感想:小説「サイモン・アークの事件簿III」(2011年)(エドワード・D・ホック)


 小説「サイモン・アークの事件簿III」(エドワード・D・ホック)の感想です。

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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4488201113/
サイモン・アークの事件簿III (創元推理文庫) [文庫]
エドワード・D・ホック (著), 木村 二郎 (翻訳)
文庫: 316ページ
出版社: 東京創元社 (2011/12/21)
言語 日本語
ISBN-10: 4488201113
ISBN-13: 978-4488201111
発売日: 2011/12/21


http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488201111?mailmag
サイモン・アークの事件簿〈III〉 - エドワード・D・ホック/木村二郎 訳|東京創元社
判型:文庫判
ページ数:320ページ
初版:2011年12月22日
ISBN:978-4-488-20111-1

>悪魔と超自然現象にまみえるため、世界を渡り歩く謎の男サイモン・アーク。狂信的な信仰行為で知られる痛悔修道会の儀式の最中、多数の同輩がいる中で信者が刺殺された事件、呪いのナイフや女妖術師が引き起こしたとおぼしき殺人、警戒厳重な古城からのナチス戦犯の消失……いずれ劣らぬ怪奇な事件に、オカルト探偵が犀利な推理力で挑む8編を収録した、瞠目の第三短編集。解説=木村仁良/解説=鳥飼否宇

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■データ(個人的補足)

 「サム・ホーソーン」「怪盗ニック・ヴェルヴェット」「レオポルド警部」などの名探偵で知られるホックが創造した『オカルト探偵』サイモン・アークの作品をまとめた日本独自の第三作品集。前作「サイモン・アークの事件簿II」(2010年12月発売)から1年ぶりの新刊。<収録作品>
1「焼け死んだ魔女」(The Witch Is Dead)(1956年)
2「罪人に突き刺さった剣」(Sword for a Sinner)(1959年)
3「過去から飛んできたナイフ」(The Weapon out of the Past)(1980年)
4「海の美人妖術師」(The Sorceress of the Sea)(1980年)
5「ツェルファル城から消えた囚人」(Prisoner of Zerfall)(1985年)
6「黄泉の国への早道」(The Way Up to Hades)(1988年)
7「ヴァレンタインの娘たち」(The Virgins of Valentine)(1988年)
8「魂の取り立て人」(The Stalker of Souls)(1989年)

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■あらすじ

 サイモン・アークは、外見は70歳前後の老人で、宗教や超自然現象について豊富な知識を持つ神秘的な人物。作中では数十年が経過しても全く老いることがなく、おそらく不老不死で、年齢は1500歳とも2000歳とも言われています。彼は悪魔を探して戦う事を人生の目的としており、そのために超自然的な事件を求め、世界中を旅しています。サイモンとサイモンの友人で物語の語り手「わたし」は毎回不可思議な状況で発生した事件に遭遇しますが、周囲がその状況に幻惑される中、サイモンは常に論理的に真相を導き出します。


1「焼け死んだ魔女」(The Witch Is Dead)(1956年)

 ある女子大の学生たちが集団で奇病に冒された。それは自称魔女が学生たちにかけた呪いのせいだというが…

 真相は「1950年代」という時代の息吹を感じさせます。大時代的というかまさかのオチ。


2「罪人に突き刺さった剣」(Sword for a Sinner)(1959年)

 キリスト教の特殊な分派で宗教儀式の間に殺人が発生し…

 事件の状況こそ不気味っぽいですが、推理物としては凡庸な出来。ただしサイモンの過去にまつわる描写が有り、そこだけは要チェック。


3「過去から飛んできたナイフ」(The Weapon out of the Past)(1980年)

 ある小さな街で200年前に魔女が存在したという記録が見つかった。興味を持ったサイモンと「わたし」は現地に出かけるが、そこで奇怪な殺人が発生し…

 あまりにもあっさり事件が解決して拍子抜け。


4「海の美人妖術師」(The Sorceress of the Sea)(1980年)

 ある男が海上の小船の上で、ロープ状の髪の毛で首を締められて殺されていた。男は航海日誌に「海で女妖術師に出会った」と書き記しており…

 「妖術師」の正体があまりにもあんまりかと思えます。


5「ツェルファル城から消えた囚人」(Prisoner of Zerfall)(1985年)

 ドイツで18世紀に悪魔崇拝者が建てたという古城。その古城に収監されていたナチスの戦犯が突然姿を消し…

 人間消失トリック。ホックお得意の不可能犯罪物で中々の出来。


6「黄泉の国への早道」(The Way Up to Hades)(1988年)

 あるロックスターはコンサートで悪魔に自分を連れ去るように懇願するパフォーマンスを演じていた。ところがある日本当に彼が消えてしまい…

 またも人間消失トリック。これもなかなか。


7「ヴァレンタインの娘たち」(The Virgins of Valentine)(1988年)

 サイモン・アークは「ヴァレンタイン」という街で2月14日に悪魔が出現すると言いはり「わたし」も同行することになった。その街で殺人が発生するが…

 内容が軽すぎる事件でした。


8「魂の取り立て人」(The Stalker of Souls)(1989年)

 「わたし」の知人は足音だけの姿の見えない追跡者に怯え、サイモン・アークに助けを求めてきた。その直後彼は惨殺されてしまい…

 このトリックは反則と言うか、なんというか。


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■感想

 第三集となり、既に質の高い作品は使い尽くしてしまったのか、はっきりいってイマイチの作品ばっかりです。「妙な状況の事件がおきる→これは何なんだろうね〜→サイモン・アークがあっさり真相を看破して解決」とそういう話ばかり。ホック作品の妙味である『物語の各所にさりげなく散りばめられた手がかりを元に謎を鮮やかに解決する』という爽快さは殆ど感じられません。

 「サム・ホーソーン」物がどの作品も平均して質が高かったのと比較すると、サイモン・アークは当たり外れが激しいようですね。とにかくこの本はもう一つでした。

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■評価

(5段階評価の)3点。

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サイモン・アークの事件簿? (創元推理文庫)

サイモン・アークの事件簿? (創元推理文庫)

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