感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第162話(シーズン7 第13話)「包帯の下の顔」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン7」あらすじ・感想まとめ

 

第162話 包帯の下の顔 The Puppet (シーズン7 第13話)

 

あらすじ

自分の計画に乗り気でない犯罪組織のボスである兄を、インテリの弟は狩猟中の事故に見せかけ負傷させる。兄が寝たきり状態なのをいいことに、たくらみを実現させるため、資金集めを始める弟。IMFはその計画を暴くため彼らに接近する。そんな中フェルプス(ピーター・グレイブス)は、包帯に巻かれた兄の正体が替え玉ではないかと疑っていた。

※DVD版のタイトルは「カラクリを叩きつぶせ」。
 
 
【今回の指令】
 シンジケートのボス・ポール・オストロ(Paul Ostro)は、約一か月前に猟銃の暴発事故で顔面を負傷したため、以後寝たきりで、ファミリーは弟のレオ(Leo)が仕切っている。そのオストロ・ファミリーが、何十億ドルにのぼる新しい犯罪企業(criminal enterprise)を計画中という噂が持ち上がっている。IMFはその新企業の内容を突き止め、粉砕しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:ハンク(変装担当)、カリッド(長官役)


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。兄のボールと弟のレオが、猟の最中にファミリーの事業の路線について口論している。そしてポールは新事業を始めたいなら自分を殺してからやれと言い放ち、それを聞いたレオはポールに発砲する。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 ポール・オストロは顔面を包帯でぐるぐる巻きで、怪我のため喋ることも困難な状態である。レオはポールの前にファミリーの幹部四人を集め、自分の事業に100万ドルづつ出してくれれば確実に12倍にして返すと言う。幹部の一人でポールの後釜を狙うラリーは、事情の内容も解らずに金は出せないと渋るが、レオは機密保持のため話せないと言い、またポールがレオにすべて任せてあるというので、ラリーも金を出す。

 バーニーはオストロ家の屋敷にコックとして入り込む。またフェルプスとケイシーは、オストロ家の屋敷を訪問し、ホールと共に250万ドルのビジネスを進めていたと切り出す。ポールは知らないと言うが、レオは興味を持ち、フェルプスは中東某国の長官に100万ドルの賄賂を渡せば、250万ドル分の石油が手に入ると説明する。

 ラリーは手下を使ってケイシーを誘拐し、どんなビジネスの話なのか教えろと脅迫する。ケイシーはラリーに、レオは集めた400万ドルをスイス銀行に振り込み、自分もスイスに高飛びするつもりだとウソを話し、ラリーは激怒する。

 バーニーはポールに薬を盛って心臓発作そっくりの症状を起こさせ、呼ばれて医者役のウィリーがやってくる。ウィリーは診察したあと一旦引き上げ、包帯ポールに変装したハンクを連れて屋敷に戻り、ボールとハンクが入れ替わる。またウィリーは隠し金庫に入っていた400万ドルも盗んで持ち出す。IMFは連れ出した「ポール」の顔の包帯を取るが、中身は別人だと判明する。

 一方、レオはホテルにいる某国長官(カリッド)にビジネスの書類を見せられるが、自分では理解できないので弁護士に見せたいと提案し、フェルプスが書類をカバンに入れて屋敷に同行することにする。そこにラリーの一味が現れてレオとフェルプスを捕まえ屋敷のポールのところに連行する。

 ラリーはレオに400万ドルを持ち逃げするつもりだったなと詰め寄り、レオは否定するものの、フェルプスのカバン(秘密の仕掛け付き)を開けると、400万ドルとスイス行きの航空券が出てきて驚愕する。またフェルプスは、自分は会計士でレオにスイス銀行に口座を作るように頼まれた、と言い出す。

 慌ててレオはこれは誰かの罠だと弁解し、ポールならフェルプスを知っていると言うが、ポール(正体はハンク)はそんな男は知らず、全てはレオが勝手にやったことだと突き放す。レオはこのポールは偽物だと叫ぶが、包帯を外してみるとポール(のマスクを被ったハンク)なので、レオは驚く。

 ラリーは部下にレオを始末しろと命じ、レオは慌てて新事業というのは南アフリカ某国の偽札印刷で、屋敷の地下の印刷機でこっそり刷っていた、と説明する。そしてレオの案内で一堂が地下室に行くと印刷機と原板が有ったため、一同は納得しかける。そこにフェルプスたちに率いられた警官隊が踏み込んできたため、ラリーはレオをののしる。最後、IMFメンバーが車に乗って立ち去るシーンで〆。


