感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第45話「策謀の結末」

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放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

第45話 策謀の結末 THE CONSPIRATORS (第7シーズン(1977~1978)・第5話)

 

あらすじ

アイルランド出身の詩人であり、IRAメンバーでもあるジョー・デブリンは、平和組織「北アイルランド援護協会」を利用し、集めた金で銃器の大規模な密輸を計画していた。だが銃の仲買人であるポーリーが無理な要求をしてきたため、デブリンは彼を射殺。被害者がデブリンの著書を持っていたことから、コロンボデブリンに捜査への協力を依頼する。

 
 アイルランド出身の詩人ジョー・デブリンは、少年時代はアイルランドの過激派の一員であり、投獄された後、脱獄して渡米してきた、という破天荒な過去を売り物にしていた。そしてデブリンは、今は表向きは暴力反対を掲げて「北アイルランド援護協会」という難民支援組織の理事を勤めていたが、協会の実態は寄付金で銃を購入し母国の過激派に供給するというテロ支援組織だった。

 デブリンは武器商人ポーリーと取引し、大量の銃を購入する契約を結ぶが、ポーリーが彼を騙し金を持ち逃げしようとしていることに気が付き射殺する。

 デブリンは自分とポーリーを結ぶものは何も無いと気楽に構えていたが、すぐにコロンボが自宅にやってきて驚く。コロンボはポーリーがデブリンのサイン入りの著書を持っていたことから、知り合いではないかとあたりを付けて訪ねてきたのだった。デブリンは即座に否定するものの、以後コロンボデブリンの知恵を借りたいと捜査への協力を依頼する。

 北アイルランド援護協会を実質的に運営しているのは、大財閥オコンネル工業の会長ケイトと息子で社長のジョージだった。デブリンは二人から、武器商人を殺してどうやって銃を調達するのかと責められ、武器の入手に奔走する。そして苦労の末、ようやくポーリーが銃を買い付ける予定だった相手と接触し、銃の確保に成功する。

 コロンボは、ポーリーが銃を貨物船に乗せてイギリスに送る予定だったと推測し、銃はアイルランド過激派に供給される物だったと見当をつける。そして税関やFBIが船を徹底的に調べるものの、怪しい物は何も見つけることが出来ず、ついに船は港を出港してしまう。

 デブリンは無事武器を送り出せて満足していたが、そこにコロンボが現れ、デブリンにポーリー殺しの決定的な証拠を提示する。デブリンはウイスキーを飲む際、瓶の外側にダイヤの指輪でその日飲む量までを印をつけることを癖にしていた。そしてポーリーの殺害現場に残されていたウイスキーの瓶にも、デブリンの指輪で付けた傷跡が残っていたのだった。

 さらに、外海に向かっていた貨物船もデブリンの目の前で沿岸警備隊によって停船させられる。コロンボは、貨物船を動かしていたタグボートがオコンネル工業の物だと気が付き、銃は今はタグボートに積み込まれていて、外海で貨物船に移し替えるつもりだと見抜いたのだった。コロンボに完敗したデブリンは、コロンボに酒を勧め、コロンボもそれを受けるのだった。

感想

 評価は○。

 1時間40分枠の長尺版で、事件の背景もかなり大掛かりであり、映画を見ているような気分にさせられるエピソード。印象的な場面も多く、結構好きな話である。


 本エピソードは、第7シーズンの最終話であり、この話をもってNBCでの放送(1968~1978年(全45話))は終了した。スタッフが「最終回」という事を意識していたのかどうか解らないが、他のエピソードと比較してかなり豪華な感じの作品であり、ラストを飾るのにふさわしい雰囲気となっている。


 この話でコロンボと対決するジョー・デブリンのキャラクターは、他の作品の犯人像とはずいぶん異なっている。他作品においては、犯人の殺人の動機は色々(金・怨恨・保身、等々)だが、いずれにせよ殺人こそがゴールであり、事件発覚後は、怪しまれないように普段通りの生活を送ろうとするものの、コロンボの執拗な追及を受け続けて追い込まれた挙句に敗れ去ってしまう。

