感想:小説「テクニカラー・タイムマシン」(ハリイ・ハリスン)(1967年)


テクニカラー・タイムマシン (ハヤカワ文庫 SF 193)

 「テクニカラー・タイムマシン」(ハリイ・ハリスン)の感想です。

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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4150101930
テクニカラー・タイムマシン (ハヤカワ文庫 SF 193) [文庫]
ハリイ・ハリスン (著), 浅倉 久志 (翻訳)
文庫: 301ページ
出版社: 早川書房 (1976/06)
ISBN-10: 4150101930
ISBN-13: 978-4150101930
発売日: 1976/06


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■データ(個人的補足)

 時間テーマのコミカル調のSF。なんとイラストはモンキーパンチ先生です。なお、タイトルの「テクニカラー」とはカラー撮影の技術を開発した会社の名前だそうで、本の最初に「社名を使わせてくれて感謝します」云々と献辞が書いてあったりします。


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■あらすじ

 倒産寸前の映画会社クライマックスでは、監督の「バーニイ」が社長の「L・M」に会社を立て直す起死回生のプランを説明していた。バーニィの知り合いの科学者が発明したタイムマシンで11世紀に撮影隊を送り込み、超大作ヴァイキング映画を撮影しようというのだ。現地のありのままを撮ればいいのだから、セットの作成もエキストラの準備も不要で、つまり驚くほどの低コストで映画を完成させる事が出来るのだ。しかし、のっぴきならない事情で映画は数日で完成させなければならなくなってしまった。それでも、タイムマシンを自在に使えば時間はいくらでも用意でき、何の問題も無いはず……、だったのだが?!


■感想

 古株のハヤカワSF文庫読者なら、読んだ事は無くてもモンキーパンチ先生の派手な表紙絵に見覚えがあるのでは?


 中身は、映画の撮影隊が過去に出かけ現地でドタバタするという「口絵」そのまんまのお話。あらすじは単純ですが、ノリが軽くてテンポが良くて面白い。時間テーマにもかかわらず、作中のタイムマシンは登場人物の誰もが疑いもせずに自動車程度の感覚で気軽に利用しますし、だからこそ、撮影チームは時間改変の危険性とかそういう難しい事を全く気にせず過去の人間とバンバン接触するし、過去/未来の自分たちと対面しても「そういうもんか」と軽く流します。


 バーニイと口うるさい社長L・Mとのアメリカンなやり取りやら、べえらんめぇ口調のスタッフたちとの会話、現地のヴァイキングたちをなだめすかしての撮影、など、ストーリーはコミカルに進みますが、最後に予想外の落とし穴が……、その解決方法は言われてみれば「ああ、そうか」ですが、作者が巧みにそれを思いつかせないように誘導しているので、最後までハラハラ楽しめます。


 ほぼ半世紀前のSFですが、何の問題も無く楽しめました。時間テーマを軽く楽しみたいならお勧めの一冊です。


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■評価

(5段階評価の)4点。

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