監督: ルイス・アレン
脚本: リー・ヴァンス


感想

 評価は○。

 IMFが架空の大ビジネスをでっちあげて相手を罠に誘い込み目的を達成する、いう展開のエピソードで、なかなか面白く、シーズン7にしてはクオリティの高いエピソードだった。


 今回はIMFがターゲットのレオに中東の石油を扱う250万ドルのビジネスを持ち出して近づいていく一方、周囲の人間にはレオが裏切って金を持ち逃げしようとしているように思い込ませ、相手方の内部分裂を引き起こす。この手の内部分裂作戦はIMFの十八番で、今までに何度も使われて来たある意味新鮮味の無いアプローチだが、このエピソードは伏線の張り方も巧みで、見ていてワクワクさせられた。

 レオはフェルプスたちから石油ビジネスの話を聞かされているだけなのに、ケイシーがレオに反感を持つ幹部のラリーに大嘘を吹き込んだり、フェルプスが監視されていることを前提にレオ名義のスイス行きのチケットを購入したりして、周囲の人間にはレオが金を持ち逃げしようとしていると思い込ませていく、というIMFの計略は見ていて実に楽しかった。

 終盤の展開がまた痛快で、ラリーたちに取り囲まれたレオは、ポール(を演じている替え玉)にさりげなく自分の援護を指示するが、予想に反してポール(実は中身はハンク)はレオを突き放すような事しか言わない。逆上したレオはこれはポールのふりをした偽物だと指摘するが、包帯を取ってみるとその下からポールの顔(実は変装マスクだが)が現れて、レオが仰天するというシーンが心底愉快だった。

 レオとしては、屋敷にいるのは自分が用意した替え玉の筈だったのに、いつの間にか本物の(に見える)ポールがいるので仰天するが、自分からはこれは偽者のポールだなどという事も出来ず、身動きできない状態に追い込まれる。レオが、自分の立てた計略をIMFに逆利用されてにっちもさっちもいかなくなる、という展開は、これこそスパイ大作戦、と言いたくなる楽しさだった。

 最後、レオは生き延びるために秘密にしていた新事業がアフリカ某国の偽札印刷だと明かすが、それを聞いたIMFは警官隊をなだれ込ませ、シンジケートの幹部たちを一網打尽にする、という決着の付け方も実に面白かった。スパイ大作戦はシーズン7に入って振るわないストーリーが増えてきていたが、今回の様なエピソードを見せられると、まだまだ捨てたものではない、と思わされた。

 ところで、今回のエピソードには一つだけ謎が残っており、「冒頭にレオに撃たれたポールはどうなったのか?」について答えが無い。多分猟銃で撃たれて即死し、レオによって野原のどこかにでも埋められている、と推測されるが、劇中では結局生きているのか死んだのか明らかにはならなかった。本筋とは関係が無いことではあるが、ちょっとモヤモヤが残ってしまった。

 本エピソードでレオ役を演じたのはロディ・マクドウォール。この人は映画「猿の惑星」シリーズのコーネリアス役があまりにも有名だが、「刑事コロンボ」のエピソード「死の方程式」に出演して犯人役を演じている。そちらでも「自分で自分が頭が良いと思っているが、周囲からあまり評価されていないキャラ」を演じており、また最後は追い詰められて半狂乱になるという展開もよく似ている。この俳優は、そういうキャラクターが良く似合うということなのかもしれない。

 今回のサブタイトルの原題「The Puppet」は「操り人形、傀儡(かいらい)」といった意味。レオが負傷したポールのふりをして替え玉を据えて操っている、という意味であろう。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが珠のれんや日本人形の置いてある部屋に入り、棚のようなところからオープンリール式テープレコーダーと大きめの封筒を取り出し机の上に置く。そしてその後、テープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。犯罪シンジケートのボス・ポール・オストロは、麻薬にギャンブル、売春にゆすり、と幅広く悪の企業に手を染めているが、一月ほど前、猟銃の暴発事故にあって顔面を負傷、以後寝たきりの生活を続けている。このため、外界との折衝は一切弟のレオが取り仕切っているが、ポールの負傷以来オストロファミリーが、目下何十億ドルにのぼる新しい犯罪企業を計画中という噂がしきりである。

 そこで君の使命だが、その新企業の内容を突き止め、これを粉砕することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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