放送開始50周年 刑事コロンボ|NHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム。
【※以下ネタバレ】
第42話 美食の報酬 MURDER UNDER GLASS (第7シーズン(1977~1978)・第2話)
あらすじ
レストランオーナーのビットリオが毒殺された。遺体からはワインに入っていた非常に珍しい毒が検出される。コロンボはビットリオが亡くなる前、一緒に食事の席にいた料理評論家のポールに目をつける。だが、ビットリオはポールが帰った後で、新しいワインの栓を抜いて飲んでいた。犯人は一体どうやって開ける前のワインに毒を入れたのか?
料理評論家ポール・ジェラードは、メディアで特定の店を持ち上げる見返りとして、その店のオーナーたちから大金を絞りとっていた。そんな被害者の一人ビットリオは、ジェラードを店に呼びつけ、もう金は払わないし、さらにジェラードの悪行を公表すると宣言する。しかしジェラードが立ち去った後、ビットリオは急死してしまう。
コロンボが事件の担当になり、ビットリオは未知の毒で死んだ事が判明した。状況から見て自殺ではありえなかったが、直前にビットリオとジェラードが食べた食事からは毒は見つからず、ビットリオは誰にどうやって毒殺されたのか謎だった。やがて警察はワインに未知の毒が混入していたことを突き止めるが、そのワインは店がランダムに選んだものを、ビットリオ自身が栓を抜いて飲んだものであり、犯人が毒をいれられるはずが無かった。
やがてコロンボは、ビットリオが「レストラン振興協会」という相手に、合計10万ドルもの大金を支払っていたことを突き止める。しかし協会は、ビットリオ自身とレストランのオーナー仲間の計三人が立ち上げた組織だったが、事実上何の活動もしておらず、ビットリオは何故10万ドルを振り込んだのか不明だった。
コロンボはジェラードの家を訪ねた際、たまたまふぐ刺しを振るまわれ、フグは猛毒を持っているという話を耳にする。またレストラン振興協会の口座からは、つい先日大金が引き出され、それを引き出したのはジェラードの秘書イブだと探りあてる。
コロンボはジェラードに、事件が終わりに近づいたので、ビットリオの店を借りてジェラードに自分の料理を振るまいたいと提案する。そしてやって来たジェラードに対し、「犯人」はビットリオの店を評価を自由にできる人物で、恐喝して大金を巻き上げていたこと、そしてビットリオがそれを拒否しさらに恐喝をばらそうとしたために殺したこと、等の推理を開陳する。それらは全てジェラードが犯人であることを暗示していた。
さらにコロンボは、ワインが毒に入ったのは、空気を使用するタイプの栓抜きの先端に毒が仕込まれており、犯人は毒入りの栓抜きを持ってきて店の物とすり替え、それを使ったことでビットリオが死んだ、と種明かしをする。ジェラードはそれを証明する証拠は何も無いと涼しい顔で言い、コロンボがワインを飲むのを見ていた。しかし、コロンボはワイングラスをすり替えたので、毒が入っているのはジェラードのグラスの方だと言い、証拠としてグラスを押収する。
観念したジェラードは、コロンボにいつから自分を疑っていたのか尋ねるが、コロンボは初対面から2分後だと答える。何故なら、ジェラードは一緒に食事した相手が毒で死んだにもかかわらず、自分の身の安全を全く心配していなかったからだった。
感想
評価は◎。
事件が料理業界で発生したという事で、コロンボは最初から最後まで美味しい物を食べるシーンの連続で、目にも嬉しいエピソードとなった。
このエピソードの最大の特徴は、「犯人のジェラードはどうやってビットリオを毒殺したか?」という事件の最大の謎が、クライマックスまで視聴者にも明かされない事だろう。コロンボの通常のエピソードであれば、殺害の理由から犯行の様子までが全て描写され、殺人が完了した後、満を持してコロンボが登場する、という流れになる。
しかし本エピソードでは、犯行の実行の様子は隠されており、そのため、視聴者はジェラードが犯人であることは知っているものの、毒殺の方法については、コロンボと同じ立場で推理することになり、普段と違う謎解きの面白さを堪能できた。
