【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」『三億円事件 解決せず 「昭和の死角」の謎・1968-75』

20世紀最大の謎 三億円事件 (別冊宝島 1574 ノンフィクション)

ダークサイドミステリー NHK https://www4.nhk.or.jp/darkside/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

【※以下ネタバレ】
 

背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史…。こうした事件の数々を徹底再検証!


人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」を拡大スピンオフ!今度は人間や自然が生み出した謎と恐怖に満ちた事件・伝説の正体に、栗山千明志方あきこ中田譲治のダークなトライアングルで引き続き迫ります。

 

三億円事件 解決せず 「昭和の死角」の謎・1968-75 (2019年4月18日(木)放送)

 

内容

4月18日木曜
NHKBSプレミアム 午後9時00分~ 午後10時00分
ダークサイドミステリー「三億円事件 解決せず“昭和の死角”の謎1968-75」


昭和!現金史上最高額!映画のような手口!そして未解決!発生から50年、いまだ話題となる三億円事件。なぜ犯人は捕まらなかった?懐かしい映像で描く昭和40年代秘話。


「この車にダイナマイトが!避難しろ!」白バイ警官姿の犯人がまるで映画のような手口で、史上最高額の現金を奪った府中三億円事件(昭和43年)。なぜ犯人は捕まらなかったのか?実は警察の総力捜査の前には、知られざるワナが潜んでいた!有名な「犯人モンタージュ写真」がおちいった「記憶のワナ」とは?スゴ腕刑事たちの追及をはばんだ東京「昭和40年代の死角」とは?当時の懐かしい映像で描く、時効まで7年間の昭和秘話。


【ナビゲーター】栗山千明泉麻人,小川泰平,【語り】中田譲治,【アナウンサー】片山千恵子

 
 今回のテーマは「三億円事件


●事件の概要

 昭和43年(1968年)12月10日。東京都府中市。朝。日本信託銀行国分寺支店から、東芝府中工場の従業員のボーナス三億円(現在の価値で二十億円)を積み込んだ車が出発した。当時は口座振り込みは無く、ボーナスは現金手渡しだったためである。

 ところが走行中に白バイに乗った警官が現れて車を止めさせ、「支店長宅が爆破され、この車にもダイナマイトが仕掛けられている」と告げる。実は4日前に支店長宅に脅迫状が届き、中には『現金300万円を払わないと家を爆破する』と書かれていた。この情報は一部の人間しか知らない極秘事項だったため、銀行員は相手を警官と信じ込んだ。

 やがて警官は車の下にダイナマイトがあると叫び、ダイナマイトを外すと車を運転して走り去った。最初銀行員たちは警官がダイナマイトから車を救うために走り去ったのだと考えていたが、やがてその『ダイナマイト』がただの発煙筒だと気が付く。しかも「白バイ」もよく見ると偽物だった。

 銀行員たちは慌てて支店に電話し、支店から警察に連絡が行き、警察は大包囲網を敷いて盗まれた車を探したが、全く見つからない。やがて車は現場から数百メートルの場所で乗り捨てられているのが見つかり、犯人はそこから別の車で逃走したと推測された。犯人は見事に包囲網をすり抜けてしまったのである。



モンタージュ写真の罠

 警察は銀行員の証言をもとに犯人のモンタージュ写真を作り、それを元に情報を募った。すぐさますさまじい数の情報が寄せられたが、情報が多すぎてパンク状態になってしまう。しかも捜査員が情報を元に捜査しても全て空振りだった。事件から3年後には、警察はもうモンタージュ写真はあてにしないという一種の敗北宣言をしている。

 そもそも銀行員たちは、警察から「犯人に似ている顔を見つけてくれ」と膨大な数の顔写真を見せられて、もう訳が分からなくなっていたという。また目撃者の記憶というのは意外と頼りにならない。「言語隠蔽効果」というものがあり、例えば「犯人は目が大きかった」と言葉にすることで、自分の知っている目の大きい人の情報で記憶が塗り替えられてしまい、どんどん元の情報から離れて行ってしまうことが有るのである。



●大量生産・大量消費の罠

 事件から四か月後。現場から四キロの場所・団地の駐車場に犯人が逃走に使った車が乗り捨てられているのが見つかった。車はシートをかけられ、現金が入っていたジュラルミンケースが残されていた。しかし当時乗り捨て現場の駐車場があった多摩地区は開発で猛烈に人口が増加中で、他人の事を気にする事もなくなっており、犯人を目撃した者はいなかった。

