感想:アニメ「RErideD(リライデッド)-刻越えのデリダ-」第12話(最終回)「総ては在るべき場所へ」:スタッフが素材を扱いきれていない……

RErideD 刻越えのデリダ 上 (角川スニーカー文庫)

TVアニメ「RErideD」公式サイト http://rerided.com/
放送 BS11。全12話。

【※以下ネタバレ】
 

第12話(最終回) 『第十二話 総ては在るべき場所へ』

 

あらすじ

 デリダとユーリィが電波望遠鏡の地下室の扉を開くと、そこは10年前のマージュの自宅の部屋が再現され、カプセルの中でマージュが眠っていた。デリダは部屋の中にタイムライドを機械的に実現する装置が有ることに気が付く。同時に、マージュが自身に残したビデオメッセージで、マージュのタイムライドは成果を上げていなかったことも解る。タイムライドには鮮明な記憶が必要で、当時幼く、また当時から10年歳を取ったマージュにはタイムライドは難しかった。

 タイムライドを成功させる可能性が有るのは、10年間冷凍睡眠で眠っており、当時の事を鮮明に思い出せるデリダだけだった。マージュはデリダがタイムライドで過去を変える可能性に賭け、デリダをひそかに支援していた。デリダは自分のタイムライドはマージュが開発したここの機械で成功していたこと、本来ならタイムライドをするたびに自身の記憶を消費してしまうが、デリダの身代わりにとしてマージュの記憶が失われていた事、そもそもデリダは10年前に死んでいたはずだったが別の世界のマージュのタイムライド(ちょいちょいでてきた謎の少女「アンジュ」)に命を救われていたこと、を知る。

 デリダは歴史を変えるため、タイムライドするべき時をついに確信し、その時に飛ぶ。それは10年前マージュからタイムライドの研究を誘われた時、それを断ったまさにその時だった。ここで研究に協力すると答えたことで、全ての事が根本から変わり、ネイサン(マージュの父)は死なず、DZのバグを利用して戦争に投入しようとした会社の幹部たちは逮捕され、戦争は起きなかった。

 最後、別の歴史をたどった平和な世界で、成長したマージュとデリダが仲良くしていて、その他のキャラも幸せそうにしているシーンで〆。


脚本:古怒田健志  絵コンテ:祝浩司/佐藤卓哉  演出:祝浩司  総作画監督:田中彩  作画監督:田中彩/柳孝相/池谷祥明/飯飼一幸  美術監督:春日美波

感想

 うん、まあ、きちんと伏線も回収して、話的に破たんもしてなくて、上手く収めたとは言えますが……、何分小粒すぎて、なんでこんな企画やっちゃったんだろうという感じしかしない……、本当に地味な作品でした。悪くは無かったんですけどね……


総括

 評価は△(もっと頑張りましょう)。

 見せ方によっては感動巨編になる可能性も無くも無かったのですが、結果的には凄く地味で見どころの無い作品になってしまっていて、なんか凄く惜しい作品でした……


 2050年。リビルド社の開発したロボット「DZ(ディジィ)」は、社会に不可欠な存在となっていた。リビルド社の技術者デリダは同僚のネイサンと共にディジィに危険なバグがあることを突き止めるが、会社の幹部によって命を狙われる。幹部たちはDZを戦争に投入しており、不都合な事実を隠蔽するつもりだった。逃亡したデリダは偶然に冷凍睡眠設備で10年間眠りにつくことになってしまう。そしてようやく目覚めた2060年。世界は戦争で荒廃しきっていた……


 簡単に言えばSF時間改変物で、設定的には今時珍しい本格風味のSF物だったのですが、どうにもスタッフの手に余る題材を扱ってしまったみたいで、素材を扱いきれていませんでした。

 大手会社の社員が会社の秘密を知ってしまって上司に狙われるとかいう冒頭からからして陳腐だし、デリダやネイサンがロボット技術者のくせに、全然つながりの無い時間跳躍も研究しているというのも唐突というか無理筋だし、第1話でデリダが偶然から意図しない冷凍睡眠を処置されてしまう、という展開も失笑物でした。

 そしてその後、戦争で荒廃した世界でどんなストーリーが展開されるのかと思ったら、ただひたすら行方不明のマージュを追いかけて町から町へとひたすら旅をするだけで、ほぼ中身無し。しかもその途中、デリダは時間移動能力(タイムライド)に目覚め、過去のどこかに心を凝らすとそこに精神が移動してその時の自分を操作できる、というオカルトじみた展開となってしまいます。まあ最後にはオカルトでなかったことが判明しますが……

