感想:アニメ「どろろ」第24話(最終回)「どろろと百鬼丸の巻」:手塚古典漫画を現代風に蘇らせた秀作

ねんどろいど どろろ 百鬼丸 ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

TVアニメ「どろろ」公式サイト https://dororo-anime.com/
放送 BS11。全24話。

【※以下ネタバレ】
 

第24話(最終回) どろろと百鬼丸の巻 (2019年6月24日(月)深夜放送)

 

あらすじ

 百鬼丸と多宝丸は炎上する醍醐の城の中で死闘を続け、百鬼丸は遂に多宝丸に勝つものの、とどめを刺そうとはしなかった。多宝丸は遂に負けを認めるものの、その途端最後の鬼神が多宝丸を操ろうと力を及ぼしてくる。多宝丸は自分に与えられた百鬼丸の両眼をえぐり出すと、それを百鬼丸に返し、遂に百鬼丸は己の体全てを取り戻した。そして城内に現れた鬼神を倒す。

 炎上する城内には百鬼丸を心配して、どろろ、寿海、縫の方が集まった。寿海は百鬼丸に菩薩像を渡し、縫の方は百鬼丸どろろに任せて、自分は多宝丸と共に城内に残る。そして三人は炎の中に消えた。


 戦の後。どろろは醍醐の国の領民たちに、武士に頼らない生き方をするように説き、そのための武器として金を使えばいいと説明する。そしてとあるところに大金があるのでそれを使おうという。一方百鬼丸は地獄堂に行き、そこで醍醐景光と再会するものの、景光を殺そうとはせずそのまま別れる。

 どろろ百鬼丸が戻ってこないことを心配するが、琵琶丸は百鬼丸は人生をやり直すために旅に出たのだろうと理解を示す。どろろ百鬼丸がいつか戻ってくることを信じ、いつまでも待ち続けると誓う。


感想

 綺麗にまとまったラストで満足度高し。まあなんで寿海や縫の方が自決せねばならなかったのか、というのはちょっと引っかかりましたけど。

 ラストのラストでどろろの成長した姿がちらっと映ったのはサービスサービスぅという事かな。


総括

 評価は○(まずまず)。

 手塚治虫の漫画「どろろ」の50年ぶりのアニメ化作品。こんな古い作品を何故今アニメ化なのかといぶかりましたが、結果的には秀作に仕上がっていました。


 戦国時代。地方領主・醍醐景光は12体の魔神に対し、どんなものでも差し出す代わりに天下を取らせてくれと祈願する。その後、景光に息子が生まれるが、直後赤子は全身のほとんどの個所が失われた肉塊のような状態になり果てていた。景光は魔神が息子の体を奪っていったと悟り、自分の望みがかなうと歓喜する。そして赤子は船に乗せられて捨てられてしまった。それから16年後。少年どろろの前に全身が作り物の少年が現れて……


 原作漫画は1967~68年と実に50年も前に連載された作品。このような原作をアニメ化する場合、そのまま映像化すれば古すぎてマニアしかついて来れず、かといって、内容を今風に変えすぎれば「原作と違い過ぎ!」と叩かれる、とどちらに転んでも上手くいかない可能性が高い訳ですが……


 スタッフは、基本設定を原作とほぼ同じにしてエピソードを借りつつも、雰囲気としては手塚漫画の色は殆ど無い今風に仕上げて成功させていました。百鬼丸の生い立ち、どろろの過去、その他は原作ままですが、原作漫画が「妖怪退治モノ」だったのに対し、アニメは人間ドラマという面を強く打ち出していて、漫画とはずいぶん違う雰囲気にしていたのが印象的です。

 原作漫画の百鬼丸は体の事がありながら元気いっぱいキャラでしたが、アニメでは体のほとんどが作り物のため、最初は喋る事すらできず(初めて話すのは5~6話頃)、以後も戦闘ではめっぽう頼りになるものの、喋りは拙く何を考えているのかよく解らないキャラクターとして描写されます。そして体の部品を取り戻すたびに少しづつ普通の人間らしくなっていきます。

 これだけでも原作とは随分違いますが、また醍醐景光も単なる悪人ではなく、領土の発展や領民の暮らしの事を思う領主という事になっており、漫画版のような「己の欲のために子供を生贄にした極悪人」とは別人になっています。アニメ版の景光にすれば、国を発展させるためならだれか一人が犠牲になるのも仕方のないことで、鬼神を倒して約定を破綻させて、その結果国に被害をもたらす百鬼丸は、多数を不幸にしようとする悪でしか無い。

 という様に、アニメの物語は、漫画版の「魔神を倒して体を取り戻す怪奇モノ」ではなく「大を生かすため小を犠牲にする為政者 VS 犠牲にされた側、の対立劇」と全く別物になっており、おかげで2019年の視聴者でもしっかり堪能できる展開となっていました。大枠の設定を変えずに、テーマというか描写する物をガラッと変えてしまって、しかも破たんさせていないのは大したもんです。

 ストーリー構成を担当したのは、アニメ・特撮で実績十分の小林靖子氏。小林脚本は「主人公をひどい目に会わせる展開」には定評がありますが、本作は特に陰鬱な描写は無く、ごく普通の精神状態で視聴できました。百鬼丸の境遇からすると、もう毎回見るに堪えないような悲惨な展開があっても不思議では無かったわけですが、監督がマイルドに抑える方針だったのかな。なんにしても良かった良かった。


 ということで、視聴前の心配とは裏腹にしっかりした内容の作品で楽しませていただきました。


参考

どろろ|アニメ|手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL
https://tezukaosamu.net/jp/anime/37.html

tezukaosamu.net
※1969年放送の白黒アニメの紹介。全26話解説付き。
 
 

どろろ(新)


時は戦国。
醍醐の国の主である景光は、
ある寺のお堂で十二体の鬼神像に領土の繁栄を願い出た。
それと引き換えに生まれた景光の世継ぎは身体のあちこちが欠けており、
忌み子としてそのまま川に流され、捨てられてしまう。
時は流れ、鬼神は景光との約定を果たし、国には平安が訪れた。
そんなある日〝どろろ〟という幼い盗賊は、ある男に出会う。


それは、鬼か人か


両腕に刀を仕込む全身作り物の男〝百鬼丸〟は、
その見えない瞳で襲い来る化け物を見据えていた。



制作会社
MAPPA、手塚プロダクション


スタッフ情報
【原作】手塚治虫
【監督】古橋一浩
【シリーズ構成】小林靖子
【キャラクター原案】浅田弘幸
【キャラクターデザイン】岩瀧智
美術監督】藤野真里
色彩設計】三笠修
【撮影監督】大山佳久
【編集】武宮むつみ
【音楽】池頼広
【音響監督】小泉紀介
【音響効果】倉橋静男
【製作】ツインエンジン



音楽
【OP】女王蜂「火炎」
【ED】amazarashi「さよならごっこ


キャスト
百鬼丸:鈴木拡樹
どろろ鈴木梨央
琵琶丸:佐々木睦
醍醐景光内田直哉
多宝丸:千葉翔也
寿海:大塚明夫
縫の方:中村千絵
ナレーション:麦人

 
どろろ(1) (手塚治虫文庫全集)