科学】感想:NHK番組「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」第12回(最終回)「“格差”をのりこえて」


若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/
放送 NHK Eテレ。全12回。金曜22:00~22:30。

【※以下ネタバレ】
 

世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』で知られる進化生物学者ジャレド・ダイアモンド博士が、アメリカ・ロサンゼルスで、若者向けに行った特別授業を12回にわたって放送。ヒトと動物の違いと共通点に注目し、言語やアートの本質、夫婦の不思議、そして、なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのかを考える事によって、環境破壊や、戦争と大量虐殺など人間が抱えている問題について、解き明かしていく。

 

第12回(最終回) “格差”をのりこえて (2018年3月23日(金)放送)

 

内容

3月23日金曜
NHKEテレ1 午後10時00分~ 午後10時30分
ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”[終] 第12回「“格差”をのりこえて」


ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送。


12回シリーズの最終回は、拡大する文明格差について。今、世界の富は一部の富裕層に集中し、貧困層との隔たりが大きな社会問題となっている。また、国家間の経済格差は、国際社会をきわめて不安定にしている。ダイアモンド博士は、ヒトの社会が抱える大きな矛盾を示しつつ、未来を担う生徒たちにメッセージを託す。


【出演】進化生物学者…ジャレド・ダイアモンド,【声】糸博

 
●国内の不平等、国家間の格差

 格差問題。同じ国の中での貧富の差、富める国と貧しい国との格差。太古の部族社会では格差は無かった。食料が保存できないため、全員が狩猟採集に出ねばならず、身分の上下が生まれようがなかった。現在は全く違う。


●国内の不平等

 先進国で不平等が顕著なのはアメリカ、イギリス、ポルトガルで、最も不平等なのはアメリカである。上位一パーセントの富裕層が25パーセントの収入を得ている。さらにその格差は拡大している。貧しいと安い食事しかとれないため不健康になり、また低い教育しか受けられない。アメリカは乳児死亡率と肥満率が先進国でトップ。不平等は暴動のリスクを伴う。



●国家間の不均衡

 国家間の不均衡は(過去の授業で習った通り)農業の始まりが早かったか遅くなったかに原因がある。その他の要因としては


内陸国である … 内陸にあると海路で物資を輸送できないため、コストが跳ね上がり貧しくなる。海に面した国より40パーセント貧しくなる。


・天然資源を持っている … 逆説的だが資源のある国ほど貧しい。一つは資源が有っても購入する国の方が発言権が強いため。また資源の産出場所が偏っている場合、内戦を引き起こしかねない。また資源が永遠に産出すると考え、他の産業を発展させない。こういう国の政権は腐敗しやすい。


・熱帯地域に有る … 熱帯地域は土地がやせているし、害虫の被害が大きいため、農業の生産性が低い。


・植民地化された … インド、ベルー、ボリビアなど。過去豊かだった国でも、植民地化された際、労働力や資源を搾取するための腐敗した組織が作られ、独立してもそういう組織がそのまま残ってしまう。



●グローバル時代の課題

 かつては豊かな国にとって貧しい国の事は他人事だった。しかしグローバル時代になり、そう言っていられなくなった。コミュニケーション技術が発展し、互いの国の情報が伝わりやすくなったことで問題が日の下にさらされるようになった。そして以下の問題が発生した。


テロリズム … 国家間の移動は50年前と比較して簡単かつ安価になった。つまりテロリストの移動が楽になった。


・移民の増加/難民問題 … ヨーロッパ諸国では地中海を超えて来る難民たちが問題となっている。


・新興感染症 … マラリヤデング熱新興国からくる難民たちが病気も持ってくる。



●格差・不均衡への対策

・資金援助 … 貧しい国に援助する。例えば医療援助。


・投票 … 世界を変えるためにはまず投票してみる。


・生活スタイルを変える … アメリカの人口は世界の5パーセントなのに、化石燃料は25パーセントも使っている。


 二匹のチンパンジーの片方だけにエサを与え、もう一方には何も与えないと、餌をもらった方がそれを拒否する。チンパンジーにすら公平・公正の感覚が有るのに、人間にはその感覚が失われている。



●未来への希望

 しかし未来について希望はある。

・人間が生み出した問題は人間が解決できる。

・国際協定 海洋汚染対策のロンドン条約が合意された。また国際的な取り組みで天然痘が撲滅された実績もある。



●この授業の総括

 人はモラルを持って生きている。人が戦争などを行うのは、動物の頃から受け継いだ本能によるもの。しかし人は本能のままに人を殺したり略奪するのではなく、モラルを持って生きることを選んだ。


感想

 3か月にわたる授業も今回でおしまい。「人の進化」がテーマのため、生物学的な話もあれば、歴史の話もあり、あるいは現代の社会問題もあり、と、種々雑多な授業でしたが、バラエティに富んでいて面白かったなぁと思います。

 かのカール・セーガンのコスモスほどではなかったにせよ、著名人が一般人向けに授業してくれる番組という事で結構ためになりましたですよ。
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)