 このアニメではメインヒロインは成長したマージュ(M・A・O)だと思っていたのですが、そのメインヒロインが12話の殆どで出てこないという、斬新と言うか、そりゃないぜというか、的展開でホントにビックリでした。そして延々とマージュの手掛かりを追い続けた挙句、最終回でようやくマージュに追いつき、今までデリダの前に出てきて来た謎の幽霊じみた少女がマージュだったとか、デリダがタイムライド出来た理由はマージュの支援のおかげ、とか、伏線が回収されるのですが、ちっとも感慨が無かったし……、もう少しシナリオがどうにかならなかったのかなと。

 また準ヒロインのユーリィが、デリダに、時間改変すればデリダが好きな記憶が無くなってしまうとかなんとかしおらしい事を訴えるのですが、これも定番というか独創性がさっぱり感じられなくて…… 最後に歴史を改変してメデタシメデタシで、幸せカップルになったデリダとマージュを見て、ユーリィが我知らず涙を流すという展開も、なんか今までにどこかで見たような一場面だったし、と、このアニメ独自の何かが殆ど見受けられませんでした。

 デリダたちを追い回していた殺し屋のドナ(小林ゆう)が、昔はまともなDZの研究者だったのに、DZに感情を教えるという先進的な研究をしているうちに精神を病んで今のような状態になった、という衝撃の過去は、面白い事は面白かったのですが、本筋と何の関係も無かったし…… デリダに「何故DZなんか作ったんだ」と怒りをぶつける展開も、それは単なる八つ当たりでは、としか思えなかったし……

 まあオチは綺麗にまとまりましたけど、なんというか1990年代の前半くらいにちょいちょい有った安っぽいPCゲームのシナリオみたいな感じだったなぁと。あの安倍吉俊にキャラ原案を考えてもらったり、有名な声優が結構出演しているのに、それに見合う内容になっていなくて、ちょっとなんというか他人事ながらいたたまれない作品でした。うーん……
 
 

RErideD-刻越えのデリダ


「もしも《あの時》に戻れたら......」「《あの時》、こう言っていれば......」。決して戻ることのできない過去に対して、誰もが抱いたことのある後悔の気持ち。けれども、《あの時》に戻れたら、すべてが思い通りになるのだろうか? 理不尽な現実を突き付けられた主人公が、さまざまな人物と出会い、困難を乗り越えながら仲間とともに旅する物語。そのキーワードは、「時間跳躍(タイムライド)」。少女を救うことはできるのか? 世界に迫る悲劇を回避する道はあるのか? 「時間跳躍(タイムライド)」に秘められた真実とは──。


制作会社
ギークトイズ


スタッフ情報
【監督】佐藤卓哉
【キャラクター原案】安倍吉俊
【シリーズ構成】古怒田健志
【アニメーションキャラクターデザイン】渡辺浩二
【副監督】祝浩司
【デザインワークス・世界観設定】コレサワシゲユキ(デジタルノイズ)
美術監督】春日美波(草薙)
色彩設計佐藤直子
【撮影監督】松井伸哉(チップチューン
【3Dディレクター】濱村敏郎(ワイヤード)
【編集】後藤正浩(REAL-T)
【音楽】井内舞子
【音響監督】長崎行男
【音楽制作】KADOKAWA
【音響制作】HALF H・P STUDIO
【製作】RErideD partners



音楽
【OP】QUADRANGLE「PARADOX」
【ED】マージュ(CV:M・A・O)、ユーリィ(CV:茜屋日海夏)「トキノツバサ」


キャスト
デリダ・イヴェン:小野賢章
マージュ・ビルシュタインM・A・O
ユーリィ・ディートリヒ:茜屋日海夏
ヴィドー・フェルカー:佐々木啓夫
マユカ:本渡楓
グラハム:山本和臣
ドナ:小林ゆう
ネイサン・ビルシュタイン櫻井孝宏
ハンス・アンドレイ:稲葉実
ジャキス・イヴェン:松田健一郎

 
TVアニメ「 RErideD-刻越えのデリダ- 」オープニングテーマ「 PARADOX 」
TVアニメ「 RErideD-刻越えのデリダ- 」エンディングテーマ「 トキノツバサ 」
RErideD 刻越えのデリダ 下 (角川スニーカー文庫)