感想:小説「こちら殺人課!―レオポルド警部の事件簿」(1981年)(エドワード・D・ホック)

こちら殺人課!―レオポルド警部の事件簿 (1981年) (講談社文庫)

 小説「こちら殺人課!―レオポルド警部の事件簿」(エドワード・D・ホック)の感想です。

■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/B000J7ZB7G/
こちら殺人課!―レオポルド警部の事件簿 (1981年) (講談社文庫)
E.D.ホック (著), 風見 潤 (編集, 翻訳)
文庫: 279ページ
出版社: 講談社 (1981/04)
ASIN: B000J7ZB7G
発売日: 1981/04

■データ(個人的補足)

 「サム・ホーソーン」「怪盗ニック」「サイモン・アーク」等の名探偵で知られるホックが創造した『レオポルド警部』の作品をまとめた日本独自の作品集。<収録作品>
01 サーカス (Circus)(1962)
02 港の死 (Death in the Harbor)(1962)
03 フリーチ事件 (The Freech Case)(1963)
04 錆びた薔薇 (The Rusty Rose)(1966)
05 ヴェルマが消えた (The Vanishing of Velma)(1969)
06 殺人パレード (The Murder Parade)(1969)
07 幽霊殺人 (Captain Leopold and the Ghost Killer)(1974)
08 不可能犯罪 (The Impossible Murder)(1976)


■内容

 主人公のレオポルド警部は架空の都市の殺人課に勤務する警官で、1957年にデビューしたとのこと。作風は、1960年代前半までは、いわゆる「警察小説」タイプの作品でしたが、1960年代後半からは「謎解き」タイプの作品に移行したようです。この本でも、見事に、前半4作品が警察小説タイプ、後半4作品が謎解き主体タイプ、となっています。


01 サーカス (Circus)(1962)

 サーカスを見に行く途中だった少年が絞殺死体で発見され・・・

 ただの警察小説。レオポルドの同僚が、適当に目星をつけた相手に暴力をふるって自白を強要したり、地方検事も冤罪でも何でもいいので適当に犯人をでっち上げようとしたり、と、ウンザリするような陰気な話。オチもなんだそりゃというところでガッカリの一言。


02 港の死 (Death in the Harbor)(1962)

 港で同一の銃による連続殺人が発生するが、被害者に共通点は無かった。犯人は殺人狂か? それとも目的の殺人を複数の事件に紛れ込ませようとしているのか?

 どちらかというと警察小説の範疇。謎解きも大したものでは有りませんが、唯一の手がかりの見せ方が上手かったです。


03 フリーチ事件 (The Freech Case)(1963)

 今は落ちぶれたレオポルドの友人は、強盗で一発逆転を狙うが・・・

 これもただの警察小説。長くて陰鬱な割に謎解き要素は殆ど無し。ガッカリ。


04 錆びた薔薇 (The Rusty Rose)(1966)

 3年前に殺された有名作家の事件は未だに犯人が捕まっていなかった。ところが被害者の娘に、ある男が犯人の手がかりを提供すると言い出し・・・

 どちらかというと警察小説の範疇。「何故殺したか」の動機のアイデアが面白い、というか面白いのはそこだけですが・・・


05 ヴェルマが消えた (The Vanishing of Velma)(1969)

 夜の遊園地で観覧車に乗った少女がそのまま消えてしまい・・・

 人間消失物。真相は言われてみれば簡単ですが、もろに盲点を付かれてしまいました。


06 殺人パレード (The Murder Parade)(1969)

 市の有力者であるデパート経営者に、パレード中に殺すという脅迫が届く。レオポルドたちは念のため警護するが・・・

 怪しげな人物がたっぷり登場して、誰も彼も怪しいように見えて混乱させられます。最後のレオポルドの解説で、犯人を特定する手がかりはちゃんと目の前に有ったことが示されて、やられたという気持ちになりました。


07 幽霊殺人 (Captain Leopold and the Ghost Killer)(1974)

 一人の男が妻を射殺して逃走し、同じ日に車の運転ミスで死亡した。しかし問題が有った。男は殺人の前に既に車の事故で死んでいたのだ。男は死んだ後に、幽霊となって妻を殺害したのか?

 複数の要素が絡み合って不可能犯罪(というか死者の犯罪)が発生しています。推理パズルとしての謎解きの醍醐味を堪能させてくれる逸品。


08 不可能犯罪 (The Impossible Murder)(1976)

 ラッシュで混雑する道路上の自動車内で、運転手が絞殺されていた。しかし犯人は車内には居らず、逃走も目撃されていなかった。被害者は死んだ後、車を運転していたというのだろうか?

 トリックがなんかムリがあるような・・・、見たら一発で解るのでは?


■感想

 前半4作品は正直ガッカリで、「レオポルド警部物ってこんな話ばっかりなのか・・・?」と失望していましたが、後半に入ると尻上りに「推理物」として面白くなっていって、残念感も薄らぎました。「殺人パレード」や「幽霊殺人」は「ホック的推理パズル」が好きな身としては堪能できました。

 まあ全編満足というわけではなかったのですが、レオポルド警部シリーズとはどんなもの?というところは十分に把握できる作品集でした。まずまず。

 それにしても、表紙絵の艶めかしさは一体どういうことだろう・・・、センス悪ぅ。


■評価

(5段階評価の)4点。