感想:ゲームブック「オルフェウス作戦 海上原子力発電所を奪回せよ!」(ワールドフォトプレス)(1986年7月発売)【プレイ断念】


 ゲームブックオルフェウス作戦 海上原子力発電所を奪回せよ!」(ワールドフォトプレス)の感想です。


 まだ完全クリアはしておりませんが、大体雰囲気はつかめましたので(というかやる気をなくしたので)、感想など。


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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4334703887/
ゲームブック オルフェウス作戦―海上原子力発電所を奪回せよ! (光文社文庫) [文庫]
ワールドフォトプレス (編集)
文庫: 222ページ
出版社: 光文社 (1986/07)
ISBN-10: 4334703887
ISBN-13: 978-4334703882
発売日: 1986/07


>ゲリラ・グループが、日本初の洋上原発を占拠!!しかもそのグループには、あなたとともに保安システムの構築を担当したあなたの妻がいた?太平洋全域を死の海と化す炉心メルト・ダウンまで6時間!妻を求めて核の牢獄をさまようあなたは、太平洋を救えるか。

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■データ(個人的補足)

 光文社の文庫版ゲームブック。作者名?が「ワールドフォトプレス」です。



■あらすじ

 (発売時点から見て)近未来1998年の夏。日本近海に作られた世界初の海上原子力発電所「わたつみ」を過激宗教団体「オルフェウス教団」が占拠してしまった。しかも教団のスポークスマンは、かつて宗教にはまって「あなた」を捨てた妻らしい。彼らは深夜0時に原子炉のメルトダウンを予告しており、もしそれが実行されれば放射性物質が折からの台風で本土を直撃し、東京は死の街と化してしまうだろう。

 ITエンジニアであり、かつて原発の保安システムを構築した「あなた」は、対テロ部隊に強制的に参加させられ、わたつみに連れて行かれる。しかし突入直後に周囲の兵士たちは全滅し、「あなた」は孤立無援で一人取り残されてしまった。そんな時、教団は「あなた」に一種のゲームを提案してきた。神の意思を確認するため、軍人でもない「あなた」がメルトダウンを止められるか試すというのだ。「あなた」は6時間以内に施設の各地に隠されたパスワードを全て見つけ、原発を管理するコンピューターを停止させなければならない。



■内容紹介/感想

 パラグラフ数201。ただし、パラグラフの中身が「○○番へ進め」だけという、水増しとしか思えないものが多数含まれているため、実質150程度。

 サイコロふりがあり、戦闘時や分岐先の決定に使用。主人公のパラメーターとして「体力修正値」「運勢修正値」があり、戦闘の際にサイコロの目の修正を行う。フラグ管理もあり、同じパラグラフを通った際に初回/二度目以降と区別する。という様にシステムは本格派です。


 内容は近未来を舞台にしたサスペンスバトル物。主人公は妻がこっそり送り込んでくれた原発内用作業ロボット一台を唯一の味方として、テロリストや毒ガスで頭がアレになった職員などを相手に戦いながら、迷路に等しい原発内を探索し、複数のパスワードを見つけなければなりません。

 ちなみに、プロローグが終わった後、本編に突入するまでの間に、ブレイに必要な情報が提供されるのですが、これが長い! 物語の背景・プレイのルールだけでは無く、架空の原発の施設についての細かい説明・本物っぽい何枚もある見取り図・メルトタウンが起きるとどうなるかというウンチク、などが延々と続いて、もうその時点で辟易してきました。


 そして本編ですが、これがとにかくつまらない。パラグラフは「あなたがドアを開くとそこに有ったのは原発施設のこれこれで(以降施設の詳細な描写が延々と続く)。北側へ行くなら○番へ、東側なら□番へ」といった内容で、プレイに必要の無い描写がやたらと細かいのです。そのため、数パラグラフ読むだけで、もう読み進めるのが苦痛になってしまいました。しかも展開は「ドアを開ける→施設の説明→さらに進む→施設の説明」とこればっかり。このような展開の無味乾燥さのおかげで、恥ずかしながら1時間読み続ける事すら耐えられず、早々にギブアップしてしまいました。


 この作品に出会って初めて、他のファンタジー系のダンジョン探索モノが、いかに迷路探検を飽きないように工夫しているか、初めて理解できました。この本の問題は、不要な描写が多すぎて、主人公の冒険のテンポが悪すぎることです。もっとイベントをしっかり盛り込み、話をキビキビ進めてくれないと、フローチャートを書く意欲も失せてきます。というか失せました。


 この作品は、作者が「せっかく原発について細かく調べたのだから、とにかく話に盛り込んでやろう」という姿勢でいたか、または、「細かく細かく書けばそれだけリアルだろう」と考えたか、どちらかだと推測しますが、その細かさはゲームブックの面白さを毀損する方向に進んでしまいました。


 ということで、この本が定価より安く出回っている理由がよーくわかりました。まあ、こういう失敗も一つの勉強という事で……


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