感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第157話(シーズン7 第8話)「戦慄“殺しの横顔”」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン7」あらすじ・感想まとめ

 

第157話 戦慄“殺しの横顔” Movie (シーズン7 第8話)

 

あらすじ

犯罪組織のボスが映画の撮影所を買収し、撮影所長としてボスの弟が送り込まれる。娯楽産業に使われた不正資金を暴くため、ボスの弟に扮したフェルプス(ピーター・グレイブス)が撮影所に潜入し、組織の黒幕シールドを主人公にした映画の製作を始める。

 
【今回の指令】
 ノーマン・シールド(Norman Shields)は、シンジケートがレジャー産業へ入り込むための先兵であり、シンジケートのボス・ベンジャミン・ディーン(Benjamin Dane)から資金提供を受けている。最近ディーンは、1000万ドルでロスアンゼルスパンテオン撮影所(Pantheon Studios)を乗っ取ったばかりで、数日中にディーンの弟・テオ(Theodore Dane)が同撮影所を取り仕切る予定となっている。IMFはシールドが持っているであろうシンジケートの不正な資金提供の記録を入手しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ウィリー、ミミ
 ゲスト:無名メンバー(声帯模写の達人)


【作戦の舞台】
 アメリカ国内・ロスアンゼルス


【作戦】
 冒頭。撮影所の元の所有者がディーンの手下たちに殺される。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 テオは飛行機でロスアンゼルスに向かうが、IMFは機内でテオを眠らせ、フェルプスがテオにすり替わって撮影所に入り込む。またバーニーは映画監督という設定で、新進女優役のミミと共に撮影所に乗りこみ、新作映画「殺しの横顔(PORTRAIT OF A MURDER)」の撮影を始める。

 バーニーは、シールドたちに、映画の内容は現実に起きた事件をベースにした犯罪物で、ドキュメンタリー風に作ると説明する。シールドは、その事件とはかつて自分が関わった物だと気が付き、事件を蒸し返されると困るので、撮影を止めさせようとするが、フェルプスは面白い映画になりそうだと言って、撮影を続けさせる。

 焦ったシールドはバーニーを爆殺しようとするが、気が付かれて失敗する。そしてシールドとフェルプスの仲も険悪になる。IMFはシールドの持つ拳銃を仕掛けの有るものにすり替える。

 やがてフェルプスはシールドを夜の撮影所に呼び出し、お前の弱点となる証拠を握ったので自分に屈服しろと居丈高に言う。シールドは銃を出して証拠を渡せと凄むが、IMFの仕掛けで勝手に銃(空包)が発射され、フェルプスは死んだふりをする。シールドは慌てて逃げ出し、バーニーはその様子を全てこっそり撮影している。

 やがてディーンは弟テオが死んだと聞き、ロスアンゼルスに飛んでくる。シールドはディーンに、テオとは「殺しの横顔」の撮影の事でもめた挙句に誤って撃ってしまったと説明し、その証拠として「殺しの横顔」の撮影フィルムを上映する。

 ところが上映された内容は、シールドとフェルプスが言い争ったシーンのもので、しかも会話内容は声帯模写で全く別の物にすり替えられ、シールドがテオ(フェルプス)を一方的に脅した挙句射殺した、という物になっていた。ディーンは激怒し、シールドを組織から追放するので、金の流れの記録をよこせと言い、シールドはマイクロフィルムを収めた腕時計を渡す。ディーンがそれを持って建物の外に出た瞬間、フェルプスたちが銃を突き付けて時計を奪い、そのまま逃げ去る。


監督: テリー・ベッカー
原案: アンソニー・ボウワーズ
脚本: アンソニー・ボウワーズ&アーサー・ウェイズ&ステファン・カンデル

感想

 評価は(ぎりぎり)○。

 IMFロスアンゼルスの映画撮影所を舞台に作戦を仕掛ける話だが、イマイチぱっとしないストーリーで、評価はもう一つだった。


 今回IMFは、ターゲットとなるシールドの過去の犯罪を暴く映画を作るという設定でシールドを心理的に追い込み、罠に陥れていく。この辺りは、撮影所が舞台という設定を上手く使っており、そこそこには面白い着想だった。また隠し撮りしたシールドとテオ(フェルプス)の対話シーンの音声を、声帯模写の達人がすっかり別の内容に置き換えて上映し、それでディーンの前でシールドを言い訳できなくさせる、という展開も、往年のスパイ大作戦らしいテイストが感じられて、それなりには満足できた。

 しかし随所に粗も見られ、例えばIMFロスアンゼルスのシールドたちとシカゴにいるディーンの電話を盗聴・介入できるような体制を整えるのだが、こんなことはロスアンゼルスの電話局全てを乗っ取らないと不可能であろう。ディーンの用心棒のムーアが街中の公衆電話ボックスからシカゴに電話をかけた時ですら、IMFはそれをキャッチして、IMFメンバーがディーンのふりをして受け答えするのである。これを実現するのはどんな技術力なのかと言いたい。

 また、シールドの所有する拳銃をすり替えるため、ウイリーが空手の先生役でシールドのところに出張授業に行き、練習中にKOしてからこっそり銃を入れ替える、というシチュエーションが有るが、あまりにもいきあたりばったりすぎである。これが上手くいくためには、シールドがきちんと失神してくれる必要がある上に、拳銃の隠し場所が解っていなければならない。シールドがウィリーの目の前で拳銃をしまってくれなかったら、それで作戦が失敗していたのではないか。

 最後も、フェルプスたちは一人で建物から出てきたディーンに銃を突き付け、首尾よくマイクロフィルム入りの腕時計を奪って逃走するが、たまたま護衛がいなかっただけであり、いつものように護衛が周囲を固めていたら、とても時計を取り上げることなどできなかったろう。これもまた運頼みの展開だった。

 とまあ、このように、気になるところが多すぎて、いつもの様にIMFの作戦のスマートさに感嘆するようなエピソードではなかった。今回の脚本は三人がかりで書いているのだが、その割に質がイマイチなのはどういうことなのだろうか。

 しかしまあ、一つだけ感心したところも有り、シールドとテオの対峙を隠し撮りしたフィルムを上映する際、本物のテオもフェルプスも共に銀髪で、またフェルプスの顔が写らないように後ろから撮影されていたので、ディーンは映っているのがフェルプスだと気が付かない。このシーンでようやく、テオとフェルプスがともに銀髪だった理由が明かされたわけで、この伏線にはニヤリとさせられた。話の全体にこういう気配りというか面白さが有れば良かったのだが……

 今回のサブタイトルの原題「Movie」とはもちろん「映画」のことで、内容そのままのサブタイトルだった。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で救急病院(?)に乗り付け、ウサギがかごに入れられている実験室(?)に入る。フェルプスは鍵のかかった引き出しを開けて大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出し、近くの椅子に座る。そしてその後、フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。ノーマン・シールドは、レジャー産業にくい込む大手犯罪勢力の尖兵であり、そのための工作資金をシンジケートのボス、ベンジャミン・ディーンにあおいでいる。最近ディーンは、一千万ドルを出してパンテオン撮影所を乗っ取らせたばかりであり、二・三日中にその弟テオがロスアンゼルスに飛び、同撮影所を取りしきる予定である。

 そこで君の使命だが、シールドが持っていると思われる、シンジケートがその方面にいかに不正な金を使っているかを詳細に記した記録を入手し、シンジケートに壊滅的打撃を与えることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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