感想:NHK番組「ザ・プレミアム」『ゴジラの大逆襲〜お前は何者なのか〜』(2014年7月5日(土)放送)

 NHK番組「ザ・プレミアム」『ゴジラの大逆襲〜お前は何者なのか〜』の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ザ・プレミアム|NHK BSオンライン
http://www.nhk.or.jp/bs/thepremium/

 NHK BSプレミアムでの視聴です(放送日:2014年7月5日(土) 20:00〜21:29)。


■概要

ゴジラをアメリカの映画評論家はこう評しました。「どんな時代でも生きられる不滅の怪獣、それがゴジラだ。常にその時代にふさわしい装いで生まれ変わり、最も私たちの思いを託すことができる存在だ」―― 映画「ゴジラ」の誕生から60年。時に原水爆の落とし子、時に子どもたちのヒーロー、時に人類に警鐘を鳴らす存在として、ゴジラは我々の前に姿を現し、ひたすら都市を破壊し、怪獣たちと闘い、そして人間と死闘を繰り広げてきました。そして今年夏。ゴジラはハリウッドで最先端の技術を駆使した3D映画「GODZILLA」として甦ります。なぜゴジラは映画のスーパースターであり続けられるのか?時代や文化、国の違いを越え、幾度となくスクリーンに復活してくるゴジラとは一体何者なのか?ゴジラと格闘してきた日本とアメリカの映画人たちを取材。ゴジラ60年、28作に及ぶこれまでの映像を惜しみなく使い、未公開資料や最新研究を交えながら、日本映画最大級のスターにして、世界で最も有名なキング・オブ・モンスター、ゴジラの魅力に迫ります。


>【出演】宝田明渡辺謙大河原孝夫大森一樹金子修介北村龍平,手塚昌明,山下賢章,川北紘一,富山省吾,三村渉ギャレス・エドワーズ,ウィリアム・ツツイ,グレゴリー・フルーグフェルダーほか


■内容

 1954年公開の初代ゴジラから2014年最新ハリウッドゴジラまでの歴史を、初代主演の宝田明ゴジラ監督(最新版の外人監督も含めて)のインタビューなどをはさみながら解説。語りはなんと国井雅比古氏です。


・初代ゴジラ

 1954年の第五福竜丸事件をヒントに作られた。ゴジラの着ぐるみが100Kg以上あり、ゆっくりとしか動けなかった事が逆に重量感を生んだ。当初牛を口にくわえて初登場するはずだったがカットになった。理由は「ゴジラは何かを食べて生きるとか、そういう普通の生き物では無く、もっと神秘的何かだろう」という風にスタッフのイメージが変わったため。

 1956年アメリカ公開バージョンは、日本にいたアメリカ人記者がゴジラ襲来を報道するという内容になった。そして芹沢博士が「オキシジェンデストロイヤーが権力者に利用される」と懸念する台詞や、最後に志村喬、が「またゴジラが現れるだろう」云々と言う台詞はすべてカットされ、単純お気楽モンスタームービーと化した。


ゴジラのヒーロー化

 核の恐怖の象徴だったゴジラは、やがてキングコングとかモスラとかキングギドラとかと戦ううちヒーロー化してしまう。そして人気も落ちていき、1975年の「メカゴジラの逆襲」で一旦打ち切りに。もっともこの時代のゴジラは輸出で金が稼げる映画でアメリカでは大うけ。それはゴジラが「でかくて強い」というアメリカンな好みにピッタリの上に、「GODZILLA」という名前は神(GOD)が入っているので名前も強そう、という事で。


・復活ゴジラ

 プロデューサー田中友幸はその後もゴジラ復活を考え、SF作家の光瀬龍とか有名作家・脚本家に新作のプロットを依頼していた。その内容は全て「ゴジラが神の使い」的なものという内容。1984年に新作が作られまた人類の敵として登場した。以後、核同様危険な技術バイオテクノロジーの産物の「ビオランテ」と戦ったりとかいろいろあったものの、最後に「ゴジラデストロイア」でメルトダウンして死亡。


・その後のゴジラ

 しかしそれ以降も色々な設定で新作が作られ、「ゴジラは太平洋戦争で死んだ人間の怨念の集合体。キングギドラが護国の龍」だとか、「ゴジラが14大怪獣と大バトル」とかいろいろやりながら2004年まで作られた。


・新作2014年版ハリウッドゴジラ

 渡辺謙はオファーを受けて最初「今更ゴジラ?」と思ったものの、監督が作ったパイロット版を見て本気を感じ取り出演を決めたとのこと。監督は3.11のことがあるので、原発の事とかカットしようとか悩んだらしい。


ゴジラって何でしょう(色々な監督に聞く)

 神の使いだとか大体そういう答え。


■感想

 7月のゴジラ映画一杯放送前の煽り番組的なものですが、国井雅比古氏のあの渋い語り口でゴジラの歴史が語られていくのですからたまりません。第一作の制作の背景やアメリカ版との違いなどにかなりの時間を割いており、「もしかして一作目だけに焦点を当てた番組?」とか思っていたら、もちろんその後の作品もきちんとフォローしておりパーフェクトな内容。これを見れば最新版も含めてゴジラのほぼ全てがわかります。ただし昔ハリウッドが作ったイグアナもどきゴジラは一カット放送しただけで、ほぼ無かった事扱いです……、まああれは抹殺しても問題ないしね。

 ということで、ゴジラの歴史が良く解るすばらしい番組でしたよ。ゴジラテーマで90分作っちゃうのだから、NHKにもオタク社員がいるのでしょうねぇ。



★おまけ

 大森一樹ってゴジラが嫌いだろ。ビオランテについては「ゴジラ細胞ってそんなに万能か?」で、「デストロイア」は「ゴジラメルトダウンとかするのか?」とか、コメントの端々に仕事で嫌々つきあっただけみたいな空気を感じますが。


★おまけ2

 私はビオランテ以降は真面目に見ていないのですが「ゴジラが太平洋戦争の犠牲者の怨念の集合体で、キングギドラは日本を守ってくれる聖なる存在」とゆー設定は腹を抱えて笑うしかなかったのですが、公開当時の人たちはどんな気持ちでこれを見たのでしょうか。あと「ファイナルウォーズ」という映画はゴジラ対14大怪獣とかいう怪獣プロレス路線に回帰しちゃっているのですが、これもどうなんだ、と思った。


★おまけ3

 未だに初代ゴジラが一番面白そうなのってのもどうなんだろうと思う。