感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第13話「ロンドンの傘」

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放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第13話 ロンドンの傘 DAGGER OF THE MIND (第2シーズン(1972~1973)・第4話)

 

あらすじ

落ち目の俳優であるニックとリリアン夫妻は、プロデューサーのサー・ロジャーをだまして舞台劇「マクベス」主演の座を手に入れた。それを知ったサー・ロジャーは初日前夜に二人の楽屋で怒りをあらわにする。もみあいの末、彼を殺してしまった二人は、遺体を彼の屋敷へ運び、階段から落ちたように偽装した。地元警察は事故と判断するが、ロンドン警視庁へ視察に訪れていたコロンボは疑問を持つ。

 
 イギリス・ロンドン。落ち目の俳優夫妻ニコラス・フレイム(ニック)とリリアン・スタンホープ(リリー)は、仕事を得るため、夫公認でリリーが大物プロデューサーのサー・ロジャー・ハビシャムに色仕掛けを行い、その結果二人とも舞台劇「マクベス」のメインの座を手に入れていた。

 しかし、公演初日の前夜、騙されていたことに気が付いたサー・ロジャーがリリーの楽屋に現れ、劇を中止し、ニックとリリーは業界から追放すると言い出す。ニックとサー・ロジャーはもみ合いになり、止めようとしてリリーが化粧品の瓶を投げつけたところ、瓶がサー・ロジャーの頭を直撃しサー・ロジャーは死んでしまった。ニックとリリーは死体をサー・ロジャーの屋敷に運び、夜中に階段から転げ落ちて死んだように偽装する。

 翌日。コロンボロンドン警視庁の視察のためイギリスにやって来た。出迎えた犯罪捜査局刑事部長のダークは遠縁のサー・ロジャーが事故で死んだというので弔問のためサー・ロジャーの屋敷を訪問することになり、コロンボも同行する。しかしコロンボは、屋敷内でサー・ロジャーが死んだとき読書中だったらしいのに正装していたこと、また高価な本なのに背が痛む伏せるような置き方をしていた事、から、単純な事故死では無さそうだと助言する。そして警察がサー・ロジャーの死体を解剖したところ、明らかに死後に動かした形跡が有ったため、改めて殺人事件として捜査することが決まる。

 マクベスの初日の公演は大成功で、ニックとリリーの演技は大絶賛される。ところが劇場から帰宅しようとしたニックは、楽屋番のジョーがサー・ロジャーの傘を持っていることに気が付く。ニックたちは前日に楽屋でサー・ロジャーの傘をジョーが取り違えて持って行った事に気が付き、慌ててジョーの傘を盗み、すぐにサー・ロジャーの屋敷にもっていってジョーの傘と取り換えようとする。ところがサー・ロジャーの遺品はロンドンのろう人形館に送られていたため、二人はロンドンに取って返し、傘をすり替える。

 コロンボはジョーと出会い、傘の紛失話を聞き、真相を正しく推測し、やはりサー・ロジャー邸からろう人形館と往復するが、傘は既にすり替えられた後だった。コロンボはサー・ロジャーの執事タナーに誰かが傘について聞きに来なかったかと尋ねるが、タナーは誰もいないと嘘をつく。

 翌日。ニックとリリーは新聞でマクベスが大絶賛されていたことに歓喜していたが、そこにタナーが現れ、傘の事を黙っている代わりに自分を雇えと暗に脅迫する。ニックとリリーはその場は了承したふりをして、タナーを自殺に見せかけて殺す。

 警察は、サー・ロジャーの事件は結局タナーによる犯行、という結論に落ち着いていたが、コロンボは腑に落ちないことが多すぎて納得できない。そしてあることに気が付き、ろう人形館にニック&リリー、ダークたちを呼び集める。そして、もしサー・ロジャーが死んだ夜にリリーの楽屋にいたとしたら、リリーの壊れたネックレスの玉が傘に入っているかもしれないという。そしてサー・ロジャーのろう人形が持っていた傘を開くと、推測通り中からネックレスの玉が転がり出してくる。それを見てニックは錯乱し、リリーは狼狽して自白する。

 最後、コロンボはダークに、自分が傘の中にネックレスの玉を指ではじき入れたことを示唆するラストで〆。

感想

 評価は○(いまいち)。 

 コロンボがイギリス・ロンドンに視察に出かけた際に殺人事件の捜査に関わるという特別編。ロンドンの観光名所が出てくることで有名だが、作品的な面白さは今一つというところだった。


 このエピソードは、ロンドンロケを手始めとして、他の作品と雰囲気的にもストーリー的にも異なるところが多いが、それがプラスに働いておらず、どうにも不満を感じずにはいられなかった。

