感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第161話(シーズン7 第12話)「無意識での殺人」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン7」あらすじ・感想まとめ

 

第161話 無意識での殺人 Crack-Up (シーズン7 第12話)

 

あらすじ

有能な殺し屋でチェスの名プレーヤーでもあるコーデル。これまでに殺人の証拠を一切残していない彼の背後関係を暴き、陰で操る人物を突き止めるために、IMFはコーデルに催眠術をかける。

※DVD版のタイトルは「架空殺人事件」。
 
 
【今回の指令】
 腕利きで頭も切れる殺し屋ピーター・コーデル(Peter Cordel)は、過去に9人を殺害したと推測されるが、その証拠は見つかっていない。またコーデルに殺人を指示しているのがシンジケートの誰なのかも不明である。IMFはコーデルに殺人を指示している黒幕を突き止めなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:サンディ、アドラー医師、看護人


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。コーデルが女性を殺害する。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 コーデルはチェスクラブのチャンピオンのため、フェルプス精神科医と名乗ってコーデルと勝負し、コンピューターの助けを借りて圧勝する。そのあとフェルプスはコーデルに催眠術をかけ、キーワードを聞くと意識を失い、名前を呼ばれると意識を取り戻すようにする。

 アドラー医師は駐車場でコーデルに話しかけ、キーワードで意識を失わせてから、血のりを付けて死体のふりをして倒れる。意識を取り戻したコーデルは「死体」を見て慌てて逃げ去る。南部の新興シンジケートの幹部がコーデルをスカウトしに来るが、IMFはその幹部を捕まえてサンディがすり替わり、コーデルと接触する。

 バーニーはアドラー殺しを捜査している警官という設定でコーデルを訪問するが、アドラー同様にコーデルに殺されたふりをする。さらにIMFは、コーデルが無意識のうちに実の兄も殺してしまったと思い込ませる。

 そのあと、IMFはコーデルの意識を失わせてから病室に閉じ込め、フェルプスは治療のため自分の病院に入院させたと説明する。続いて看護人がコーデルの命を狙っているという芝居をする。直後サンディがコーデルを見舞いに来るが、精神的に参ったコーデルは、サンディに自分のボスに連絡してここから出すように伝えてくれという。サンディは、コーデルの指示通りにボスと接触し、ボスは警官隊に包囲されて捕まるのだった。


監督: サットン・ローリー
原案: ロバート&フィリス・ホワイト&アーサー・ウェイズ
脚本: アーサー・ウェイズ

感想

 評価は△。

 あまりと言えばあまりの内容のシナリオで、ちょっと視聴していて辛いレベルの低クオリティ回だった。

 今回はIMFは殺し屋コーデルの背後関係を調べるという指令を受けるが、いきなり序盤にターゲットのコーデルに催眠術をかけてしまう。ここまで踏み込んだことができるなら、もうこの時点で、コーデルに催眠術で「ボスの名前と居場所を言え」と命令すれば済んでしまう話で、そのあとの回りくどい作戦を取る必要などない。ということで、もうこの段階で見ていて白けてしまった感は否めない。

 また、IMFのその後の作戦は、緻密な計略どころか、たちの悪い冗談というレベルの事しか行わない。具体的には、コーデルを精神的に追い詰め自分がおかしくなったと信じ込ませるため
 
1)キーワードでコーデルの意識を失わせる
2)血のりを使って死体のふりをする
3)コーデルの名前を呼んで目覚めさせる
4)気が付いたコーデルに『死体』が転がっているのを見せててショックを受けさせる
 
 という事を3回も繰り返すのだが、視聴者視点では、かなりバカバカしい事をしているとしか思えなかった。そもそもコーデルが冷静に脈を取って生死を調べてきたら一発でばれてしまう程度の偽装でしかなく、今までに9人も殺しているプロの殺し屋が、死体を見た程度で慌ててしまう、というほうがおかしいのではないのだろうか。

 またコーデルを眠らせるキーワードは『怪しいと思ったら歩を取れ』という言葉なのだが、これ自体がかなり変だし、またIMFメンバーが死体のふりをするため容器から血のりを出して自分に振りかけるシーンなど、変な笑いが出てきそうなくらい珍妙で、真面目に見る気を失いそうになってしまった。

 さらに、終盤、コーデルに駄目押しをするため、病室に閉じ込められたコーデルに看護人が襲い掛かって枕で窒息させようとする一幕が有るのだが、このようにターゲットに直接的に暴力をふるう展開はスパイ大作戦らしくなく、見ていて不愉快極まりなかった。

 ということで、今回は最初から最後まで全く乗り切れないエピソードだった。

 今回の話で一つだけ面白い所が有ったとすれば、フェルプスがチェスに勝つために使用したチェス用コンピューターの描写だろう。バーニーがカメラで対局の様子を監視し、相手の差し手をコンピューターにキーボードで入力すると、コンピューターがフェルプスが打つべき手を、例えば「N-QB3」(ナイトをクイーンビショップ3へ)という風に教えてくれるのである。そしてその手をバーニーが無線でフェルプスに伝え、フェルプスがメガネ型の受信機で答えを受け取る、という具合である。

 打ち手の表示が、電気的なディスプレイなどではなく、アナログ式にガチャガチャとアルファベットや数字が回転しながら表示されるのが1970年代風(この話の放送は1972年)で、時代を感じさせてくれた。

 今回はIMFメンバーにゲストが二人も登場するが、女性エージェントはケイシーでもミミでもないサンディというキャラなのが唐突である。またもう一人はアドラー医師という人物だが、医者らしい描写は一秒も無く、医者である必然性ゼロの謎の人物であった。こういうところも今回のシナリオの粗を感じさせてくれた。


 今回のサブタイトルの原題「Crack-Up」とは「精神的・肉体的に弱る」といった意味で、精神的に追い詰められていくコーデルの様子を表しているのであろう。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で建物の前の噴水の有る広場に乗り付け、止めたバイクをいじっている男に合言葉を言うと、男はバイクを残して歩き去る。フェルプスはバイクの荷物入れから大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出し、近くのベンチに座る。そしてその後、テープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。腕も立ち頭も切れる殺し屋ピーター・コーデルは、今までに少なくとも九人の人間を殺していると思われるが、その証拠は無く、また彼を動かしている背後関係についても、シンジケートの誰であるかわかっていない。

 そこで君の使命だが、コーデルの口を通して、誰が彼に殺しを請け負わせているのか、その人物を突き止めることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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