【SF小説】感想「指令コード」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 565巻)(2018年3月20日発売)

指令コード (宇宙英雄ローダン・シリーズ565)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150121729
指令コード (宇宙英雄ローダン・シリーズ565) (日本語) 文庫 2018/3/20
クルト・マール (著), トーマス・ツィーグラー (著), 新朗 恵 (翻訳)
文庫: 267ページ
出版社: 早川書房 (2018/3/20)
発売日: 2018/3/20

【※以下ネタバレ】
 

ヴィシュナの命令で時間ダムを攻撃し、捕虜になったロボットたち。それらはプシオニカーらを"指令コード"の主君だと認識した!?


変節した女コスモクラートのヴィシュナがついに時間ダムの秘密を見抜き、ロボット種族のクロングとパルスフを使って地球を攻撃してきた。ツナミ艦隊の活躍でかろうじて難を逃れたものの、地球ではプシオニカーたちが原因不明の精神障害を負ってしまう。そんな精神障害者の数名が、なぜかクロングとパルスフに強い親近感をいだきはじめた。レジナルド・ブルはこの状況を利用してヴィシュナのたくらみを封じようと考える!

 

あらすじ

◇1129話 指令コード(クルト・マール)(訳者:新朗 恵)

 時間ダムが攻撃を受けたことで、プシオニカー数百人が精神ショックで入院するが、その内の数人は自分たちがシャット=アルマロングのロボットの友だと主張し始めた。さらに捕虜のロボットたちも、そのプシオニカーたちを「指令コード」を話す「コード保持者」と認めて服従し、自分たちの全情報を開示した。ブルとデイトンはプシオニカーと共にロボットたちの母船に乗り込み、ヴィシュナがとりつけた制御装置を破壊した。ロボットたちはプシオニカーに率いられて太陽系を立ち去った。(時期:不明。NGZ426年9月頃)

※初出キーワード=コード保持者、エネルゴフォーム



◇1130話 四恒星帝国の暴動(トーマス・ツィーグラー)(訳者:新朗 恵)

 M-82銀河の「四恒星帝国」に暮らす種族「ソールドック」は、セト=アポフィスを種族を導く超越存在として崇拝していた。しかし何故かセト=アポフィスと連絡が取れなくなったため、種族内で権力闘争が発生した挙句、内戦に突入していた。アルマダ工兵ショヴクロドンはシンクロドロームから逃走中、四恒星帝国の内情を知り、セト=アポフィスの使者を自称してソールドックに迎え入れられる。そして追跡してきたローダンたちを、セト=アポフィスとのコンタクトを妨害した犯人と糾弾し、ソールドックたちに捕えさせてしまった。(時期:不明:NGZ426年9月頃)

※初出キーワード=ソールドック種族、四恒星帝国、惑星ヴルッグ、惑星マルシェン、大いなる知覚、アラトゥル


あとがきにかえて

 福島県で開催されている、詩人・草野心平を偲ぶ祭り「天山まつり」に行った話。


感想

 前半。なんとも評価が難しいエピソード。ロボットたちの兵器で時間ダムが攻撃された結果、プシオニカーたちが精神を病んだ途端、ロボットたちの主人が話していた「指令コード」を話すようになったばかりか、ロボットたちの見分けがつくようになる、という謎展開。何故その攻撃がそういう影響をもたらしたのか、今回明確な説明が無かったし、多分今後も無いでしょうから、ご都合主義というのもおこがましい支離滅裂展開と言ってもいいのですが……

 しかし、理屈は通っていないにもかかわらず、プシオニカーたちにロボットが次々と平伏していくシーンとか、最終的にプシオニカーがロボットたちの君主として、主人を求めていたロボットたちに明るい未来へと導く結末とか、話としては無性に面白い。マールの力技で成立した、なんとも不思議な一作でした。

 ところでP14を読んで初めて気が付いたのですが、宇宙ハンザはなんと「一私企業」(!)だったのでした。今までは汎国家的な、現在で言うところの国連の様な組織だと思っていたのですが、実は第三勢力の頃の「ジェネラル・コスミック・カンパニー(GCC)」のような存在だったわけです。

 とすると、ペリー・ローダンは貿易会社の社長で、ハンザ・スポークスマンは重役、ハンザ・スペシャリストはただの社員、だったと……、そしてテラナーの政府のLFTが私企業とほぼ一体の関係って、それ問題なんじゃないでしょうか?


 後半。ツィーグラーのシリーズ二作目。とにかく用語が多すぎて頭が破裂しそうになりました。ちょっと張り切り過ぎというか、もう少し肩の力を抜いて執筆すればいいのに、と思いましたよ。

 ところで、このエピソードで、今まで全然活躍の機会の無かった《バジス》搭載宇宙戦艦「テーベ級」、の一隻《サンダーワード》がようやく活用されました。やはりテラの宇宙船としては、どこかの惑星に着陸してけん引ビームで脱出不能になる、とかいうトラブルに巻き込まれないと一人前とは言えませんよね。
 
 

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