感想:小説「ホックと13人の仲間たち」(1978年)(エドワード・D・ホック)


 小説「ホックと13人の仲間たち」(エドワード・D・ホック)の感想です。

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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/B000J8ROGQ/
ホックと13人の仲間たち (1978年) (世界ミステリシリーズ)
エドワード・D.ホック (著), 木村 二郎 (編集, 翻訳)
新書: 309ページ
出版社: 早川書房 (1978/01)
ASIN: B000J8ROGQ
発売日: 1978/01

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■データ(個人的補足)

 「サム・ホーソーン」「怪盗ニック」「サイモン・アーク」「レオポルド警部」等の名探偵で知られるホックの短編集。ホックが創造した探偵、怪盗、スパイ、詐欺師、etc、計13人の物語13編が収録されています。<収録作品>
01 シルヴァー湖の怪獣(Theft of the Silver Lake Serpent)(1970)
02 ストーリーヴィルのリッパー(The Ripper of Storyville)(1963)
03 ロリポップ警官(The Lollipop Cop)(1974)
04 技能ゲイム(Game of Skill)(1964)
05 有蓋橋事件(The Problem of Covered Bridge)(1974)
06 死者の村(The Village of the Dead)(1955)
07 第三の使者(The Case of the Third Apostle)(1973)
08 コムピューター警官(The Computer Cops)(1969)
09 ランド危機一髪(The Spy Whp Came to the Brink)(1965)
10 火のないところに(Where There's Smoke)(1964)
11 百万ドル宝石泥棒(Million-Dollar Jewel Caper)(1973)
12 危険な座(Siege Perilous)(1971)
13 孔雀天使教団(The People of the Peacock)(1965)

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■あらすじ

01 シルヴァー湖の怪獣(Theft of the Silver Lake Serpent)(1970)

 「怪盗ニック・ヴェルヴェット」物。ニックは3万ドルで、依頼者当人にしか価値のないものを盗む異色の怪盗。

 ニックが依頼人のホテル経営者から受けたのは「怪獣」を盗む事。商売敵のホテルの近くの湖で怪獣が出現して話題となり、商売あがったりなので、盗んできてほしいというのだが・・・

 怪獣の正体に二ヤリとさせられます。本書で一番面白かった。


02 ストーリーヴィルのリッパー(The Ripper of Storyville)(1963)

 「ベン・スノウ」物。ベン・スノウは西部開拓時代のガンマンで、ビリー・ザ・キッドに生き写しだというキャラ。

 ベン・スノウは、余命幾ばくも無い富豪から、家出して売春婦に堕ちた娘を連れ戻して欲しいと頼まれる。しかし彼女が住む町ストーリーヴィルには切り裂き魔(リッパー)が出没していて・・・

 読者が何がなんだか解らないうちに、スノウがスラスラ謎を解いてしまいます。血なまぐさい方向の話かと思いきや、実は正統派推理物でした。


03 ロリポップ警官(The Lollipop Cop)(1974)

 「ポール・タワー」物の1作目。ボールは妻と娘を事故で無くし、気遣う上司から、お菓子のロリポップ(キャンディー)などを持って小学校などを巡回する「ロリポップ警官」の仕事を与えられる。

 ポール・タワーが小学校でイジメを調べていたところ、殺人に巻き込まれ・・・

 容疑者が山の様に出てきて困惑させられている間に、タワーはあっさり謎を解いてしまいました。ちょっとヒントが少な目でした。


04 技能ゲイム(Game of Skill)(1964)

 「デイヴィッド・ヌーン神父」物の1作目。

 ある日、ヌーン神父の教会を爆破するという脅迫電話がかかってくる。神父は会話から犯人像を突き止めようとするが・・・

 推理物ではなくサスペンス物というべきエピソード。


05 有蓋橋事件(The Problem of Covered Bridge)(1974)

