感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第25話「権力の墓穴」

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放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

第25話 権力の墓穴 A FRIEND IN DEED (第3シーズン(1973~1974)・第8話)

 

あらすじ

コロンボの上司でもある警察幹部ヘルプリンは、友人のヒューが妻を殺害した際の偽装工作に協力。事件を、常習の宝石泥棒の仕業という線で捜査を指揮する。その後、妻のばく大な資産目当てに自らも妻を殺害、ヘリコプターで自宅上空を夜間警備中、何者かに妻を殺害された悲劇の夫を演じる。ヒューも巻き込んだこの計画は見事成功したかに思えたが、コロンボは2つの殺人事件のわずかな矛盾点を見逃さなかった。

 
 ロサンゼルス市警の幹部マーク・ヘルプリンは、資産家の妻マーガレットが財産を慈善事業にばかりつぎ込み、自分に自由に使わせないことに不満を募らせていた。

 そんなある夜、ヘルプリンの隣家の主人ヒュー・コードウェルが、かねてから不仲だった妻ジャニスを誤って殺してしまったと慌てて相談してくる。ヘルプリンはヒューの家で偽装工作を行い、ここ最近近隣を荒らしている窃盗犯がジャニスを殺した、という様に見せかけたあと、警察に不審者を目撃したと連絡を入れる。

 ヘルプリンの通報で警察が駆け付けジャニスの死体を発見し、ヘルプリンの思惑通り、窃盗犯が居直りでジャニスを殺したという事になる。コロンボは、ジャニスの指紋が有るべき場所に無いことなど、細かい部分に疑問を抱くが、ヘルプリンは聞く耳を持たず、窃盗犯を探せと命令する。

 翌日。ヘルプリンは昼間自宅に戻ってマーガレットを浴室で溺死させた後、ヒューを脅して言うことを聞かせ、夜自分たち警察がパトロールをしている前でマーガレットの死体をブールに投げ込ませる。ヘルプリンは、昨日のジャニス殺しの犯人が、マーガレットに顔を見られたと思って殺害に及んだ、と主張する。

 しかしコロンボは、ジャニス殺しの犯人は窃盗犯ではなく別人であることを確信しており、さらにマーガレットが石鹸の混じった水で溺死していたことを知り、真犯人の見当をつける。コロンボは連続窃盗事件の犯人と思しき男・アーティに接触し、殺人の真犯人を捕らえるため協力してくれと頼む。

 やがてヒューにアーティから連絡が有り、妻殺しを通報されたくなければ金を払えと脅してくる。ヒューは困ってヘルプリンに相談し、ヘルプリンは警察の書類からアーティの住んでいるアパートの住所を調べると、保管したままだったジャニスの宝石をアーティのアパートに隠す。

 そのあと、ヘルプリンはヒューを強請って金をとろうとしたアーティを現行犯逮捕させ、コロンボたちを引き連れてアーティのアパートに乗り込む。そして部下たちに宝石を見つけさせ、アーティこそ殺人犯だったと言うが、次の瞬間コロンボにこの部屋はアーティではなくコロンボの部屋だと告げられて愕然とする。

 コロンボは、アーティに頼んでヒューを脅迫してもらったあと、ヘルプリンの行動を予測し、警察の書類のアーティの住所を自分の借りた部屋の物に書き換えていたのだった。この部屋をアーティの部屋と思っているのはヘルプリン以外におらず、宝石を隠せたのもヘルプリンしかあり得なかった。呆然としたままのヘルプリンを警官たちが連行していくシーンで〆。


感想

 評価は○。

 1時間40分枠の長尺版。クライマックスの痛快な大逆転劇が有名なエピソードで、このシーンの台詞のやり取りは何度見ても飽きることが無いくらい面白く、なかなかに好きな話である。

 この作品は、冒頭にいきなりある事件が起きるものの、それは主役となる犯人が起こしたものではなく、そしてメインとなる事件の前に早くもコロンボが登場して捜査を開始し、その後でようやく本命の犯人が殺人を犯す、という、いつものコロンボ作品とは構成が異なるトリッキーな展開となっている。実に珍しい作品である。


 ただし、事件の起こり方は変則的では有るものの、コロンボの捜査自体は王道で、事件の細かい矛盾点を次々と見つけ出し、徐々にそして確実に事件の真相に迫っていく、というコロンボの醍醐味が十分に堪能できる作品となっている。

