感想:小説「奇術探偵曾我佳城全集」(2000年)(泡坂妻夫)

奇術探偵曾我佳城全集

 「奇術探偵曾我佳城全集」(2000年)(泡坂妻夫)の感想です。

奇術探偵曾我佳城全集 [単行本]
http://www.amazon.co.jp/dp/4062101890/
泡坂 妻夫 (著)
単行本: 557ページ
出版社: 講談社 (2000/07)
ISBN-10: 4062101890
ISBN-13: 978-4062101899
発売日: 2000/07


祝魔術城完成。奇術ミステリの歴史的大作堂々刊行。
伝説の女流奇術師・曾我佳城の凄艶に冴える奇跡的推理。奇術&トリックの名手が、20年の時をかけて結実させた珠玉短編の完全版。

 
■内容

 「亜愛一郎」シリーズ等の作者で、自らもマジシャンである泡坂妻夫が創造した名探偵「曾我佳城」(そが・かじょう)の活躍を描いた短編集。1980年から「小説現代」で年数作ずつ発表され、1993年を最後に発表が途絶えていましたが、「メフィスト2000年1月増刊号」でラスト3作が一気に発表され完結しました。
 
 <収録作品>
天井のとらんぷ
シンブルの味
空中朝顔
白いハンカチーフ
バースディロープ
ビルチューブ
消える銃弾
カップと玉
石になった人形
七羽の銀鳩
剣の舞
虚像実像
花火と銃声
ジグザグ
だるまさんがころした
ミダス王の奇跡
浮気な鍵
真珠夫人
とらんぷの歌
百魔術
おしゃべり鏡
魔術城落成
 
 「曾我佳城(そが・かじょう。女性)」は元プロ奇術師。若くして舞台で大成功を収めましたが、デビュー二年目に彼女のファンだった若社長に見初められて結婚と同時に引退。その後夫を早く亡くし、今は豪邸に一人で暮らしながら、奇術の博物館の建設のため、奇術の用具や資料などの収集を行なっています。引退したものの、プロとして伝説を残し、また目を見張る様な美人の佳城は、彼女を知る奇術関係者にとってはいまだスターの様な存在です。


 収録されている物語は大きく分けて

1)佳城が奇術仲間の集まりやショーに出席した時に、何らかの事件に遭遇する
2)不可思議な事件が発生したため、旧知の刑事が佳城の知恵を借りに来る

 の2パターンです。

 奇術業界が舞台のエピソードも多々あり、少しマジックの種を明かされていたりするので、奇術業界物語としても楽しめます。


■感想

 一言で言うと「玉石混合」です。ハッとするほど切れの良い謎解きもありますが、逆に「これが謎解きの結末?」と呆れるほど中身のない話も有り、全体的に見て、推理小説としての満足度はもう一つです。

 なかなか事件が始まらないまま最後のページが近づいてくるため、一体どんなどんでん返しがまっているのか、と期待したら、そのまましょうもないオチで締め、という事も多々有りました。どれも会話のリズムが小気味良いなど、小説としては楽しく読め、「ちょっとした謎のある奇術関係物語」程度には評価しますが、謎解きで秀逸なものはあまり見当たりませんでした。「亜愛一郎」シリーズの様な内容を期待していたので、肩透かしだったのは否めません。

 しかし、最終話「魔術城落成」だけは、それまでの評価を吹き飛ばすような強烈な印象を受けました。内容は『佳城が長年建設を進めてきた奇術の大殿堂「佳城苑」がついに完成し、お披露目が行なわれたものの、そこで事件が起こり…』というお話ですが、結末があまりにも予想外だったため、(誰もがやると思いますが)すぐさま本を頭から読み直して、途中に張られていた伏線を再確認してしまいました。

 途中までは今ひとつですが、最終話は余韻が物凄いので、そのために読んでもよろしいかと思います。


■評価
(5段階評価の)3点
 

奇術探偵曾我佳城全集

奇術探偵曾我佳城全集