感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第6話「二枚のドガの絵」


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放送開始50周年 刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第6話 二枚のドガの絵 SUITABLE FOR FRAMING (第1シーズン(1971~1972)・第4話)

 

あらすじ

美術評論家のデイルは、ある夜、世界屈指の絵画コレクションを所有する叔父を射殺する。遺体に電気毛布をかけ、部屋を荒らし、犯行に使った拳銃と2枚の小さなドガの絵を、共犯で愛人の画学生に渡す。その後デイルは、アリバイ作りのため画廊のパーティーに出席。現場に残った愛人も、ある工作をして裏口から走り去る。コロンボは盗まれた絵から、ある疑いを持つ。

 
 売れっ子美術評論家デイル・キングストンは、世界的名画コレクションを持つ叔父マシューズを射殺すると、遺体に電気毛布をかけてから、コレクションの中でも最も高価な二枚のドガパステル画を確保する。そして共犯者の美大生トレーシー・オコーナーに後を引き継いで、自分はアリバイ作りのため現場を離れる。トレーシーは巡回中の警備員が来ると、電気毛布を片付け、わざと聞こえるように発砲してから、絵を持って逃走する。

 すぐに警察が駆け付け捜査を開始するが、発砲時刻と、死体がまだ温かかったことから、事件は午後11時頃に発生したと考える。駆け付けてきたデイルは、ドガの絵が盗まれていると大騒ぎする。

 コロンボは現場の状況から、犯人が最初あまり価値のない作品を盗もうとしていて、何故か途中で突然目標を最も高価なドガの絵に変更したように見える事に疑問を感じる。また犯人は裏口のドアをこじ開けて侵入したように見えるが、にも関わらず警報機は鳴っていなかった。

 コロンボは、デイルが犯行時刻に訪問していたという画廊を調べるが、デイルが不必要なまでに他人に現在時刻を確認していたことを知る。またデイルはその画廊に作品を展示していた画家について才能が無いとこき下ろしており、何故わざわざそんな相手のところまで訪問していたのかも引っかかる。

 デイルは人目のない所でトレーシーと会い、ドガの絵を受け取るが、すぐに口封じのために撲殺し、さらに車の事故に見せかけるため車ごと崖から突き落とす。アパートに帰宅したデイルは、部屋の中でコロンボが居眠りしているのを見て激怒する。そして持ち帰ったドガの絵を見られそうになり、慌てて追い払う。

 やかでマシューズの遺言状が公開されるが、マシューズの財産のほぼすべてである絵画コレクションは離婚した元妻のエドナに渡されることになっていた。デイルはコロンボに、自分は以前から遺言の内容を知っていたといい、絵画コレクションが手に入らないのに叔父を殺すはずが無いのだから、コロンボが自分を犯人扱いするのは大間違いだと怒鳴り散らす。

 コロンボエドナと会い、エドナは絵画コレクションを自分のものにするつもりはなく、生前のマシューズと相談していた通り、美術館や学校などに寄付する計画を立てている事を明かす。

 やがてエドナの家の近くで凶器の銃や絵画を包んでいた包み紙が見つかった。デイルはコロンボエドナが怪しいから捕まえろとそれとなく要求するが、コロンボはこれは偽装工作でエドナは完全にシロだから全く疑っていないという。

 焦ったデイルは、弁護士に対し、エドナが完全に潔白であることを証明するため警察に自宅を調べさせるように持ち掛ける。そして警察到着前にこっそりドガの絵をエドナの家に隠す。やがて警察が到着し、デイルの目論見通り絵が見つかったため、デイルは大げさにエドナが犯人だったのかと騒ぎ立てる。

 ところがコロンボはデイルが犯人だと言い出す。もし遺産の被相続人が遺産狙いで殺人を犯せば相続の権利は失われる。つまりもしエドナがマシューズ殺しの犯人ならば、エドナがもらうはずだった遺産は全てデイルの物になる。デイルはそれを狙って一連の犯行を行ったのだと推理を述べる。

 デイルは証拠が無いとシラを切るが、コロンボドガの絵に指紋が付いているので、デイルの犯行を立証できるという。その指紋とはデイルの物ではなくコロンボの指紋だった。コロンボがデイルのアパートを訪ねた時に何かの絵に触って指紋を付けた。その時しかドガの絵にコロンボの指紋が付く機会は無かった。慌てたデイルは、コロンボが今こっそり指紋を付けたのだと言い逃れようとするが、コロンボが両手に手袋をはめているのを見て絶句する。


感想

 評価は△(ぎりぎり)。

 シリーズ初期の作品らしいギスギスした雰囲気の漂う話で、見ていて心理的に抵抗が物凄く、個人的な評価は極めて低いエピソード。


 ミステリーとしては、コロンボが犯人が犯した殆どミスともいえないような些細な事を目ざとく発見し、そこから犯人に迫っていくという大筋はまずまず良く出来ている。また犯人デイルは、隙のない巧みな犯行計画を実施した上、口封じのため共犯者も追加で殺してしまうなど、犯人らしさ(?)も申し分ない。


 ということでドラマとしての出来は悪くは無いのだろうが、しかし、デイルのキャラクターがとにかく不愉快過ぎて、視聴意欲を維持するのには苦労させられた。


 デイルという人物はとにかく傲慢で、ありとあらゆる他人を見下しており、口を開けば皮肉か人をこき下ろすような発言しかしない。コロンボをあからさまに無能と決めつけ、本人の目の前でその事を隠そうともしないし、登場する画家たちにたいしても誹謗中傷しかしない。そして、さらに自分がもらっている仕事も「くだらない」云々と言い切り、あらゆるものを馬鹿にしている。

 それでいて、エドナの証言により、デイルが美術品業界で名前を売れたのは、叔父の金で美術品を買いあさったためだと判明する。つまりデイル自身は何かを極めたような人物ですらない。それでいてこの大物気取りである。

 という事で、犯人の設定が不快すぎて、何度見ても作品に良い感情を持てない、コロンボでは数少ないエピソードである。オチが有名な作品だが、そのシーンもすぐに終わってしまうので、特にストレスが解消されるという事も無いので最後まで楽しみが無い。元々コロンボの初期作品(第1・第2シーズン作品)の大半は、個人的な評価が低いが、この作品もそんな中の一つである。


 サブタイトルの原題「SUITABLE FOR FRAMING」とは、翻訳すれば「額縁に収めるのに適している」という事になり、これだけ見るとあまり良いタイトルには見えない。ただし「FRAME」には「でっち上げる、陥れる」という意味もあるそうで、つまり劇中でデイルがエドナを陥れようとしたことを暗に意味しているとすれば、それなりに凝ったタイトルと言えよう。そして日本語サブタイトル「二枚のドガの絵」は、日本語の響きと言い、作品内容を絶妙に表している点と言い、絶品という他はない。


備考

 放送時間:1時間16分。


 本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第2位にランキングされた。
 
 

#6 二枚のドガの絵 SUITABLE FOR FRAMING
日本初回放送:1972年


「あっと驚く」結末に、シリーズのベストに選ぶファンも多いトリッキーな作品。デイル役のロス・マーティンは、ピーター・フォークと1965年の映画『グレートレース』で共演している。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
デイル・キングストン・・・ロス・マーティン(西沢利明
エドナ・・・キム・ハンター(関弘子)
シンプソン・・・ドン・アメチー八奈見乗児


演出
ハイ・アバーバック


脚本
ジャクソン・ギリス

 

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