感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第155話(シーズン7 第6話)「麻薬合成計画」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン7」あらすじ・感想まとめ

 

第155話 麻薬合成計画 Cocaine (シーズン7 第6話)

 

あらすじ

未だかつてない大量のコカインがアメリカ国内に密輸されるという情報を掴んだIMF。卸元業者間の取引に入り込んで現物を押さえるため、フェルプス(ピーター・グレイブス)は裏で麻薬を合成し販売しようとしている会員制クラブの経営者になりすまし近づく。

※DVD版のタイトルは「500万ドル麻薬合成計画」。
 
 
【今回の指令】
 アメリカきってのコカインのブローカーのカール・リード(Carl Reid)は、卸元のフェルナンド・ラローカ(Fernando Laroca)からコカインを仕入れているが、彼らがどのようにコカインを受け渡しているのか等は一切不明である。ラローカは三日以内に、かつてない大量のコカインをアメリカのリード宛てに密輸するという情報が入った。IMFはそのコカインの現物を押さえなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ウィリー、ミミ
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。某外国。ラローカとリードが面会し、ラローカは500Kgのコカイン(総額1000万ドル分)を美術品に隠し、三日以内にリードに渡すと約束する。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 フェルプスは、化粧品会社や会員制クラブを経営する大富豪になり切ることにする。IMFは新聞に刑事(バーニー)が大量のコカインを押収したというニセ記事を掲載し、リードたちは自分たちの知らない大量のコカインが流通していることに驚く。

 ミミはクラブの従業員として、リードの腹心ジョーコンラッドに接触し、自分がコカインを持っていると教えるが、すぐに刑事役のバーニーに連れていかれる。コンラッドたちはフェルプスの会社を調べるが、IMFが用意した偽情報により、会社が一時期傾いていたのに最近立ち直ったと思い込まされる。コンラッドたちは、フェルプスが麻薬取引に参入して会社を立て直したと信じ込む。

 コンラッドはミミを脅してフェルプスの元に案内させ、麻薬取引に自分たちも加わらせろと脅す。その事でフェルプスとミミは喧嘩を始め、フェルプスは誤ってミミを殺してしまった、という芝居をする。コンラッドフェルプスに、殺人を警察にばらされたくなかったら言うことを聞けと脅迫する。

 フェルプスコンラッドに、化学者(ウィリー)がコカインを合成する方法を発明したので、それでいくらでも生産できる、と説明する。それを聞いたコンラッドはボスのリードを裏切ることを決め、フェルプスたちに500Kgのコカインを生産しろという。そして、このコカインを、リードのコカインを買いに来たバイヤー三人に、リードの売値の半値の500万ドルで売ろうと企む。そこにバーニーが踏み込んでくるが、コンラッドは大金を提示してバーニーを買収する。

 翌日。取引の最中に、フェルプス、ウィリー、死んだはずのミミ、が現れ、バイヤーの金500万ドルを奪って逃走する。コンラッドとバーニーは怒ったバイヤーたちに殺されそうになるが、バーニーは今夜9時までに500万ドルを何とかする、と言って時間稼ぎをする。

 コンラッドは、リードがラローカから買ったコカインを横取りすることに決め、身内を殺して、コカインが美術商の店に運び込まれたことを調べて駆け付ける。しかしそこにリードたちが現れ、コンラッドに銃を突きつけるが、さらにそこに踏み込んで来た警官たちが一味を包囲する。コンラッドは、警官たちの横にフェルプスたちがいるのを見て、ようやく騙されたことに気が付く。最後、IMFメンバーが美術商の店から出てくるシーンで〆。


監督: レザ・S・バディイ
原案: ノーマン・カトコフ&ハロルド・リビングストン
脚本: ハロルド・リビングストン


感想

 評価は○。

 IMFがターゲットたちの間に亀裂を発生させ、それによって首尾良く任務を達成するというおなじみの展開だったが、シナリオがまずまず良く出来ており、予想外の当りだった。

