感想:小説「サム・ホーソーンの事件簿 VI」(エドワード・D・ホック)


 小説「サム・ホーソーンの事件簿 VI」(エドワード・D・ホック)の感想です。

-------------------------------------------------

■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4488201091/
サム・ホーソーンの事件簿VI (創元推理文庫) (文庫)
エドワード・D・ホック (著), 木村 二郎 (翻訳)
文庫: 416ページ
出版社: 東京創元社 (2009/11/30)
ISBN-10: 4488201091
ISBN-13: 978-4488201098
発売日: 2009/11/30

-------------------------------------------------
■内容

 推理小説。不可能犯罪物の連作短編集。アメリカの架空の田舎町ノースモントに住む医師サム・ホーソーンが、友人のレンズ保安官を助けて様々な怪事件を解決します(舞台となる時期は1941年3月〜1944年10月)。

 作者が2008年に亡くなった為、サム・ホーソーン最後の作品集となりました。

・収録作品
 「幽霊が出る病院の謎」
 「旅人の話の謎」
 「巨大ノスリの謎」
 「中断された降霊会の謎」
 「対立候補が持つ丸太小屋の謎」
 「黒修道院の謎」
 「秘密の通路の謎」
 「悪魔の果樹園の謎」
 「羊飼いの指輪の謎」
 「自殺者が好む別荘の謎」
 「夏の雪だるまの謎」
 「秘密の患者の謎」

-------------------------------------------------
■感想

 とにかく面白い。事件はいずれも不可能犯罪物(密室・人間消失・消えた凶器、等)ですが、アンフェアな物は一つも無く、必ず文章の中にさりげなく、しかししっかりと手がかりが描写されており、綿密に読み込めば必ず真相を解き明かす事が出来る作りになっています。それだけに正当派推理物のファンにはたまらない内容ですね。

 このシリーズは作品内で少しずつ時間が経過していきますが、第6巻の舞台となるのは1941年3月から1944年10月まで、と、ちょうど第二次大戦中に当たります。ノースモントはもちろん直接の戦火にはさらされませんでしたが、町から若者が徴兵されていったり、戦時債権の募集があったり、と銃後のアメリカで何が起きていたのか、という描写が随所に見られなかなかに興味深いです。

 収録作品はいずれもハズレ無しの傑作ばかりですが、一番気に入ったのは「羊飼いの指輪の謎」ですね。

『精神が錯乱した男が、いがみあっている隣家の主人を殺害すると予告した。しかも男は魔法の指輪で姿を消して殺しに行くという。保安官たちが警戒する中、本当に男はいきなり隣人の家に現われ殺人を犯した。魔法の指輪は実在するのか?』

 という内容。最後まで「これは魔法が実在するとしか思えない」と思わせる事件だけに、最後にサムが実に鮮やかに真相を解き明かすのがもうたまりませんでした。

 とにかく傑作です。正統派推理物が好きな人は買って絶対間違い無し、です。

-------------------------------------------------
■評価

(5段階評価の)5点。