 事件の矛盾点・コロンボが違和感を抱いた点、は数え上げればきりが無いが、

・ジャニスのベッドの枕の下にナイトガウンが入れたままだった。この習慣は夫のヒューも知っている。
・ジャニスの部屋の衣装戸棚に彼女の指紋が無い。また電話機にも指紋が無い。
・ヘルプリンはいきなり殺人課のコロンボを指名して呼び寄せた。
・ジャニスは午後9時半に恋人の電話に出なかったのに、10時半の夫の電話に出ている
・窃盗犯はジャニスの指輪が偽物と解る鑑定眼を持ちながら、模造のネックレスなどは盗んでいる
・マーガレットは死んだとき昼間破れた服をそのまま着ていた
・マーガレットはプールに放り込まれた後、泳ごうとした形跡が無い
・マーガレットの死体の肺から石鹸が検出された
・マーガレット死亡直後、既に風呂は乾いていた

 といった点を次々と発見し、着実に真犯人に迫っていく展開が、コロンボファンにはたまらない物が有る。


 ヘルプリンはロサンゼルス市警の次長を務めており、テレビで記者会見を担当し、ジャニス殺害事件の総指揮を執るなど、警察組織内で相当の地位であることは間違いない。もっとも、どうやら叩きあげて昇進したのでは無く、現場を全く知らないまま今の地位に就いたのではないか、という印象を抱かせる。

 例えば、妻のマーガレットを殺害した際、解剖されれば肺から石鹸水が出てきて浴室で殺したとばれてしまう、という初歩的な事を意識していなかったようだし、また、窃盗犯のアーティに罪を擦り付けようとしたものの、そもそもアーティは殺人事件の際には強固なアリバイが有った、という事も考慮していなかったようである。正直に言えば穴だらけの計画で、これではいくら宝石が出てきても、アーティに罪をひっかぶせるのは難しいだろう。

 ついでに言うなら、何かというとコロンボに「報告書を提出せよ」とせっつくのも、書類ばかり扱っているだけで、現場の経験の無い事をうかがわせる発言と言える。


 こんな隙だらけのヘルプリンを逮捕するなら、マーガレットの検死結果だけで十分証拠になりそうな気がするが、コロンボは遥か上の階級の上司を捕まえるため、決定的な罠を仕掛けたのであろうか。ヘルプリンがアーティに「アホかいな、だって俺の部屋じゃねえぜ」と言われて「なんだと……?」とつぶやく所から始まり、コロンボがこの部屋の事をアーティの住所だと思っているのは一人だけ、と筋道立てて説明し、ヘルプリンがぐうの音も出ない、というクライマックスは痛快の一言に尽きる。数あるコロンボ作品の中でもトップクラスの幕切れの一つだろう。

 ちなみにこの結末のシーンで、コロンボ以外の刑事や警官たちは、ヘルプリンが殺人犯だという話に全く動揺した形跡がない。最初からコロンボが周囲に周到に根回ししたうえで、この家探しシーンに挑んだものと思われる。そう考えると、一人だけ事実を知らずに、アーティに殺人の罪をかぶせらせると張り切っていたヘルプリンの姿は滑稽という他は無い。


 サブタイトルの原題「A FRIEND IN DEED」の「DEED」とは「行動、証書」といった意味で、正直言ってタイトルの意味がさっぱり理解できない。ちなみに英語の諺に「friend in need is a friend indeed」(まさかの時の友こそ真の友)という物が有るのだが、この諺の一種の洒落のようなものなのだろうか?


備考

 本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第14位にランキングされた。
 
 

#25 権力の墓穴 A FRIEND IN DEED
日本初回放送:1974年


コロンボの“上司”が犯人という、大胆な設定と緻密な構成で、コロンボファンをうならせた作品。クライマックスに向かう1シーンに、コロンボが犯行を暴く見事な伏線が隠されている。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
マーク・ヘルプリン・・・リチャード・カイリー(北村和夫
マーガレット・・・ローズマリー・マーフィー(白坂道子)
ヒュー・・・マイケル・マクガイア(山本勝)
アーティ・・・バル・アベリー(金井大)


演出
ベン・ギャザラ


脚本
ピーター・S・フィッシャー

 

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