 今回IMFは、麻薬のコカインを完全に科学的に合成するという架空の装置をでっち上げターゲットを騙す、という作戦を実施する。IMFは、過去にもこの手のインチキ装置を使う作戦を何度か実行しており、例えばシーズン1・第19話(通算第19話)「ダイヤモンド強奪作戦」では「鋳型となるダイヤを用意すればいくらでもコピーのダイヤを製造できる装置」を、シーズン2・第8話(通算第36話)「ニセ札製造マシン」では「コンピューター制御により原板を作る必要も無く偽札を製造できるハイテクマシン」といった、怪しげな機械を持ち出してきて作戦を成功させている。

 もちろん視聴者は、これらの驚異の装置が、実際のところは見かけだけのインチキ装置だと知っている訳で、今回もまた悪党たちが欲に目がくらんで、過去同様にこの手の装置にころりと騙されてしまうという展開が実に痛快だった。

 ちなみに今回の作戦では、ウィリーがコカイン合成装置を開発したと称する化学者コードウェル教授、を演じている。ウイリーはいつもは裏方とか、せいぜいガードマンだのタクシー運転手だのという、あまり演技力の必要のない役柄ばかり担当しているだけに、今回はメガネと白衣姿で「コカインの原料のコカの葉の成分はヘリトロチオン、つまりC12H21NO4で……」とか説明しだすシーンは、いつもとのギャップについ笑ってしまった。ちなみに本物のコカインの化学式は「C17H21NO4」で、炭素の数値以外は正確である。

 本エピソードで、麻薬業者リードの腹心コンラッドを演じるのはウィリアム・シャトナー。SFドラマ「スタートレック宇宙大作戦」の主役のカーク船長で有名な俳優で、スパイ大作戦にはシーズン6・第2話(通算第129話)「タイムスリップ」に続く二度目の出演となった。シャトナーはカーク役のおかげでヒーローのイメージが強いが、今回の話を見ると悪役の方が似合っているような気がする。

 IMFの作戦は、時々「そこまで大げさな仕掛けをしなくても、もっとシンプルに目標を達成できるのでは?」と思うことがあるが、今回はわざわざウィリーに「コンラッドに(政府から借りた)コカイン500Kgがあると教えてやればいいのでは?」と言わせ、フェルプスがそれに対して「出所不明のコカインが有ると言っても疑われるだけだ」云々と、合成マシン作戦を実施する必要性をわざわざ説明しているのが面白かった。

 IMFコンラッドに、コカイン合成装置で大儲けできると甘い夢を見させてボスのリードを裏切らせておいてから、一転窮地に追いこみ、生き延びるためにはリードが買い付けた500Kgを手に入れるしかない、という状況に持っていく。そして追い詰められたコンラッドは、リードのコカインの元へとIMFを案内することになる、という寸法で、話の組み立てが上手く、ラストまで楽しく視聴できた。最後にコンラッドが警官隊と一緒にフェルプスたち四人が立っているのを見て、自分が騙されたことに気が付いて自嘲するような笑いを浮かべるシーンも印象深かった。

 本エピソードでもケイシー役のリンダ・デイ・ジョージは産休で不在だが、今回もメンバーがその辺りをフォローするシーンが有り、フェルプスが今回の作戦で名前を借りる大富豪は、現在ヨーロッパで怪我の療養中で、その人物にケイシーが会って了解を取り付けた、という説明を行っている。


 今回のサブタイトルの原題「Cocaine」とは、麻薬のコカインの事で、極めてストレートなタイトルである。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で本屋(?)に乗り付け、中の小部屋で棚から分厚い本を取り出してきて開くと、中にオープンリール式テープレコーダーと大きめの封筒が隠されている。フェルプスはテープを再生して、封筒の写真を見ながら指令を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。カール・リードは合衆国きってのコカインブローカーであり、フェルナンド・ラローカはその卸元である。この二人のやり口は極めて巧妙で、現物の受け渡し・支払など取引の実態は一切掴めていない。ところで、そのラローカが、三日以内に未だかつてない大量のコカインを合衆国のリードあてに密輸するという情報が入った。

 そこで君の使命だが、その現物を押さえることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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