 「サム・ホーソーン医師」物の1作目。「サム・ホーソーンの事件簿I」にも収録されています。

 1922年の雪の日、有蓋橋に走りこんだはずの馬車が忽然と姿を消してしまい・・・

 いきなり人間消失物。サムの鮮やかな推理が披露されます。何度読んでも傑作。


06 死者の村(The Village of the Dead)(1955)

 「サイモン・アーク」物の1作目。「サイモン・アークの事件簿I」にも収録されています。

 ある孤立した村の住人73人全てが崖から飛び降りて死に・・・

 論理的な解決がありながら、何かしら不気味な余韻を残すお話です。


07 第三の使者(The Case of the Third Apostle)(1973)

 「インターポル」物の1作目。セバスチャン・ブルーとローラ・シャルムのコンビの冒険物。

 ある宗教団体がパリからイスタンブールに現金を持参した使者を送り出すものの、途中でことごとく消えてしまい・・・

 あまり謎解き要素は無し。冒険物の一種ですね。


08 コムピューター警官(The Computer Cops)(1969)

 「コムピューター検察局」物。SF推理物。21世紀初頭(本作は2006年)に設立されている対コムピューター犯罪専門組織「コムピューター検察局(CIB)」の局長カール・クレイダーと部下のアール・ジャジーンが活躍する。

 クレイダーは財界の大物から呼びつけられ、誰かが勝手に彼の機械で株式売買をしているので調査して欲しいと命令されるが・・・

 2011年の目で読むと爆笑の世界で、ロケット郵便とかヘリジェットとか月基地とか、レトロさがたまりませんが、SFとは言え謎解きはわりと論理的です。若者がオンライン株式売買をギャンブル代りにしている、とか、意外と当りの描写も有ります。


09 ランド危機一髪(The Spy Whp Came to the Brink)(1965)

 「ジェフリー・ランド」物。ランドはイギリス情報部の秘密伝達局(通称:ダブルC)の局長。

 ランドはあるフリーのスパイが政府施設から暗号書を盗み出そうとしている事を知るが・・・

 「問題が起きなかったことが問題」という不可思議な事件。ラストの解決は「なるほど!」と目からウロコでした。ちなみにランドは全然危機には陥りません。


10 火のないところに(Where There's Smoke)(1964)

 「私立探偵アル・ダーラン」物。ダーランは51歳で心臓の病のため探偵を辞めたがっている。

 ダーランは美術館の館長から、有名な美術品泥棒が町をうろついているので見張ってくれと依頼されるが・・・

 推理ではなくハードボイルド風エピソード。


11 百万ドル宝石泥棒(Million-Dollar Jewel Caper)(1973)

 「詐欺師ユリシーズ・S・バード」物の1作目。バードは悪党を騙す詐欺師。

 横領で大金を稼いだ男が、バードから財産を狙われていると知り、対策を講じるが・・・

 わりとオチが早く読めてしまうお話でした。


12 危険な座(Siege Perilous)(1971)

 「秘密諜報員ハリー・ポンダー」物。ハリーはアメリカのスパイ。

 中東某国でハリーが地下組織に誘拐される。組織はハリーと引き換えに逮捕された指導者たちの釈放を要求する。ハリーは殺される前に、指導者たちの誰がロシアのスパイなのかを突き止めねばならない。

 サスペンス物と思わせて実は正統派推理物。最後の謎解きの見事さには唸りました。


13 孔雀天使教団(The People of the Peacock)(1965)

 「レオポルド警視」物。警視は架空の地方都市の警察に勤務している。

 レオポルドは政府の情報部員からある依頼を受ける。この町に伝説的なスパイが潜伏して殺人を犯したので、正体を突き止めてほしいというのだが・・・

 「そんなことだろうと思っていたよ」いうオチでした。


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■感想

 推理物だけではないので、「論理パズル」集を期待するとちょっと物足りませんが、ホックの生んだ無数のキャラが楽しめる、という事でまずまずでした。

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■評価

(5段階評価の)5点。

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