 まず第一はコロンボの立場で、今回はロンドン警視庁に視察に来ているお客という立場のため、自分から積極的に事件に関わることができない。コロンボがサー・ロジャーの屋敷を軽く見て回っただけで、すぐに不審な点をいくつも見つけ出すところなどはいつも通りだったが、あくまで客なので、その事実をもとに容疑者にグイグイと迫っていくようなことは出来ず、あくまでイギリスの警察への助言役にとどまるしか無かったのが、どうにももどかしかった。

 第二が中盤の「傘」を巡る展開で、ニックが楽屋番のジョーがサー・ロジャーの傘を間違えて持ち出していることを知り、深夜にパブからサー・ロジャーの屋敷、さらにろう人形館の倉庫、と妻と共に右往左往する。普通なら殺人の証拠の隠滅という事で緊迫感の有るシーンの筈だが、気心の知れた妻とのコンビで行動しているため、ただのドタバタ劇にしか見えず、緊張感の欠片も無かった。

 とどめがラストシーンで、コロンボはネックレスの玉をサー・ロジャーの傘に放り込むことで、ニック&リリーを自白に追い込む。コロンボが犯人を捕らえるためこの手の罠を仕掛けることは多々あるが、あくまで「犯人にボロを出させる」方向なのに対し、今回はもはや「証拠の捏造」であり、やり過ぎとしか言いようがない。たまたまニックたちが犯人だったから結果オーライとなったが、全く無実の人間を陥れる可能性もあったわけで、この結末は本当に釈然としない。

 ついでに言うなら、コロンボが視察の合間に各地の有名観光スポットを見て回るシーンが延々描かれるが、はっきり言って本筋と何の関係も無く時間の無駄遣い感しか無かった。

 本エピソードはシナリオはジャクソン・ギリスが書いているが、原案担当はコロンボの生みの親「リチャード・レビンソン」と「ウィリアム・リンク」が担当している。この二人が原案で、それでこの程度の内容だったのかと思うと失望感が物凄かった。


 この作品では、シリーズには珍しく犯人が単独犯ではなく、夫婦二人の共犯となっている。またシリーズの他作品では複数犯の場合でも主と従の関係がはっきりしていて、途中で主犯の方がもう一方を口封じしたりすることが多いが、本作品では夫婦が対等の立場で、最後まで共犯関係を維持していた、というのも珍しいパターンだった。というか、夫婦のかけ合いなどは殺人犯のそれではなく、何かコントのようなおかしみすらあり、そのあたりもコロンボ物らしくなかった感が強い。

 ニックを演じたリチャード・ベースハートはテレビドラマ「原子力潜水艦シービュー号」のネルソン提督役でおなじみ。リリー役のオナー・ブラックマンは、007映画「ゴールドフィンガー」のボンドガール役で世界的に超有名である。リリアンの声は、これまた有名な女優・岸田今日子が吹き替えている。

 なお、この作品では小池朝雄氏のコロンボの声が物凄く枯れていて、悪い意味で印象深い。小池氏はアフレコ時には風邪でもひいていたのだろうか。


 今回の作品のタイトルにもなった、事件のキーアイテムとなる「傘」は、「サー・ロジャーがレディ・アスターからもらった」云々と説明される。さて、その『レディ・アスター』とは何者なのか調べてみたところ、「ナンシー・アスター」(1879~1964)という人物で、アメリカで生まれ、イギリスの貴族と結婚し、1919年にイギリス初の国会議員となった人物、とのことで、イギリスでは(そして多分アメリカでも)一般常識レベルの有名人と思われる。


 サブタイトルの原題「DAGGER OF THE MIND」は、これが作品内容と何の関係が有るのかと首をひねったが、どうやら劇中で演じられたシェークスピア劇「マクベス」の中で使われる有名な台詞であるらしい。もっともシェークスピアマニアでないと通じないので、日本語タイトルを「ロンドンの傘」したのは妥当なところだろう。


 と、本エピソードは色々とウンチクを語れる要素は多いが、作品としてはもう一つ、という評価である。


備考

 放送時間:1時間38分。

 本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第7位にランキングされた。
 
 

#13 ロンドンの傘 DAGGER OF THE MIND
日本初回放送:1973年


コロンボ』初の海外ロケ作品。バッキンガム宮殿にタワーブリッジ、ビックベンなどロンドンおなじみの風景が登場。オナー・ブラックマンやジョン・ウィリアムズ、ウィルフリッド・ハイド=ホワイトなどイギリスの俳優陣が顔をそろえている。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
リリアン・スタンホープ・・・オナー・ブラックマン(岸田今日子
ニコラス・フレイム・・・リチャード・ベースハート(高橋昌也)
タナー・・・ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(松村彦次郎)
ダーク・・・バーナード・フォックス(西田昭市)
サー・ロジャー・・・ジョン・ウィリアムズ辻村真人


演出
リチャード・クワイン


脚本
ジャクソン・ギリス


原案
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク

 

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