【歴史】感想:NHK番組「風雲!大歴史実験」『源平 一ノ谷の戦い ~鵯越(ひよどりごえ)の逆落としの真実~』


週刊 絵で知る日本史 10号 一ノ谷合戦図屏風 屋島合戦図屏風

風雲!大歴史実験 http://www4.nhk.or.jp/P3924/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

源平 一ノ谷の戦い鵯越(ひよどりごえ)の逆落としの真実~ (2018年6月30日(土)放送)

 

内容

6月30日土曜
NHKBSプレミアム 午後10時30分~ 午後11時30分
風雲!大歴史実験▽源平 一ノ谷の戦い鵯越(ひよどりごえ)の逆落としの真実


平家滅亡の道を決定付けた一ノ谷の戦い。平家軍数万の背後を狙い、義経が数十騎の騎馬武者たちと崖を駆け下り奇襲した伝説の戦い“鵯越の逆落とし”は本当にあったのか?逆落としがあったとされる現地を徹底調査し傾斜30度の崖を忠実に再現。当時の馬に近い在来種・木曽馬をつかって大実験。坂は苦手とされる馬の意外な習性。そして、いまや失われてしまった坂東武者たちの“驚異の山岳馬術”。馬が決した歴史の大転換点とは?


【出演】鶴見辰吾,村井美樹,東京大学・史学編纂所教授…本郷和人,【司会】徳田章,【リポーター】火災報知器

 
 日本史での有名イベントを実際に検証してみる番組。今回のお題は「一の谷の戦い」。


●一の谷の戦いとは

 平安末期。1184年。源平の戦いの終盤の戦い。平家は福原(神戸市)に固い防衛陣地を築いており、さらに平家群数万に対し、源氏軍は4千。とても源氏の勝ち目はないと思われたが、源義経は馬で急な崖をかけ下り平家の陣地を背後から急襲した。不意を突かれた平家方は海に敗走し、この一戦で事実上平家の敗北は決まったされる。しかし馬が急斜面を駆け下るのは無理とされ、そのために架空のエピソードという意見も根強い。


●作り話?

 馬は坂道に弱い。ヤギやニホンカモシカなどの蹄は二つに分かれており、物をつかみやすいため坂を苦にしない。しかし馬の蹄は一体になっており、草原を速く走るには向いているが、坂は苦手。さらに人を乗せている場合、坂道でバランスを崩して転んでしまう可能性が高い。やはり創作でしかないのか?


●実験1

 スタッフは神戸に行き、義経たちが下ったかもしれない坂道を調べてみると、二段式の坂になっており、一つ目が「長さ70メートル・傾斜20度」、二つめが「長さ45メートル・傾斜30度」。この条件に近いスキー場を借りて、本当に馬が下れるのかどうかを実験。

 義経たちが使った馬を再現するため木曽馬に人を乗せて下ってもらうが、20度の坂はなんとか降りたものの、30度の坂は馬が拒否して失敗。そもそも馬は「そろそろと降りる」という速度であり、とても奇襲などかけられそうにない。


●実験2

 平家物語の中には、義経が馬が坂を下れるか試すため、あらかじめ何頭かの人を乗せない馬を先に行かせた、という記述がある。しかし試すだけなら何頭も降ろす必要は無い。

 そこで実験。30度の坂の上に馬4頭を放し、坂を下りるかどうか見てみると、馬たちは坂に近寄ろうともしなかった。ところが1頭を坂の下に放すと、下から馬が上の馬たちに近寄るしぐさを見せ、そのあと上の三頭があっさり坂を駆け下りた。馬は群れで行動する習性が有るので、一頭が下にいればそれにつられて坂を降りる事が解った。義経が馬を先に下に行かせたのは、この効果を狙っていたのではないのか。

 関東の武士たちは、開拓農民という面もあり、馬の習性を熟知していたはずである。


●実験3

 急な坂を下りるのは馬だけでなく騎手も恐怖を感じる。明治時代に出版された馬術の教科書「騎兵操典」に古式馬術の坂の下り方が書かれており、それには「乗り手は体を後ろにそらし、片手で鞍の後ろを掴め」とあった。

 実際に試してみると、騎手が重力に垂直の姿勢をとることで、前のめりにならずに済み、転落する危険が弱められた。


●実験4

 平家物語には、義経たちが坂を下る際「えいえい」と声をかけたという記述がある。そこで馬に平地を走る際、掛け声無しの場合と、横にたった人たちが声をかけて応援する場合の速さを調べてみると、明らかに掛け声をかけたほうが早かった。

 馬を仕事に使う人たちは、馬に声をかけるときの効果を知っていた。馬で重い荷物を運ぶ際に馬子唄を歌ったりしていた。


●実験5

 再度スキー場のゲレンデで実験。坂の下には仲の良い馬を待たせ、騎手は体を後ろにそらし、横から応援団が掛け声をかけてみる。今度はテンポよく下って30度の急坂にも突入したが、途中で馬が止まってしまったため、完全に下ることは出来ず。

 しかし当時の源氏の馬たちならもっと筋力があったはずで、それならば坂を下るのは可能だった可能性が高い。


●鎌倉ドリーム

 当時、平家の治める西国は豊かで、源氏の本拠の関東は相対的に貧しかった。源氏の武士たちは西国を手に入れて豊かな暮らしがしたいという欲望があったはずで、そのため危険極まりない鵯越の逆落としでも挑戦した、のかもしれない。

感想

 「どう考えてもあとから作った創作エピソード」にしか思えない鵯越の逆落としが本当に有ったかも、思わせてくれる数々の実験による検証が素晴らしい。今回は大傑作回でした。

 おなじみ「乙女ゲームの画面みたいな場面が差し込まれ、美形のキャラたちが声優たちの声で喋る」というあれですが、今回は平宗盛(声:置鮎龍太郎)・源義経(声:榊原徹也)でした。今回も宗盛が「我々は馬を大事にするのだ。坂を下って危険に晒すようなことはしない!」とかカッコいい声でカッコいいコメントを残しておりましたですよ(笑)
 
 

他の回の内容・感想はこちら

「風雲!大歴史実験」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
少年少女日本の歴史6 源平の戦い 6: 平安時代末期 (小学館版学習まんが―少年少女日本の歴史)