 ところがデブリンは全く違い、殺人は武器の密輸という一大プロジェクトの途中で発生した些細なトラブル程度であり、本人にとっては大した出来事ですらない。また事件発覚後も武器密輸のために走り回り、受け身でコロンボの追及を受け続けてストレスをため込む、という事も無い。元々の性格なのだろうが、コロンボに会うたびに、ダーツを共にプレイしたり、酒を酌み交わしたり、と、なかなかフレンドリーですらある。

 そんな人物だけに、例え殺人者であってもあまり悪人的な雰囲気は無く、デブリンが貨物船の出航までに銃を無事確保できるのかどうか、に、思わずハラハラしてしまうくらいだった。


 またクライマックスの盛り上げ方も、他作品とは大きく違っていて非常に派手である。他作品では、コロンボが犯人に決定的な証拠を突き付け、犯人が負けを認めてガックリとうなだれる、といったシーンで締めくくりとなるが、本作ではデブリンを犯人だと指摘した後、さらに沿岸警備隊の船やヘリコプターが出動し、デブリンの目の前で貨物船を取り押さえる、というアクション映画のような派手なシーンが付いてくる。またその直前に、コロンボが愛車のプジョーに乗りこみ海の上にかかる橋を疾走していくのを上空から撮影している、という場面が有り、これもコロンボ物にしては珍しいシーンだった。と、色々と非常に「最終回」らしいゴージャスさが有った、という印象である。

 「デブリンが銃をどうやって密輸するのか」は、視聴者にも最後まで明かされず、視聴者はコロンボと共に謎解きを行うことになるのだが、終盤にコロンボは出港していく船を望遠鏡で詳細に眺め、ついに真相にたどり着く。その際にコロンボが見た光景は同時に視聴者にも見せられており、「手掛かりは全て提示された。貴方にも真相が解ったか?」という『視聴者へのの挑戦』ともいえる展開となっているため、見ていてゾクゾクさせられた。後から見直してみると、一瞬だがタグボートにちゃんとオコンネル工業の旗が見えるし、またオコンネルの旗がどういう物かも序盤で提示されている。実にフェアな謎解きだったと言える。

 ラストシーンは気持ちいい物で、デブリンは殺人犯としての決定的証拠を提示されてもじたばたしたりしないし、また苦労した銃の密輸がコロンボに阻止されても取り乱さない。そしてコロンボが「いやぁ、ツイてました」と言うと、「いや、それは単なるツキではないな」と称賛してみせ、コロンボに愛用のウイスキーを勧めてみせる。最後まで嫌味の無い、なかなか好感の持てるキャラクターだった。


 コロンボが細かい手掛かりを次々と見つけ出し犯人を追及していく、といういつものコロンボ物らしい要素は弱かったが、全体的に見ればこれはこれで面白いエピソードで、また、ここぞというときに使用されたアイルランド風(?)の音楽も印象深く、なかなか楽しめる話だった。


 サブタイトルの原題「THE CONSPIRATORS」とは英語で「共謀者、陰謀者」の意味。デブリンたちのテロ支援組織の事を示していると思われる。

 被害者の武器商人ポーリー役を演じたのはアルバート・ポールセン。「スパイ大作戦」に何度もゲスト出演していたのが印象深い。

 デブリンに銃を売った武器商人ジェンセンの声を担当したのは大泉滉氏だそうで、言われてみれば納得である。


備考

 本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第15位にランキングされた。
 
 

#45 策謀の結末 THE CONSPIRATORS
日本初回放送:1979年


第7シーズンのラストにして、初回からコロンボの声を担当してきた小池朝雄コロンボのラスト作品。長らく小池版「策謀の結末」は紛失したとされていたが、その後、音源が見つかり、2010年に小池版が放送され話題となった。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
ジョー・デブリン・・・クライブ・レビル(納谷悟朗
ケイト・・・ジャネット・ノーラン(中村たつ)
ジョージ・・・バーナード・ベーレンス(仁内達之)
ポーリー・・・アルバート・ポールセン(灰地順
ケリー・・・マイケル・ホートン(西岡徳美)


演出
レオ・ペン


脚本
ハワード・バーク(※原案パット・ロビンソン)

 

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