【SF小説】感想「マークス対テラ」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 569巻)(2018年5月17日発売)

マークス対テラ (宇宙英雄ローダン・シリーズ569)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150121826
マークス対テラ (宇宙英雄ローダン・シリーズ569) (日本語) 文庫 2018/5/17
クルト・マール (著), 増田 久美子 (翻訳)
文庫: 255ページ
出版社: 早川書房 (2018/5/17)
発売日: 2018/5/17

【※以下ネタバレ】
 

未来から地球に到着したマークスのグレック336は、精神重視の考えに反発。時間ダムを支えるプシ・トラストを攻撃目標にした!


はるかな未来、アンドロメダ銀河に住むマークス種族は、その大半が肉体を捨てて"影マークス"と呼ばれる精神存在になっていた。肉体を持つ"原理主義者"はごくわずかとなり、進化をじゃまする存在として迫害されている。そんな原理主義者のグレク336が、時間ダムの影響でNGZ四二六年のテラへタイムスリップしてしまった。ヴィシュナの接触を受けてテラナーの敵となった原理主義者は、各地で破壊活動をはじめた!

 

あらすじ

◇1137話 マークス対テラ(クルト・マール)(訳者:増田 久美子)

 グレク336は地球各地でエネルギーを盗んだ後、チベットのプシオニカー施設「思考タンク」を襲撃し、エルンスト・エラートを誘拐した。ブルたちはテレパシー能力を持つプシオニカーに頼んでグレク336に話し合いを呼び掛けるが、グレク336は忌み嫌う精神力を使用されたことに怒り、テラニアを襲撃、ブル、ワリンジャー、プシオニカーを拉致して逃走した。(時期:NGZ426年10月20日~)

※初出キーワード=なし



◇1138話 プシオニカーの勝利(クルト・マール)(訳者:増田 久美子)

 ティフラーたちは、誘拐されたブルたちを救出するため大捜索を開始した。そしてプシオニカーのテレパシーを頼りに、南海の孤島に監禁されていたブルたちの救出に成功するが、グレク336は取り逃がしてしまった。(時期:不明。NGZ426年10月頃)

※初出キーワード=なし


あとがきにかえて

 作中で使用されている「ロボット三原則」を皮切りに、ロボットに関する色々な話。


感想

 前半エピソード … 異形のサイボーグ・グレク336が大活躍(?)する話。しかしグレク336を強大に描写するためか、逆にテラナーの方を下げて扱っており、なんともストレスが……、地球トップクラスの重要施設の一つ・プシオニカーの詰め所「思考タンク」が簡単に蹂躙された上、首都テラニアに乱入されて国家元首クラスの重要人物のブルやワリンジャーが拉致される、など、「強いテラナー」を知っている読者としては、あまりにもテラナー側の対応の酷さに目を覆いたくなりました。

 とはいえ面白い記述も有り、グレク336が盗んだエネルギーを貯蔵する方法が興味深かった。その手段は、海底の岩盤に大穴を二つ掘り、エネルギーで海水を水素と酸素に分解してそれぞれ穴に保存しておく、というもの。エネルギーが必要になれば、水素と酸素を化合させて熱エネルギーに戻す、というわけです。もちろんかなり無駄がありますが、バッテリーなどの気の利いた貯蔵方法が無い場合の策としてリアリティがあります。さすがロケット関係のエンジニアでもあったというマールならでは、というところでしょうか。


 後半エピソード … 前半エピソードからの直接の続きで、ブルたちの救出話。人質たちが、海中に放り込まれた物質転送機に飛び込んで逃走する、というのは、受け入れ側に膨大な海水が流れ込んで大パニックになるのでは……?

 P200で「(グレク336は)これまで亜光速で移動していた」と有りますが、これは「亜≪音≫速」の間違いなのでは……、衝撃波云々という記述がありますし、なにより地上で亜光速というのはちょっとあり得ない。日本語でわざわざ光速と音速を取り違えるというのも無さそうだし、やはり原著からの間違いか……?
 
 
 

550巻~600巻(「無限アルマダ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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