 ここにきて、警察は事件解決のため、捜査一課のエース級刑事で「捜査の神様」とまで言われた名刑事・平塚八兵衛(ひらつか・はちべえ)を投入した。平塚は戦後最大の誘拐事件と呼ばれた「吉展ちゃん事件」(昭和38年(1963年))を解決に導くなどの実績を持っていた。

 平塚は、あいまいさが避けられない目撃証言などは頼りにせず、徹底的に残された証拠にこだわった。三億円事件の犯人が残した遺留品は実に124点にもおよび、それらを追えば犯人逮捕は容易だと思われた。しかし残されたものは全て大量生産されて流通した物で、刑事たちが購入者を全て調べつくすのは不可能であり、犯人にたどり着くことは出来なかった。

 しかし、そんな中でも偽白バイに積まれていた「トランジスターメガホン」(トラメガ)に、ある手掛かりが残されていた。塗料で白に塗る際に何かの紙片が付着しており、粘り強い調査の結果、紙片はサンケイ新聞1968年12月6日朝刊の一部だと判明したのである。そして配達されたのは多摩地区だとも判明した。しかし新聞配達所に協力を依頼したものの、事件から時間が経ち過ぎ、既に犯行当時の配達の順路帳は破棄されてしまっていた。

 また白バイには指紋が八個残っていたものの、それを手作業で膨大な記録と照らし合わせるのは不可能だった。



●最後の年

 昭和50年(1975年)となり、時効までついに残り一年となった。3月には平塚も退職となった。警察は最後の猛スパートをかけ、証拠品を展示するという異例のことまで行って情報を求めた。世間でも再び事件の事が話題となるが、それは事件をテーマにした映画・レコード・Tシャツが作られたりするなど、面白おかしいネタとして消費する、という方向性でしか無かった。

 11月。警察は最後の賭けで、目星をつけたある人物を取り調べるものの、結局シロと判定せざるを得なかった。

 12月10日午前0時。時効が成立し、事件は迷宮入りした。



●その後

 事件から50年以上が過ぎ去り、ハイテクを利用して警察の捜査技術は格段に向上した。しかしモンタージュ写真は作成に時間がかかり過ぎ目撃者の記憶が薄れてしまうという理由から使われなくなり、代わって「似顔絵」が使われるようになっている。似顔絵は紙とペンさえあればすぐに描けるので、目撃者の記憶が鮮明なうちに情報を引き出せるからである。平成12年に「似顔絵捜査官」が設立され、今では全国に6000人の捜査官がいるという。三億円事件の教訓である。


感想

 今回は、昭和世代には強烈なインパクトのある「三億円事件」ネタです。時効前の時期(1968~1975)には、当時の子供向け本でも「謎の怪事件」みたいに取り上げられており、ジュニアチャンピオンコースの「あの事件を追え」とか、推理クイズ本とかで事件の詳細を読んだのを思い出します。つい最近も「真犯人による告白」を謳った小説「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」なんてものが発売されていましたよね。


 今回はまず事件の詳細をレトロ調の映像による再現ドラマで見せた後、警察がどう捜査したのか、また当時の社会はどんな雰囲気だったのか、を見せていくなど、なかなかに楽しめる内容でした。

 まあモンタージュ写真の一件はちょっとアレっと思ったのですげどね。私が読んだ本(怪しげなコンビニ売り本ですが(笑))によると、

『警察は最初から事件の犯人はとある若者だと決めつけており、モンタージュ写真もその人物を想定して作ってみたら、あとからその人物が完全にシロであることが判明。しかし、そのあとで「あの写真は似てません」とか言っても、すでにあまりに有名になり過ぎていて取り返しがつかなかった』

云々。真相はどうなんでしょうかね。


 まあ昭和40~50年代という超懐かしい時期を振り返れた、という意味でもなかかな楽しい回でした。
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 

出演者
栗山千明 (くりやま ちあき)
BIRTHDAY 1984年10月10日
BLOOD TYPE A型


ゲストトーク司会: 片山千恵子アナウンサー


テーマ曲: 志方あきこ
オープニング曲“Arcadiaアルカディア)”
エンディング曲“Leyre(レイレ)”
アルバム名/ “Turaida(トゥライダ)”


語り: 中田譲治(声優、俳優、ナレーター)
代表作 『ゴールデンカムイ』(土方歳三)、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(タンクジョウ)、『宝石の国』(金剛先生)、『巌窟王』(モンテ・クリスト伯爵)、『ケロロ軍曹』(ギロロ伍長)、『HELLSING』(アーカード)、『Fateシリーズ』(言峰綺礼

 
 
20世紀最大の謎 三億円事件 (宝島SUGOI文庫)