感想:ゲームブック「殺人犯はだれだ」(エドワード・パッカード)(1985年6月発売)【クリア済】

 ゲームブック「殺人犯はだれだ」(エドワード・パッカード)の感想です。

 クリアしての感想です。

殺人犯はだれだ (アドベンチャーブックス (3))

殺人犯はだれだ (アドベンチャーブックス (3))

■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4061919733/
殺人犯はだれだ (アドベンチャーブックス (3)) [新書]
エドワード・パッカード (原著), 大出 健 (翻訳)
新書: 121ページ
出版社: 講談社 (1985/06)
ISBN-10: 4061919733
ISBN-13: 978-4061919730
発売日: 1985/06


新まえ探偵のぼくのところに、億万長者のスロンビー氏から依頼があった。氏の命をねらっている者がいるから、さぐってほしいというのだ。ところが、ディナーの招待をうけてスロンビー氏の屋敷をたずねた晩、スロンビー氏は、寝酒のブランデーにしこまれた毒薬で殺されてしまった。なんと、ぼくは、殺人犯をさがすはめになってしまったのだ。怪しい人物はだれだ。氏の妻のピアニストのジェーン、おいのチャートウェル、めいのアンジェラ、医者のロバートなどが考えられる。ぼくは、どこから手をつけていったらいいのだろう?


■データ(個人的補足)

 講談社が1985〜86年に発売したゲームブックシリーズ「アドベンチャーブックス」(全20冊)の第3巻。アメリカの子供向けゲームブックシリーズ「Choose Your Own Adventure」(100冊以上出ています)の中から選んだ作品を翻訳したものです。

 ちなみに、この「Choose〜」シリーズは学研も1980年に6冊を選んで「きみならどうする?」シリーズとして発売していました。つまりこの本は、あの有名な「きみならどうする?」シリーズの兄弟分なのです。



■あらすじ

 主人公「きみ」は警察も一目置く少年探偵である。ある日、大企業の社長スロンビー氏から「命を狙われているらしいので力を貸してほしい」と依頼を受けた。そして直後スロンビー氏は屋敷で毒殺されてしまった。捜査担当の警部は無能で有名で全くあてにならない。きみは犯人を見つけるため捜査を開始するが……



■内容紹介/感想

 字のサイズやひらがなの多用ぶりから見て、小学校3・4年生あたりがターゲットだと思います。

 「パラメーター」「サイコロ振り」「アイテム所有」といった概念は無く、指示に従って読み進めていくだけなので、「分岐小説」という範疇に入るでしょう。内容は1〜2ページごとに分割されていますが、「パラグラフ番号」は無く、分岐の際には「○○ページに進め」と書いてあるだけなので、総パラグラフ数は不明です。およそですが、100パラグラフ程度でしょうか。


 内容は「少年探偵物」で、主人公の少年探偵「ぼく」(推定年齢13〜14歳くらい)が、何の権利があるのか殺人が起きた屋敷に入り込んで色々捜査し犯人を付きとめる、というストーリーです。ちなみに主人公が探偵を目指した動機というのが爆笑モノで、「1)おばさんの家に泥棒が入った→2)後日庭でビール瓶を見つけた→3)瓶を警察に持っていくと犯人の指紋が残っていた→4)事件解決→5)ぼくは周囲から名探偵と呼ばれるようになった」云々。おいおい、お前、ビンを警察に持っていっただけで推理も何もしてないじゃん?! しかもそれ以降事務所的な物を構えて探偵の依頼を受けるようになったというのですから、もう痛々しい探偵気取りの子供としか言いようが無いのですが、何故か警察からは名探偵扱いですし、富豪は依頼してくるし、もう世界観が訳わかんない。


 さて、内容ですが、予想よりはまともにゲームブックしており、結構複雑なフローチャートが書ける作りになっています。基本的なルートでは、屋敷に入って関係者に色々証言を聞いたり、ライバル的少女探偵と協力して証拠を集めたり、とオーソドックスに捜査を行います。しかし、探偵物であれば証言を残らず聞き、全ての場所を調べ、というローラー作戦を取りたいのですが、この本では複数の容疑者の内から誰か一人を指定して証言を聞くと、もう聞き取りはおしまい、という事になってしまうので何かモヤモヤします。それでも適当に選択して雑に話を進めていっても、最後に澄ました顔で「犯人はこれこれのトリックを使って氏を殺害したのですよ」とか解説しつつ、大団円を迎える事ができます。推理は必要ありません…、って、それはダメなのでは。


 また「Choose〜」シリーズは特徴として、正当エンド以外の結末がやたらと多いのですが、この作品もその例に漏れず、しょうもない結末が多数用意されています。例えば、全然捜査をしなくても「匿名のタレコミであっさり犯人が判明した」とか「きみがもたもたしているうちに、少女探偵が先に犯人を突き止めてしまった」とか、そりゃないよ的エンドが一杯です。あと「解決をあきらめる」という無責任極まりないエンドもあり、大いにウケました。


 まあ、小学生向けの本に複雑な推理モノを期待するのは間違いですが、正当ぶって証言を集めさせたりするわりに、特に頭を使わなくても勝手に事件が解決しちゃうというのはどうなんでしょうかねー。多分小学生でもこれは怒るんじゃないかな。という事で、主人公の設定が一番面白く、それ以降の展開はさほど……、という出オチ的ゲームブックでした。でも真面目にフローチャートを書いて全エンドをクリアするまで読み続けるくらいには面白かったですよ。



■その他
・プレイ時間:約1時間30分
・難易度:5段階評価(5が最高)で1
・面白さ:5段階評価(5が最高)で2


殺人犯はだれだ (アドベンチャーブックス (3))

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