今回の事件では、殺されたビットリオは業界で人望が厚かったため、捜査を担当するコロンボはピットリオの友人たちから捜査協力としてごちそうを振るまわれる、という展開となり、コロンボは行く先々で美味しそうな物を口にする。
・マッシュルームのカニの詰め物
・クラッカー?の上にキャビア・スモークサーモン・フォアグラ
・貝柱のソテー(台詞だけ)
・ギョウザ?(ナイフとフォークで食べていた)
・ふぐ刺し
・コーヒーケーキ
さらに、レストラン批評家協会のパーティーに招かれて豪華な晩餐を楽しみ、最後は自分で料理した肉料理をジェラードに出して見せる、と最初から最後まで美食尽くしの、しゃれた雰囲気の回だった
さて、このエピソードのツッコミどころは、劇中でジェラードが毒を取り出すために使用した魚が、フグはフグでも「ハリセンボン」だということだろう。ハリセンボンは毒を持っておらず、何をどうしようがフグ毒を抽出しようがない。まあ多分アメリカではフグを食べないので適当に入手できるハリセンボンを使用したと思われるが、日本人視聴者にとってはかなり引っかかる場面であった。
クライマックスでは、コロンボはレストランの厨房を借りて、自ら肉料理を作りつつ、ジェラードと二人きりで「犯人」についての推理をジェラードに披露していく。犯人像が明確になっていくにつれ、その犯人像に該当するのはジェラードだけ、というのが解っていくのだが、ジェラードもコロンボも互いに「犯人はあくまでどこの誰か解らない人物」という体で話を続けていく。この辺りの心理的な対決の描写は見ていてすこぶる面白かった。
そして、途中でとうとうコロンボはズバリと犯人=ジェラードだと決めつけ、挑発する。ジェラードはコロンボが毒入りワインを飲んだと思い込んで余裕を保ち続けるが、実はコロンボはワイングラスをすり替えており、「証拠って言うのは、こういうのを言うんですよ」と毒入りグラスを確保する。ジェラードはコロンボが仕掛けた罠に引っかかって自ら証拠を差し出してしまった訳であり、この辺りのコロンボの策士ぶりはお見事というほかはない。
しかもコロンボはジェラードに対し、出会ったときから犯人だと目星をつけていたと言って、ジェラードを唖然とさせる。犯罪という勝負でコロンボに負けたジェラードは、緊張が解けたのか、コロンボの料理について「あんたは理人になるべきだった」と素直に称賛してみせる。味わいのあるラストシーンだった。
●おまけ:コロンボの作った料理「炒め焼き」のレシピ
準備
・子牛肉の薄切りに軽く塩コショウ
・シャンピニオンを薄切りにして水につけておく
調理
1)フライパンにバターをスプーン一杯分を溶かしたあと、オリーブ油をいれる
2)肉を焼いてから取り出す
3)フライパンにワケギとシャンピニオンをいれ、数分ぐつぐつ言わせてから取り出す
4)フライパンにワインをいれ、再度肉を戻して焼く
備考
本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第19位にランキングされた。
#42 美食の報酬 MURDER UNDER GLASS
日本初回放送:1978年
BSプレミアム2018年11月17日(土)午後4時30分~
ポール役のルイ・ジュールダンはフランスの俳優。映画『007/オクトパシー』でボンドの敵役として出演。演出は映画『羊たちの沈黙』でアカデミー監督賞を受賞したジョナサン・デミ。2017年、惜しまれながらこの世を去った。
出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク(小池朝雄)
ポール・ジェラード・・・ルイ・ジュールダン(金内吉男)
イブ・・・シーラ・ダニーズ(田島令子)
デュバル・・・リチャード・ダイサート(高城淳一)
小津・・・マコ(原田一夫)
ビットリオ・・・マイケル・V・ガッツォ(藤岡重慶)
アルバート・・・ラリー・D・マン(雨森雅司)
メアリ・・・フランス・ニュイエン(瀬能礼子)
マリオ・・・アントニー・アルダ(徳丸完)
演出
ジョナサン・デミ
脚本
ロバート・バン・スコイク