【科学】感想:科学番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第22回(最終回)『人体蘇生』(2018年3月29日(木)放送)

フランケンシュタイン (新潮文庫)

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 22:00~23:00 放送)。

【※以下ネタバレ】
 
※他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ

 

第22回(最終回) 『Case22 人体蘇生』 (2018年3月29日(木)放送)

 

内容

3月29日木曜
NHKBSプレミアム 午後10時00分~ 午後11時00分
フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿[終]「人体蘇生」


科学史に埋もれた闇の事件に光を当てる知的エンターテインメント。最終回は、有史以来人類が追い求めてきた夢、「死者の復活」に迫る!「死」は科学の力で操作できるのか?


科学史に埋もれた闇の事件簿。最終回は人類が追い求めてきた夢、「死者の復活」に迫る!つぎはぎの死体に命を吹き込み恐ろしい怪物を作り出してしまったゴシック小説の名作「フランケンシュタイン」。この小説が映画化されて大ヒットした1930年代、人体蘇生を実現しようとした男がいた。男は動物を自らの手で殺し生き返らせる実験を成功させ一躍時代のちょうじとなるが…。「死」を科学の力で操作しようとした天才と、その闇!


【ナビゲーター/ナレーション】吉川晃司,【出演】総合研究大学院大学名誉教授…池内了横浜市立大学教授…谷口英樹,【司会】武内陶子

 
 今回は死体蘇生を試みた科学者ロバート・コーニッシュについて。


●神童

 ロバート・コーニッシュ(1903~1963)は、幼いころから神童の誉れ高く、14歳でカリフォルニア大学バークレー校に入学、18歳で卒業、22歳で博士号を取得した、という天才だった。

 1930年代前半頃、死んだものを蘇生させるというのは医学界の最先端の研究テーマだった。コーニッシュは、蘇生のために「シーソー式蘇生機」というものを考案した。シーソー型の台に体を括り付けてゆらし、頭と足が交互に上下することで、強制的に血液循環させるという物である。さらに内臓の重さで横隔膜が押され、人工呼吸も一緒に行えるという一石二鳥の機械だった。

 コーニッシュは、事故などで死んだ人間を対象に蘇生機を試し、脈が戻ってきたのを確認したが、それはすぐに消えてしまった。



●犬が生き返る

 これに懲りたコーニッシュはまず動物実験で問題を洗いなおすことにして、1933年、犬を殺してから蘇生機で蘇生させる実験を始めた。そして死体に新鮮な酸素を含んだ血液を輸血し、また血液の凝固を防ぐヘパリンや、心臓に血液を集めるアドレナリンを注射する、という手法を確立し、実験を重ねた。

 しかしコーニッシュはこれらの成果を論文に書いて学会に発表したりはせず、新聞記者を呼んで逐一記事にさせて世間にいきなり公表していた。世間は、実験のため犬を次々と殺すコーニッシュを残酷だと非難し、大学はもめ事をを恐れてコーニッシュを首にしてしまった。それでもコーニッシュは自宅で研究を続け、ついに5匹目の犬は完全に蘇生させることに成功した。



●拒否された人体実験

 犬での実験で自信を得たコーニッシュは、今度は人間で蘇生を試したいと考え、死刑囚を被験者にしようと考えついて、知事に協力を依頼した。特にガスで死刑になった囚人は、他の方法で処刑された死体より損傷が少なく、蘇生には最適だと考えたのである。

 しかし処刑した死刑囚が生き返ったら、法律的にはどうなってしまうのか? もう一度処刑するべきなのか、それとももう釈放するべきなのか。現行の法律にはこの状況について答えが無く、問題を恐れた知事たちはコーニッシュの申し出を却下した。

 その後、コーニッシュの元には、被験者になりたいという手紙が殺到するが、それは「一度殺した後生き返らせる代償として、大金を払え」というものばかりだった。

 結局コーニッシュは人間に対する蘇生実験を行うことなく、1963年に59歳で亡くなった。

 現代の救急救命医療では、かつてコーニッシュが生み出した手法が当たり前の物となっている。ヘパリンの使用、人工呼吸と心臓マッサージ、など。しかしこうした技術に関してコーニッシュの名前が出ることは無い。コーニッシュは論文を書かなかったからである。


●死の概念が変わる時

 最新の研究で、人を脳死から回復させる技術が開発されている。当人の幹細胞を培養して死んだ脳に戻すことで、神経細胞を再生させ、脳をよみがえらせることを目指している。しかし現代の医学の基準では「脳死=死」であり、脳死の人間から臓器を摘出することが行われている。脳死が回復できるとすれば、「死」についての概念が根底から覆されてしまう。

 このように科学の発展は、今まで無かった問題を生み出していく。しかし科学者は暴走することなく、問題を明らかにして、世間に問うような姿勢が必要。例え専門知識が無い一般人であっても、大衆が大勢が集まって決めた方向性は意外と正しかったりするものだから。


感想

 今回の対象者は、テーマはマッドではありますが、やっていること自体はそんなに異常でもないような……、別に死体をつなぎ合わせたりしたわけでも無し。


 そして、2015年から放送されて来たこの面白番組も、今回で最終回となってしまいました(涙) さすがに毎月毎月テーマを探して一本番組を作るのはきつかったのかも。当初は4か月に一回放送の特番扱いだったので、その形式に戻って半年に一回ペースでも良いので、新作を作ってほしいです。