感想:NHK番組「コズミック フロント」「究極の「宇宙地図」に挑む」(2014年10月9日(木)放送)


 NHK番組「コズミック フロント」の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■コズミック フロント | NHK宇宙チャンネル
http://www.nhk.or.jp/space/program/cosmic.html

 NHK BSプレミアムでの視聴です(放送日:2014年10月9日(木) 22:00〜22:59)。


■概要

http://www.nhk.or.jp/space/program/cosmic_141009.html

>「宇宙はどんな姿をしているのか?」−この大いなる疑問に答えるため、今、かつてないプロジェクトが進行している。究極の「宇宙地図」作りだ。これまでの歴史上、人類はあらゆる時代で宇宙の姿をつかもうと挑んできたが、最近の観測技術の急速な進歩で、宇宙の真の姿が解明されつつあるのだ。

>今回、世界中で進められている4つの宇宙地図作りを紹介。最先端の宇宙論に基づいたこの地図作りを、難解な図式や理論を使わず、巧みな比喩と映像にこだわって表現する。究極の宇宙地図作りを通して見えてきた新しい宇宙像とは、一体どんなものなのか。最新理論が解き明かす驚異の世界に招待する。


■内容

プロローグ 「宇宙地図」作りに必要な2つのこと

 宇宙は138億年前に誕生したが、宇宙は膨張しているので、今では半径460億光年の宇宙が観測可能。遠ざかる天体までの距離は赤方偏移で調べられる。



MAP1 銀河の3次元分布地図

 夜空の写真を撮影し、銀河の赤方偏移から距離を測り、という作業を繰り返し、地球から見た宇宙全体の1/4の立体図が完成している。その作業の中で、銀河はバラバラに存在するのでは無く、網の目のような「宇宙の大規模構造」という形をしていることが解ってきた。宇宙には大規模構造を作る「大きな力」が存在するはず。



MAP2 目に見えないダークマターの地図

 「宇宙の大規模構造」を維持するには目に見えない物質「ダークマター」があり、その重力が引き付けているとしか考えられない。ダークマターは見えないが、重力レンズ現象を調べて、目に見えないダークマターの地図を作った。



MAP3 宇宙の形に迫る地図

 「観測できる宇宙」だけではなく「観測できない宇宙」も含めて、宇宙全体はどういう形をしているのか調べるにはどうするか。それは三角形を描くこと。もし平面上に描けば内角の和は180度。しかし北米大陸の上に書けば、地球は丸いので内角の和は180度以上で線も直線ではない。

 同じことを宇宙で行なう。

・内角の和が180度より大きいならば→球面の「閉じた宇宙」。宇宙は有限。
・内角の和が180度より小さいならば→馬のくら型の「開いた宇宙」。
・内角の和が180度ならば→平坦な無限に広がる「平坦な宇宙」

 宇宙に光で三角形を描く。

 「宇宙マイクロ波背景放射」のムラの部分の大きさ(さしわたし30万光年)を底辺、地球が頂点になる三角形を描いてみると、角度は180度ぴったり。宇宙は平坦で無限に続いている可能性がある。



MAP4 宇宙の未来を予測する地図

 宇宙は大爆発で始まり、膨張し続けている。宇宙の未来を知るため、遠くの銀河の膨張速度を調べてみることにした。宇宙の膨張速度は、星やダークマターの重力が引っ張っているから、誕生当初より遅くなっているはずである。その速度を厳密に測定できれば「宇宙は減速しつつ膨張する」のか「収縮するのか」が判断できるはず。

 その際の調査対象となったのが超新星。「Ia型超新星」は、近くの星からエネルギーを吸い取り、一定の質量になると爆発する。「Ia型超新星」は宇宙のどこにあっても同じ規模の爆発をして、同じ規模の光り方をする(そし一つの銀河に匹敵するほど明るい)。爆発がどの程度の明るさになるかあらかじめ解っているので、あとは観測した超新星がどのくらいの暗さか、から、「地球からどのくらい遠いか」が計算できる。こういう目安となる星を「標準光源」と呼ぶ。

 この超新星を目印に物凄く遠い銀河の移動速度を調べてみると、宇宙は「膨張が遅くなっている」どころか「どんどん膨張が加速している」ことが解った。これは重力で遅くなるどころか、『反重力』とでもいう力で加速されているとしか考えられない。学者たちはこの膨張のエネルギー源を「ダークエネルギー」と名付けた。宇宙の70パーセントがダークエネルギーで満ちている。重力は引き付けるが、ダークエネルギーは反発する。また宇宙が膨張するとダークエネルギーも増える。



エピローグ ダークエネルギーの地図に挑む

 日本でダークエネルギーの地図を作る計画が進んでいる。ダークマターの三次元地図を作り、その動きを追うことで、宇宙膨張に関わるダークエネルギーの地図が作れるはず。



■感想

 テーマが興味深かった。単なる「地図作り」の実務作業の話だけかと思っていたら、そこから最新宇宙論へとナチュラルに移行してくれて、もうこれが面白かったですよ。

 あと、海外の学者たちが作業とか理論とかを説明する時に、「コスモス」のカール・セーガンみたく、いちいち小芝居(砂浜に三角を書いたり)をしてくれるのが楽しいというか感心するというかでした。